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犬の血液検査SDMAとは?数値が高い時の病気と対策まとめ

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犬の血液検査でSDMAという項目を聞いたことがありますか?

SDMAという血液検査は新しい検査で、今までの血液検査では分からなかった愛犬の異常が比較的早期に発見できる画期的な方法です。
この血液検査に寄って今までより早く腎臓病を見つけられるようになりました。

ここでは犬の血液検査の項目SDMAとはどのような検査なのか、またSDMAの結果が悪い場合、飼い主さんはどのように愛犬の世話をしてあげることが大切なのかについてみていきましょう。

目次

血液検査項目のSDMAとは?

SDMAとは、対称性ジメチルアルギニンという物質です。
ジメチルアルギニンはアミノ酸であるアルギニンがメチル化されたものですが、たんぱく質を分解する過程で血液中に放出されます。
腎臓機能が正常であるならば腎臓というフィルターで血液をろ過すると、そのほとんどは尿として体外に排泄されます。

しかし、腎臓のフィルターとしての機能が低下してくると血液中にSDMAが存在するようになります。
このような特性が利用して血液検査のSDMAは主に腎臓機能低下の指標として注目されています。

愛犬がこんな症状ならば早くSDMAを受けるべき

SDMAは新しい腎機能低下の指標となる血液検査です。
腎臓は一旦組織に損傷を受けるとそれを治す治療は残念ながらありません。

このため、できるだけ早い段階で腎臓疾患であることに気が付いて、その原因となっている疾患があるならば、ただちに治療を行い、腎臓そのものに損傷をできるだけ与えないようにすることが大切です。

以下のような症状が愛犬にある場合は腎臓に何かしらの疾患があるという可能性がありますので、できるだけ早く動物病院でSDMAの血液検査を受けるようにしましょう。

  • 元気がない
  • 食欲がない
  • 痩せてきた
  • 毛の艶がなくなってきた
  • 水をたくさん飲む
  • おしっこの回数が増えたり、量が増えた
  • 下痢や嘔吐

SDMAの正常値

血液検査SDMAの正常値は成犬の場合、0~14ug/dlです。
子犬の場合は、0~16ug/dlです。

SDMAの数値が20ug/dl以上の場合は腎臓病の可能性があります。

15~19ug/dlの場合は他の症状や血液検査や尿検査などの数値を参考に様子を見ながら2~4週間後にSDMAの再検査を行い再び対応を検討することになります。

SDMA値が高いときは?

血液検査のSDMAが基準値よりも高い場合は、何らかの腎臓疾患の疑いがあります。

SDMAは腎機能が正常に機能している場合は、そのほとんどが腎臓でろ過されて尿として排泄されるので、血液中にSDMAが残存しているということは腎臓の糸球体ろ過機能が低下しているということになります。

腎機能が低下してくると血液検査でクレアチニンやBUN値の上昇もありますが、SDMA値は糸球体ろ過機能の低下を的確に表すことが可能であるというところが他のバイオマーカーとの違いです。

腎臓の働きと糸球体ろ過機能

腎臓の働きは尿を作るということはよく知られていますが、その働きは非常に多岐に渡り生命維持に対しても重要ですし、腎臓のメカニズムは非常に複雑です。

腎臓は身体の中にある身体に不必要は老廃物や余分な水分を尿として体外に排泄します。
また、血圧をコントロールしたり、血液のphの維持、身体に分泌されるホルモンなどを作るという非常に重要な働きが多いのが腎臓です。

犬の腎臓は人間と同様に左右に1つずつ、計2つあります。
1つが何らかの原因で損傷を受けてももう1つがそれを補うようにして生命維持を行うためです。

犬の腎臓には2つ合わせて約80万個のネフロンがあり、ネフロンは糸球体から作られた尿が集まる腎臓と尿管をつなぐ腎盂という器官に至るまでの管です。

ネフロンの中に糸球体というものがありますが、糸球体は毛糸玉のように毛細血管が絡み合った集まりで、この一つ一つの糸球体で血液をろ過して血球やたんぱく質以外の老廃物を取り除いています。
この糸球体一つ一つが腎臓のろ過機能を担っています。

腎臓は非常に忍耐強い臓器で、かなりのダメージを受けた場合でないと痛いというような症状や、生活に支障をきたすことはありません。
そのため愛犬の腎臓に問題があっても、飼い主さんはその姿だけではほとんど腎臓の異変に気が付くことはありません。

いざ、愛犬の様子がおかしいと気が付いて動物病院に連れて行って検査をした段階では、ほとんどの場合は発見が遅いというのが問題になっています。

腎臓は我慢強い臓器ですが、一旦損傷を受けてしまうと治療法がありませんので、腎臓の機能をこれ以上失わないように対処するという方法でしか対応出来ません。

クレアチニンとSDMAとの違い

腎臓機能低下を発見するための指標として有名な血液検査項目にクレアチニンというものがあります。
クレアチニンもSDMAと同じように尿と一緒に体外に排泄されるべき老廃物の一種で、腎機能が正常であれば腎臓でろ過されるので血液中のクレアチニンは存在しないはずです。

しかし、血液中にクレアチニンが増加してくるということは腎臓に何か異常があるということで腎臓機能低下の発見に利用されています。

クレアチニンはSDMAと共に腎機能低下の指標として利用していますが、クレアチニンの数値が正常範囲を超えてくる時点では腎臓機能の約75パーセントが喪失しないと上昇してきません。

腎臓は沈黙の臓器で、実に辛抱強い臓器なので全体の4分の3の機能を失うまで何も異常を表に出すことがありません。
腎機能がかなり低下してこない限り、クレアチニンの血液検査でも異常が見つからなくて手遅れになるというのが今までの状態でした。

新しい検査項目のSDMAはクレアチニンよりも早い段階で腎機能の低下を数値で表すことができるということが良い点です。
SDMAは腎臓の機能が40パーセント低下した段階で正常値を超えた検査結果を得ることができるので、今までよりも犬では9.5ヶ月も早く腎臓病を発見できるようになりました。(猫の場合は平均で約17ヶ月の早期発見ができるようになりました)


また、クレアチニンは筋肉量からの影響があるのが問題でした。
例えば、筋肉質の犬はクレアチニンの数値が高くなるので腎機能障害との判別が難しいという点がありましたが、SDMA値は筋肉質の犬でも腎機能が正常であれば上昇しません。

このような面でもクレアチニン値とSDMA値を比べながら腎機能の低下の判断が可能になったのです。

犬種の影響は受けない

クレアチニン値というのはグレイハウンドとグレートピレニーズは他の犬種よりも高い傾向にありましたが、SDMA値は正確に腎機能の低下を判断できる指標として利用できるようになりました。

また、老犬になると慢性腎炎などの疾患を抱えることが多いのですが、SDMA値を測定することで15歳以上の4割以上の犬が腎臓病やその疑いがあるという事実を早い段階で発見できます。

腎臓疾患を早い段階で検知できるということは、その後の対処も出来るので愛犬の健康維持に非常に役に立つ指標とも言えます。

SDMA値と慢性腎炎

SDMA値と慢性腎炎は深く関係しています。
SDMA値が14mg/dl以下の場合でも、クレアチニン値と共に正常値の上限あたりに検査結果がある場合は尿検査でタンパク尿を調べたり、血圧などを調べて腎臓疾患がないか確認する必要がありますし、異常が疑われる場合は早急に治療する必要があります。

SDMA値が14mg/dl以上になるとクレアチニンなどに基づいて腎臓疾患の程度を検討して腎臓の療養食にしたり、その他の治療を開始します。

腎臓疾患の進行具合を図るためにはSDMAだけでははっきりと分かりませんので、クレアチニンやBUN値、尿比重、エコー検査での腎臓の様子などを調べることが大切です。

SDMAが30mg/dlを超えてくると人口透析をする必要があるぐらいの重篤な進行度合いです。
しかし、犬の場合、人間のように人口透析に保険が効かないので人工透析の治療は高額治療になります。

実際問題、愛犬の人工透析に多額の費用払い続けることができないこともあるので、このような段階になるまでにできるだけ早く発見して治療などの対応をすることが大切です。

SDMAの定期的検査のすすめ

SDMAという腎臓病の指標が新しくできたことで腎臓病の早期発見、早期治療が出来るようになりました。
腎臓は疾患があっても痛がるというような症状もほぼありません。

このため健康そうに見える愛犬でも、定期的に血液検査でSDMAや尿検査などの検査を受けることで病気の早期発見につながります。

SDMAの血液検査は自由診療であるため受診料は病院によって異なりますが、ほとんどの場合はそこまで高額な検査ではありません。年に数回のSDMAの検査を積極的に受けて愛犬の健康を守りましょう。

腎臓疾患があると分かった愛犬への対応

肝臓疾患があるとわかった時、飼い主さんが愛犬にしてあげられる対応に以下のようなものがあります。

  • 食事療法(リンの量を制限する)
  • たんぱく質の制限
  • 水分を与える
  • 塩分制限
  • 運動制限

ひとつずつ見ていきましょう。

食事療法(リンの量を制限する)

リンは骨や歯を作るためになくてはならない栄養素ですが、SDMA値が高く、腎機能が著しく低下している腎臓病の犬は体内にある余計なリンを体外に排出できないため、リンが体内に蓄積されて腎臓の細胞を傷つけることによって腎臓がダメージを受けます。
リンは肉類に多く含まれているので、肉の摂取を制限することが大切です。

リンの少ない野菜

ジャガイモ、大根、キャベツ、レタス、ピーマン、もやし、なす、トマト、白菜、ごぼう、小松菜、かぼちゃ、ほうれん草、きゅうり、チンゲンサイ、栗…など

リンの少ない果物

スイカ、リンゴ、メロン、みかん、バナナ、イチゴ、キウイ、梨、マンゴー…など

リンの食事制限はその愛犬の病状やSDMAやクレアチニンなどの数値、体重などよります。

非常に専門的ですし、栄養学の知識を豊富に持っている獣医さんでないとなかなか個体ごとの栄養管理のアドバイスができないというのが現状です。

そのため、腎臓疾患を持つ犬のための療養のためのドッグフードがありますので、そのようなものを食事のベースとして、安定的にリンの量を制限する療養食を続けましょう。

腎臓が一旦損傷を受けてしまうとそこからよくなることはありませんので、根気強くリンの制限を行っていきましょう。

たんぱく質の制限

たんぱく質を摂取することによって、体にとって老廃物である窒素代謝物が発生します。
この老廃物が体内にあっても腎機能がしっかりしていれば問題なくろ過されるのですが、SDMA値が悪く、腎臓のろ過機能が著しく下がっていると腎臓のろ過の処理能力追いつかず、正常に機能している糸球体にも過剰に付加がかかり、腎機能がどんどん下がっていてしまいます。

しかし、たんぱく質を気にしすぎて、たんぱく質を全く摂取しないと生命活動に必要なカロリーが不足してしまいます。
カロリー不足になると、体は生命維持のために、自分の体についているたんぱく質である筋肉などを分解して消費していきます。


外部からたんぱく質を摂取制限した結果、体に元々ある自分のたんぱく質であっても分解されることで窒素代謝物が発生します。自分の体のたんぱく質でも窒素代謝物という老廃物が発生しますので、腎臓に負担をかけます。

そこで、たんぱく質を摂取制限する場合は、糖質や脂質などたんぱく質以外の栄養素でカロリーを必要量摂取しながらたんぱく質の摂取制限を行います。

たんぱく質をどのぐらい制限するかということは、腎機能の低下の度合いで異なりますので獣医とよく相談して食事を与えるようにしましょう。

水分を摂る

腎臓病になると尿の量が増えますし、体の中に水分が少なくなると体の中の老廃物を体外に排出し難い状態になりますので、こまめに水分を体に入れることが大切です。
また、与える水は常に清潔な新鮮な水であることに気をつけましょう。

塩分制限

腎機能が下がっていると塩分の排出機能が下がります。
体にとって塩分は必要なものですが、塩分の排出機能が下がり体内に塩分が溜まりやすくなると、塩分が体の中で水分とくっつくために、体内に水が溜まりむくみや高血圧の原因になります。

犬は汗をかきますが、人間ほど汗として塩分を体外に排出しません。
このため塩分を含んだ食材をたくさん与えると塩分のとりすぎになるので注意しなければいけません。
人間と比べると犬は薄い味の食べ物でも塩分不足にはなりません。

犬が生きていくためにも塩分は必要ですが、その症状や腎機能によって塩分量の制限する必要がありますので、獣医の指導のもとに塩分を制限した食事を与えるようにしましょう。

運動制限

腎臓病の犬は安静を保つことが大切です。
激しい運動を行うと腎臓に負担が掛かりますのでストレスのかからない範囲で適度な運動をさせてあげましょう。

まとめ

獣医師・宿南章

犬の血液検査のSDMAは腎機能低下の早期発見を行うための新しい指標として注目されています。

SDMAだけでなくクレアチニンやBUN、尿検査などの結果を踏まえながらできるだけ早期に愛犬の腎臓の病気を発見することが大切です。

できれば定期的に検査を行い、愛犬の腎臓疾患の早期発見に努めましょう。
腎臓疾患が見つかった場合は、食事療法など、獣医師のアドバイスを聞いて適切な対処をしてあげてください。

犬の血液検査SDMA

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獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

興味の多いテーマ

記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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