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犬の白血球数(WBC)の増加で考えられる病気と治療法

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愛犬の血液検査で白血球数(WBC)の数値が基準値を外れていると言われたら、飼い主さんは心配になることでしょう。白血球数(WBC)の数値が基準値ではない場合、愛犬はかなり重篤な病気になっているケースが考えられます。

そこで、ここでは犬の血液検査の項目の白血球数(WBC)の数値が増減した場合に考えられる病気と、その治療法について見ていくことにします。

目次

白血球とは?

血液中の赤血球には身体に酸素を運ぶ働きがありますが、白血球は細菌やウィルスの感染から愛犬の身体を守る免疫に働く成分です。ですから、白白血球数(WBC)は免疫細胞の数と考えます。

免疫細胞は病原体の侵入によって増加しますので白血球数(WBC)が高いときは感染症があります。ウィルス感染のときは、ヘマトクリット値が下がることがありますので原因追求の参考値になりますし、CRP値が高いならば感染症よりも炎症を起こしていると推測します。

 

白血球の種類

血球には酵素などを持つ好中球、好塩基球、好酸球、酵素の粒を持たないリンパ球、マクロファージなどがあります。好中球とマクロファージは細菌やウィルスなどの異物が体内に入ってくると、その異物を食べて処理し、異物を食べたあとは死んで膿となります。

白血球と言っても細かく見ると種類があり、それぞれが違う働きをしているので、身体を守るためにはどれも大切なものです。白血球は脊髄で作られますが、古くなると壊れることで常に新しいものが作られて補給されますのでその数は一定に保たれているのが正常な状態です。

白血球の寿命は種類によって異なりますが、好中球では1週間ほどでリンパ球は数年ほどある場合もあります。

 

好中球

白血球の多くを占めているのがアメーバのような形をした好中球で、骨髄にも蓄えられています。血液中にある好中球のほとんどは分葉核球という成熟したものですが、異物の侵入によって骨髄に蓄えられている棹状核球という若い好中球も血液中に出されます。

病原体が身体に侵入してくると血管の外に出て行って働くのが好中球でが、ウィルスよりも細菌に対する攻撃力に優れています。白血球の好中球が増加している場合、体内のどこかに細菌が侵入している可能性が高いといえます。

好中球は血管の外に出て病原体を食べたあとはすぐに死んでしまい、膿になります。

 

好塩基球

好塩基球はマダニを攻撃する役割、皮膚の慢性アレルギー、アナフィラキシーショックなどに関係しています。紫色の顆粒があり、好酸球が増えるときにみられることがあります。白血球の中では最も量の少ない成分です。

 

好酸球

好酸球は寄生虫の感染に対して攻撃する能力があります。しかし、喘息やアトピーなどのアレルギー疾患の原因になる可能性も指摘されています。

好中球に似た細長い核があり、その周りにオレンジ色の顆粒があります。寄生虫がいたり、アレルギーがあったりすると増えます。基本的には好中球と同じ働きをすると考えておくと良いでしょう。

 

マクロファージ

マクロファージは単球とも呼ばれています。マクロファージは病原体が体内に侵入しようとするのを攻撃するために血管の外に出ます。マクロファージは血管の外に出ると形を変えて病原体を攻撃しますが、病原体を食べる他にもその病原体の情報をリンパ球のヘルパーT細胞に知らせるという役割もあります。好中球よりもやや長い時間血液中に存在して、病原体をだけでなく、古くなった細胞も食べて除去します。

単球は病原体や不要な細胞などを食べるので大食い細胞と言われています。少し薄い色の核があり、色々な形をしています。慢性の炎症があると増加します。

 

リンパ球

リンパ球は病原体から身体を守る免疫細胞です。丸い核があります。リンパ球はその役割によって名前が変わってきますが、病原体に効き目のある抗体を作るB細胞と病原体と直接戦うT細胞に大きく分かれます。

T細胞はウィルスに感染した細胞やガン細胞を選んで攻撃するキラーT細胞、情報を受け取り、他の免疫細胞を刺激して免疫反応を進めるヘルパーT細胞、免疫が効きすぎないようにコントロールするサブレッサーT細胞に分かれます。

T細胞は胸腺でリンパ球が成熟するものでマクロファージがリンパ球に出した情報によって免疫反応に働きかけます。骨髄や扁桃腺、リンパ器官などに多量に存在します。

 

犬の白血球数(WBC)の基準値は?

犬の白血球数の基準値は各検査機関によって微妙に数値が変わってきますが、一般的には3200~8500/μl(ナノリットル)ほどです。

低い時は2600~3100μl/(ナノリットル)が要注意、2500μl/(ナノリットル)で異常、高い時は、8600~8900μl/(ナノリットル)で要注意、9000μl/(ナノリットル)以上が異常です。

白血球は身体を病原体から守るものなので、白血球数が基準値から外れている場合、身体に何か問題があると言えます。白血球数は風邪を引いた場合でも感染症から身体を守るために働きますので白血球数が基準値よるも上下することがあります。

白血球数が異常な場合は、他の血液検査の項目などを参考にしっかりと体内の状態を調べて疾患の見落としがないように注意することが必要です。

 

白血球数(WBC)が増加する場合

好中球が増加する場合

白血球の好中球は白血球内の50~80パーセントを占める割合ですので、白血球数が増加している場合は好中球が増加することが多いです。

・ 感染症・・・細菌感染、肺炎
・ 血液疾患、悪性の腫瘍・・・白血病、多血症、急性出血
・ 組織損傷・・・肺梗塞、心筋梗塞、腎不全、やけど、骨折
・ ストレス

 

好中球の割合が減少した場合

・ 細菌の重症感染症
・ ウィルス感染症・・・麻疹、風しん
・ 血液疾患・・再生不良性貧血、巨赤芽球性貧血
・ 脾機能亢進症・・・肝硬変

 

白血球数(WBC)が減少する場合

白血球の中でかなりの割合で存在するのが好中球なので、白血球が減少している場合は好中球が少なくなる病気であることが濃厚です。好中球は細菌や感染症や炎症が起きていると、そこの場所に集中して、血液中にも数も増えます。

しかし、細胞が減ってしまって病気を攻撃できなくなると命に関わる問題になります。本来、好中球の核は細長いくびれがありますが、若い好中球は核にくびれがありません。

顕微鏡でしっかりと白血球を観察して若い好中球が多いのか、成熟した核にくびれのある細胞が多いのかよく観察する必要があるでしょう。

 

白血球数(WBC)が減少する原因

消費の亢進

好中球が病原体と戦っていることでどんどん白血球数が減ってしまっている状態です。強い感染や炎症が起こっている時に起こると考えられます。感染や炎症があっても程度が低ければ身体が白血球を作ることで白血球は増加しますが、炎症が酷い場合などは身体が反応できずに白血球を増やすことができずに減少に転じます。

強い細菌に感染した傷があるとき、重度の肺炎を起こしているとき、急性のウィルスに感染など命に関わる病気になった場合に起こります。

 

分布異常

特定の臓器の中の血管に白血球が溜まってしまっていることで、体内に流れている血液の中の白血球の数が減ってしまうことがあります。分布が問題なだけで、身体全体の白血球が減っているわけではありません。

この場合は、もし他の感染などで白血球が必要になると身体がそれに反応して白血球が血液中に戻るので特に問題はありません。まれに内毒症になったときに分布異常が起こりますが、健康な犬でも起こりえる状態です。

 

産生数の減少

白血球は骨髄で作られますが、血液細胞を骨髄のトラブルで白血球が産生できないことで新しい白血球数が減少します。

例えば、がん治療のための抗がん剤、ホルモン剤、毒物、ウィルス感染、ガンの骨髄への転移、白血病、大理石病と言ったものですが、これらはいずれも命に関わる重大な病気です。

 

白血球数(WBC)が減少する場合の疾患

パルボウィルス

犬のパルボウィルス感染症はすでにパルボウィルスに感染した犬の便や嘔吐物を舐めたり接触することなどで感染します。激しい下痢や嘔吐、食欲不振や元気喪失、発熱、重い脱水という症状があり、下痢が酷くなると血便が出ることもあります。

脱水症状がすすむとショック状態になり、命の危険もありますので注意が必要です。犬パルボウィルスには有効な治療薬がありませんので治療としては脱水症状を緩和するという支持療法を行います。

また、細菌やウィルスの二次感染から守るために抗生物質を投与します。パルボウィルスはワクチン接種が有効です。

 

ガンの骨髄への転移

白血病(血液のガン)

白血球の1つであるリンパ球が腫瘍化して増殖します。急性と慢性があります。急性白血病になると回復する見込みが少なく、慢性の場合も数年単位では生存できますが、死に至る怖い病です。

腫瘍は骨髄に転移して非再生性の貧血や血小板減少のため貧血が進みます。白血球が減少することで免疫機能が下がって二次感染の危険があります。治療は化学療法が効果を出す場合もあります。

関連記事:【犬の白血病】症状と治療法、余命や食事についての知識

 

大理石病

大理石病は骨髄まで硬い骨になってしまう病です。程度には個体差がありますが現在のところ治療法がありません。

 

再生不良性貧血

骨髄の多能性肝細胞という白血球をはじめ、赤血球、血小板という血液成分の源であるので、この細胞が異常を起こすと血液が作られなくなります。

再生不良性貧血になると骨髄が脂肪組織に変わるので血液が作られなくなります。原因としては、免疫系統が乱れること、化学物質が骨髄性の貧血を起こしていること、感染などです。

犬パルボウィルスやエールリヒア症などの病原体が骨髄性貧血を起こします。治療法がないため、そのときどきである症状に対する治療を行います。

感染症がある場合は抗生物質や抗菌薬の投与、貧血が酷い場合は輸血を行ないますが、予後は悪いと考えられます。

 

病気の診断は?

白血球数(WBC)が増加したり減少するということは、身体のどこかで炎症かあったり、感染症にかかっているという可能性が高くなります。白血球数が基準値を外れていると何かトラブルがあるということなので血液検査を詳しくみることが大切です。

若い好中球が多いのか少ないのかということも重要です。また、身体の中の炎症や感染症がどこで起こっているのか調べるためにレントゲン検査や超音波検査、ウィルス検査などをあわせて行います。

白血球の好中球の数値は風邪やケガ、アレルギーの関係で大きく変動しますし、放射線治療後も数値が増加します。一度の血液検査の数値で異常値であっても特に症状がない場合は特に問題がないこともあります。

病気の治療のためには早期発見、早期治療が何より大切です。犬は言葉を発することは出来ませんので、定期的に健康診断を受け血液検査を行うようにしましょう。

定期健診をする場合は、できるだけ体調の良い日を選んで受けると良いでしょう。

 

免疫力を上げる食事

白血球の数値が異常であるということは、病原体から身体を守るというシステムが上手く作動しないということで、病原体に対する免疫力が下がってくることで二次感染の恐れもあります。

白血球数(WBC)の異常から分かる病気の多くが治療もなく、命に関わる重い病であることも多いので飼い主さんは悲しい思いをすることも多いでしょう。

しかし、下がっている免疫力を食事でカバーするという方法もあります。免疫力を上げるためには腸内環境を良くすることが大切だということが人間でも言われていますが、犬も腸内環境を整えてあげることにより免疫力が上がります。

ドッグフードでも腸内環境を整えるためのものがありますし、愛犬の健康を考えて食材も自然で安心なものを使ったものもあります。このようなドッグフードを利用することで、飼い主さんは安心して愛犬に食事で免疫力をあげていくサポートができますのでぜひ利用すると良いでしょう。

獣医師である宿南章が各病気別に開発したドッグフード「デイリースタイル療法食シリーズ」も参考にされてみてください。

 

まとめ

血液の中の白血球は骨髄で作られますが、白血球数(WBC)が基準値よりも高くても低くても身体の中に疾患がある場合があるので注意しなければいけません。白血球にも色々な種類がありますが、主に身体に中に病原体が侵入した時に攻撃して身体を守ることが主な役割です。

体調がおかしいなと思ったらすぐに動物病院で血液検査を行うことも大切ですが、白血球数の異常は命に関わる重大な疾患がある場合がありますので、定期的に血液検査を行ってしっかりと愛犬の健康管理をしてあげましょう。

犬の白血球数(WBC)

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獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

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記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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