犬の赤血球数(RBC)の数値が多い時、少ない時の注意は?

犬の赤血球数(RBC)の数値が多い時、少ない時の注意は?

愛犬の血液検査で赤血球数(RBC)という項目があります。この数値が基準値でない場合、どのようなことに注意すればいいのでしょうか。飼い主さんには、家族同然の愛犬の健康をしっかり守ってあげるためにも、血液検査の結果を把握しておく知識があると非常に有益です。

そこで、ここでは犬の血液検査の項目である赤血球数について、基準値やそれより多い場合、少ない場合に注意すべき知識について見ていくことにしましょう。

赤血球とは

血液の成分である赤血球は人間のものと同じような形で真ん中を指で押してへこませたような円盤です。赤血球の主な働きは身体の組織や肺に酸素を運ぶことで、呼吸のために非常に重要な役割をしています。

赤血球は成長の途中で核がなくなって細胞質の中はヘモグロビンという成分で満ちています。このヘモグロビンは酸素分子と結合することによって背血球自体が身体に酸素を運搬することができるのです。

ちなみに、酸素と結合するヘムという物質とグロビンというタンパク質が結合したものがヘモグロビンですが、ヘムが結合するためには鉄分が必要になります。犬の血液も赤いですが、血液中の背血球の中のヘモグロビン自体が赤いことで血液が赤く見えます。

また、血液中に酸素と結びついたヘモグロビンが多いと血液が明るい赤になり、少ないと血液の色が黒っぽい赤になります。血液中に赤血球の数が減ると体内に酸素が不足した状態になります。

他にも、酸とアルカリのバランスをとったり、炭酸ガスを運搬する働きもあります。

 

犬の赤血球数の基準値は?

犬の赤血球数の基準値は550万~850万/μL(マイクロリットル)です。赤血球は身体中に酸素を運ぶ役割がありますので赤血球が足りない状態になってくると身体の中で酸素が不足しだすことで疲れやすくなったり、だるさが出ます。簡単に言うと赤血球が少ない人は貧血であるということです。

疲れやすいという程度の貧血ならば重大な問題はありませんが、基準値と比較して極端に赤血球数が少ないというのは病気があるという可能性があります。

また、赤血球数が高すぎても疾患があることがあります。血液検査を行って赤血球数が基準値に該当しない場合は、しっかりとその原因を探り、病気の早期発見治療を行ったり、飼い主さんも自宅で健康管理をしてあげることが大切です。

 

赤血球数が多い場合に考えられる疾患

脱水症状

犬の血液検査で赤血球数の数値が高い場合の多くが脱水症状によるものです。脱水症状で血液中の水分が少なくなることで赤血球の密度が増えるので赤血球数が高くなります。下痢や嘔吐、水分の補給不足などで脱水症状になった場合は、水分を充分に摂らせることで脱水症状が緩和され赤血球数の数値も下がります。

脱水症状は放置していると命に関わるので、飼い主さんはしっかりと水分補給に気を配ってあげてください。ぐったりして元気がないという場合は早めに動物病院を受診して脱水症状の処置をしてもらいましょう。

動物病院などで皮下補水のための点滴をしてもらうと比較的すぐに脱水状態がよくなります。また、水を飲んでくれない場合は少量の塩分補給をしてあげると効果的です。

 

多血症

多血症は造血のためのホルモンであるエリスロポエチンの分泌が、何らかの原因で増加したために赤血球数の値が高くなります。また、骨髄で赤血球の産生が増えたために赤血球数の値が高くなる、真性赤血球増加症というものもあります。

これは慢性的に酸素が欠乏して起こるものと、腎臓に腫瘍ができてエリスロポエチンが過剰に分泌されている場合に起こります。慢性的に酸素が欠乏する場合というのは、心疾患や呼吸器疾患、また、高地に居住している場合にもなります。

多血症の場合はまず脱水症状がないか確認し、脱水症状がないのに赤血球が増加している場合は、血液検査だけでなくレントゲン検査や超音波検査、エリスロポエチンの測定をして診断します。

 

赤血球数が少ない場合は貧血状態

赤血球数が少ない場合、簡単に説明すると貧血という状態になっていますが、貧血にもいろいろな種類があります。

 

出血によるもの

身体の中で赤血球が少ない原因で一番分かりやすいのが出血です。身体のどこかで出血していることで血液が不足して貧血になります。例えば、怪我をしたことで身体のどこかに傷ができて出血したときや、胃潰瘍や胃腸のトラブルによって内臓から出血して貧血になるというものです。

また、腫瘍から出血しているということもあります。内臓疾患から貧血になる場合は、内臓で出血しているので便の色が黒っぽいものやタール上の便が出ます。

 

中毒によるもの

中毒性のある食べものや薬品が体内に入ることで、赤血球が傷つけられて赤血球数が下がることがあります。例えば、食べ物の中で中毒を起こすものとして有名なものは、玉ねぎ、にら、長ネギ、チョコレート、レーズン、アボカドなどです。

人間の薬や農薬などを誤って口に入れることもありますので、人間の食事中に食べ物をねだられても安易に与えないようにしたり、農薬や薬品を愛犬の周りに不用意に置いておかないということが大切です。

また、輸血をしたときに血液型が合わない犬の血を輸血した場合の副反応として赤血球が破壊されることがあります。2回目以降の輸血時に起こることが多いので注意が必要です。

 

自己免疫介在性貧血

自己免疫介在性というと難しいですが、簡単に言うと赤血球を自分のモノとして身体が認識せず、自分自身で攻撃してしまうことによって自分自身を破壊することです。身体の中で誤作動が起こり、自分の赤血球を破壊することで赤血球の数が減り赤血球数が低くなります。早期発見して治療を行わないと命を落とす危険もあるので注意してください。

自己免疫介在性の貧血になりやすい犬種もありますので、該当の犬種は特に注意が必要です。例えば、コッカースパニエルやプードルなどですが、メス犬の方が自己免疫介在性貧血になりやすいと言われています。

自己免疫介在性貧血になると、食欲がなくなり、元気がなくなります。他にも、呼吸が速くなり、呼吸困難になることもあり、無気力、落ち着きがない、歯肉やまぶたの裏が白っぽくなる、黄疸が出る、尿が赤茶色になる、肝臓や脾臓が腫れてくるという症状もあります。

 

寄生虫によるもの

例えばダニに寄生しているバベシアという原虫はダニが犬を吸血することによって犬に感染しますが、このバベシアが感染すると赤血球が破壊されて赤血球数が減少します。動物病院で血液検査を行うとすぐに寄生虫感染が分かるので早期に検査をして治療をしてください。

 

赤血球を生成できない

身体が血液を作れない状態になると貧血になるので赤血球が生成できずに貧血になります。例えば、骨髄の病気がある場合、薬剤の副作用による場合、内臓などが炎症を起こすことで骨髄の機能が働かなくなった場合、腎不全などがこの部類です。赤血球を生成できない貧血のことを非再生性貧血と言います。

 

その他の赤血球数が少ない場合に考えられる疾患

 

腎疾患(腎不全)

腎臓は本来非常に強い臓器でその75パーセントを損傷していても、身体に症状があらわれません。このため、腎臓の疾患で腎機能が下がってきていてもかなり腎機能が低下して症状にあらわれてこないので多くの飼い主さんが愛犬の腎疾患に気が付かず、異変が出てから動物病院を受診しても手遅れになっていることが多いのです。

腎疾患の中でも腎不全というのはほとんど腎臓の機能が働いていないという状態です。腎臓は電解質や血圧を調整するためにいろいろなホルモンを出す命令を行っている器官ですが、腎機能が下がってくるとこれらのホルモンが分泌されなくなります。

腎臓は赤血球を作る命令を出しているエリスロポエチンというホルモンにも大きく関わっていますが、腎不全になるとエリスロポエチンが分泌されなくなることで赤血球を作ることができなくなり、貧血の状態になります。

関連記事:【獣医師監修】犬が腎不全になったら?症状と余命、食事、治療法

 

 

骨髄機能の低下

血液は骨髄で作られますが、骨髄の機能が低下してくることで造血ができなくなり貧血になります。また、骨髄にダメージのある薬の投与により造血されなくなり赤血球数が下がることがあります。再生不良性貧血が疑われます。

 

胃潰瘍、十二指腸潰瘍

胃潰瘍や十二指腸潰瘍、消化管の腫瘍は消化管の粘膜から出血することで貧血になります。また、ステロイド剤や非ステロイド性の鎮痛薬によって消化管の粘膜を傷つけることがあり、そこから出血していることもあります。消化から出血する場合は便の色が黒っぽくなるので注意が必要です。

 

貧血を改善する食事療法

愛犬の貧血を解決するためにはやはり食事の改善が必要です。血液をしっかりと作り出すためには鉄分、タンパク質、ビタミンB群と言った栄養素が欠かせません。

ビタミンB群は造血には必要なものでビタミンB1,B2,B6,B12,葉酸などが効果があります。特にビタミンB6とB12と葉酸は造血作用があるので積極的に食べさせてあげるようにしましょう。

レバー

鶏や豚のレバーをお湯でゆでたものやゴマ油で炒めたものを食べさせてあげると効果的です。

 

卵の卵黄は鉄分が多く含まれていますし、タンパク質も豊富です。愛犬に卵を食べさせる前にはしっかりと火を通したものにしましょう。

 

青魚

青魚も貧血には効果があります。青魚は鉄分、タンパク質、ビタミンB群を豊富に含んでいるので貧血のパーフェクト食材です。動物性の食品のヘム鉄は犬の身体に吸収されやすい点で優れています。

植物性の食品にもヘム鉄が含まれていますが、植物性のヘム鉄を食べさせる時はビタミン類を一緒に食べさせてあげると吸収率がアップします。

 

野菜・果物

野菜や果物の葉酸、ビタミンB群、ビタミンCと言った栄養素は貧血に効果がありますので積極的に食べさせてあげましょう。葉酸を含む野菜類としては、サツマイモ、ブロッコリー、大豆、イチゴ、メロン、柿などがあります。

ビタミンB群を多く含むものは、サツマイモ、ジャガイモ、ブロッコリー、バナナなどです。ビタミンCを多く含むものは、サツマイモ、ブロッコリー、ジャガイモ、柿などです。

 

ドッグフード

愛犬に貧血を改善するための食事を手作りで食べさせている飼い主さんもいますが、最近はいろいろな症状に合わせたドッグフードがいろいろとあります。貧血は数日の食事だけではなかなか改善できません。このため、食事療法は長期的な問題になってきます。

忙しい飼い主さんなどは長期で貧血の犬のためのドッグフードを利用するとストレスにもなりませんし、愛犬の体調もよくなるので症状に合わせたドッグフードを利用すると良いでしょう。安いものは食材が良くなかったり、保存料がたくさん入っているものもあります。安心できる食材と栄養で愛犬の貧血を改善しましょう。

 

サプリメント

貧血の場合、ビタミンB群は赤血球の再生に必要なのでサプリメントで補うようにしましょう。また、犬はビタミンC作ることができますが、ビタミンCも腸管から鉄を吸収するために必要な栄養素ですので、サプリメントで補っていくのも良いでしょう。

 

まとめ

愛犬の血液検査で赤血球数が基準値ではない場合、飼い主さんはその原因をしっかりと探って改善してあげることが大切です。赤血球数が基準値よりも低い場合は貧血の状態です。軽い貧血ならば食事療法などで改善できますが、内臓や脊髄に大きな疾患があることがあります。

また、赤血球数が基準値よりも高い場合、主な原因は脱水です。愛犬の様子がおかしいと思ったらすぐに動物病院を受診して早期発見早期治療をしてあげましょう。

犬の場合、貧血で少しくらいふらつきを起こしても飼い主さんが気づいてあげられないことで初期症状を見逃してしまうこともよくあります。日頃から定期的に動物病院で血液検査を行い、赤血球数の数値の計測をして健康チェックをしっかりと行うことが大切です。

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