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犬が膿皮症になったら?診断と薬の治療法、原因と予防の知識

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獣医師・宿南章

犬の皮膚病として最も多いと言われているのが膿皮症です。
膿皮症はその名のとおり皮膚に膿のようなものができてしまう病気ですが、犬の発症する皮膚病の中で最も多い病気です。

そんな膿皮症は症例が多いからと言って、簡単な病気ではありません。
愛犬の体調にかかわる病気となってしまう可能性さえあるのです。

健康を侵してしまいかねない皮膚病ですので、飼い主として注意してあげることが大切です。

そんな膿皮症から愛犬を守ってあげるために、膿皮症について、まずは知ることから始めていきましょう。

ここでは膿皮症とその原因、治療法、予防法について紹介していくことにしましょう。

目次

膿皮症とは

膿皮症とは一般的に夏場に多く発症が見られる皮膚炎です。
発赤や発疹、脱毛などを伴う病気で、主に犬の顔や脇、体幹と呼ばれている背中やお腹、股や足の指の間、耳の後ろなど色々なところに現れます。

皮膚の抵抗力が落ちた時や免疫力が低下した時に発症するケースが多く、軽症のものは適切な対処法を試みるだけですぐに完治しますが、その対処法が不適切だったリ、抵抗力、免疫力が極端に弱っている時などは、体のあちこちに感染し、炎症が広がりやすく、重症化することも珍しくありません。

膿皮症はそのケースごとに炎症の深さや程度が異なりますが、皮膚そのものが化膿してしまう病気ですので、進行が進むと治療もそれなりの時間が必要となります。

また、ひどいかゆみが伴うため、愛犬にとってもつらい病気で、そのかゆみから患部を掻きむしる行動を取ってしまうため、そこからまた感染が広がり治療が長引くと言う悪循環が起きてしまいます。

ポイント

愛犬の体に発疹など、膿皮症の症状を見つけたら、すぐに治療してあげることが大切です。

膿皮症の種類と症状

膿皮症は、表皮、真皮、皮下組織それぞれの症状の度合いによって種類が分類されています。
主に膿皮症には以下の種類があります。

  1. 表面性膿皮症
  2. 表在性膿皮症
  3. 深在性膿皮症

各膿皮症とその症状について見てみることにしましょう。

表面性膿皮症

皮膚の一番外側、角質層にできた膿皮症のことで、赤い小さな湿疹と共に小さな膿が溜まります。
人間にニキビができた時のような状態の発疹が特徴です。
膿皮症の中では軽い症状で、治療もそれほど時間がかかることはありません。

表在性膿皮症

皮膚表面だけでなく、毛包に細菌が侵入してしまい、そこにつながっている皮膚組織も合わせて化膿してしまっている状態の膿皮症で犬の膿皮症の中で最もポピュラーな膿皮症がこれにあたり、通常ただ膿皮症と診断された場合にはこの状態が多くなっています。

膿疱ができたり、湿疹が盛り上がり膨らんだり、脱毛などの症状が見られ、激しいかゆみを伴うのも大きな特徴となります。
基礎疾患が原因のケースも考えられるため、注意が必要な膿皮症と言えます。

深在性膿皮症

細菌感染が最も深い真皮と言う部分にまで達してしまっている膿皮症です。
ひどいかゆみが伴うため、出血してしまうまで掻きむしることが多くなり、そのことが原因となってかさぶたや皮膚が部分的に厚くなるなどの症状が見られます。

ここまでいくと健康状態にも悪化が見られ、発熱したり、食欲の減退、痩せるなどの重篤な症状が出てきます。
もちろん上記の2つの症状より治療にもずいぶん長い時間がかかります。

膿皮症の原因とは?

膿皮症は細菌が原因で起こる皮膚炎です。
犬自体が持っている常在菌が異常に繁殖してしまい、湿疹や炎症を引き起こします。

約90%のケースで膿皮症を引き起こしているのが、ブドウ球菌です。
犬がもともと持っている菌の一つですが、様々な要因が重なり合うことでそのバランスを崩し、膿皮症の引き金となります。

例えば、アトピー性皮膚炎などの皮膚炎もその要因として考えられます。
犬はかゆみや痛みが伴う皮膚病を患うと、なめたり、掻きむしったり、噛んだりしてしまうため、皮膚を傷つけ、そこから細菌が繁殖してしまいます。
その時に免疫力が弱っていたり、体質として抵抗力が低い犬の場合、細菌感染による炎症が進み、膿皮症になってしまいます。

また、脂分やほこりなどで不潔にしていたり、反対にシャンプーなどで洗いすぎて、皮膚のバリア機能を弱めてしまっている場合にも、細菌に対する抵抗力が弱くなっているため、膿皮症を発症しやすくなります。

要因として考えられる基礎疾患には、アトピー性皮膚炎の他に、脂漏症、クッシング症候群、肝臓病、糖尿病、甲状腺疾患などがあります。

膿皮症の見つけ方

膿皮症は進行してしまうと治療に時間のかかる病気です。
そのため早めの発見が重要です。ひどくかゆがり、以下のような症状がある場合には膿皮症が疑われます。

その発見方法の基準も紹介しておきましょう。

  • 赤い発疹があり、それが徐々に広がっている
  • 膿を伴うジュクジュクとした発疹が見られる
  • 膿疱がある
  • 発疹部分が、色素沈着を起こしている
  • 発疹と共に毛が抜ける症状が見られる
  • 鼻の頭に発疹が見られる
  • 湿疹が腫れ上がり盛り上がっている
  • 赤い湿疹などと共に熱がある

などの症状と愛犬がかゆさを訴えるようであれば、膿皮症の可能性があります。
動物病院を受診して、適切な治療を行っていきましょう。

膿皮症の診察と治療法

まずは動物病院を受診しましょう。
動物病院では以下のような診察を行います。

STEP
診察と診断

膿皮症の可能性がある場合、まずその患部の膿や皮膚組織を調べ、原因となっている細菌の特定が行われます。
視診と共に、他の疾患などが原因となっていないかも合わせて診察します。

検査を行ったからと言って、その原因を正確に判断することは簡単ではありませんが、飼い主側の話を聞きながら、おおよその原因となるものを特定していき、治療を行っていきます。

STEP
基本となる治療法の選定

犬が膿皮症と診断された場合、主に次のような治療を行っていきます。
膿皮症と共にその症状を誘発した基礎疾患の治療も行っていくケースも多くなっています。
それぞれ、詳しく見ていきましょう。

塗り薬

軽い表面だけの膿皮症の場合はこの塗り薬が効果的な場合もあり、処方されることも多くあります。
しかし悪化している膿皮症の場合、塗り薬を湿布しても効果がないので使用しないことも少なくありません。

薬用シャンプー

殺菌成分の入った薬用シャンプーを週に一度使用していきます。
一般的なシャンプーと違いゴシゴシと洗うわけではなく、薬用成分を肌に染み込ませる目的で使用していきます。
古くなった組織や滲出物を取り除くこともできるものです。
そのため泡立ちはそれほどありませんが使っていくことで膿皮症の治療が行えます。

抗生物質の投与

抗生物質の投与は膿皮症の進行を抑えるために、そして細菌感染が広がらせないために使用していきます。
細菌に合った抗生物質でない場合は、効き目が低いことがあるため、様子を見ながら抗生物質の種類を変えたりして治療を行っていきます。

抗生物質の種類によっては犬の体質に合わないことも考えられ、軟便などを引き起こす場合もありますので、飼い主はその効き目、副作用についても注意をしていくといいでしょう。
服用期間はその症状によっても異なりますが、おおよそ3週間から6週間程度です。

患部の症状が治まっても再発を防ぐためにその後1週間から2週間、抗生物質を飲み続けます。
完全に膿皮症を完治するためですので、自己判断で、服用をやめないようにしましょう。
決められた期間しっかり服用させてあげることが大切です。

基礎疾患の治療

膿皮症を引き起こした基礎疾患の治療をしていきます。

甲状腺機能の低下や脂漏症、クッシング症候群、ノミやダニなどの寄生虫の除去が必要な場合には、その治療を優先して行っていきます。

治療と合わせて行う自宅ケア

膿皮症の症状を早く完治へと導くためには、自宅でのケアも合わせて必要になってきます。
トリミングで毛足を短くカットしたり、毎日のブラッシングも丁寧に行っていくといいでしょう。
また、処方されたシャンプーを自宅で1週間おきに使用していきます。

ただし毛の刈り過ぎや小まめな薬用シャンプーの使用は、逆に外的刺激を受けやすくさせ、細菌の繁殖を加速させてしまうことになりますので注意しましょう。

毛足の長い犬やしわの多い犬種は、濡れタオルで重なり蒸れがちな患部を小まめに拭き清潔に保ってあげることも忘れてはいけません。

膿皮症になりやすい犬種はあるの?

膿皮症になりやすい犬種かもと言われて、自分の愛犬のことを心配していると言う方も多いと思いますが、膿皮症は基本的に犬種に関係なく発症が見られる病気です。
そのため特定の犬種が他より発症しやすいと言うことはありません。

ただし、夏暑さが厳しくなったり、梅雨のじめじめした時期、暖房器具などを使用する冬の肌が乾燥する時期に膿皮症になる犬も多いため、毛足の長い犬種やしわの多い犬種は膿皮症の発症もリスクも高まることが考えられます。

もちろん飼い主の日ごろのケア次第とは言えますが、注意深く膿皮症になりやすい部分をチェックしてあげることも必要と言えるかもしれません。

また、子犬や老犬にも膿皮症の発症例が多く見られます。
免疫力、抵抗力が低いことが理由として挙げられます。
こうした年齢的なものも踏まえて、予防対策を考えてあげることも大切と言えるかもしれませんね。

膿皮症の予防策は?

かゆがり、皮膚が膿んでしまう膿皮症。できることなら愛犬のリスクを減らしてあげたいものです。
愛犬が膿皮症にかからないように、飼い主として行ってあげられることはあるのでしょうか?
日頃から簡単に行える予防策は以下の事になります。

  • 清潔を心がける
  • 寄生虫を駆除する
  • トリミングを行う
  • ストレスを溜めさせない
  • 食事や栄養管理にも気を遣ってあげる

では、それぞれ詳しく見ていきましょう!

清潔を心がける

食事をした後や排せつ後、汚れた個所をふき取ってあげることも予防策として有効と言えるでしょう。
特にしわの多い犬種などの場合、汚れがしわの間に入り込んで不潔になってしまいがちですので、濡れたタオルなどで小まめに汚れをふき取ってあげると膿皮症の予防になります。

また、毛足の長い犬種などは風を当て、蒸れを抑えてあげるために小まめにブラッシングをしてあげるようにしましょう。
雨や入浴で毛が濡れてしまっている時には細菌も発生しやすくなりますので、できるだけ早くドライヤーなどで乾かし、細菌の繁殖を抑えてあげるようにしましょう。

寄生虫を駆除する

膿皮症だけに限らず、皮膚病の引き金となるのが寄生虫です。
ノミやダニのように外部寄生虫は、散歩や他の犬との接触などでついてしまうことも多いため、日ごろから定期的に寄生虫の駆除を行うよう心がけましょう。

寄生虫の中には、人へ害が及ぶものもたくさんありますので、飼い主の身を守るためにも必要なことです。
市販の駆除薬や動物病院などで実施している駆除対策で、皮膚病の原因ともなる寄生虫を寄せ付けないようメンテナンスしてあげましょう。

トリミングを行う

菌の繁殖しやすい夏場などの季節には特にきちんとトリミングを行っておくことが大切です。
綺麗に体を洗ってもらって、サマーカットなど毛足を短くしておくことも予防策と言えるでしょう。

また、つめの手入れやもうすぐ抜け落ちる毛を取り除いてあげることも膿皮症の予防につながります。
定期的なお手入れも習慣としてあげるといいでしょう。

ストレスを溜めさせない

膿皮症とストレスは一見関係ないように思えますが、犬もストレスを溜めると免疫力が低下します。
免疫力の低下で常在菌の繁殖が進み膿皮症を患うこともありますので、ストレスをため込まない生活を心がけてあげることも大切です。

毎日少しの時間でも構わないのでスキンシップをとる時間を設けたり、散歩に連れて行ってあげる、遊んであげるなどしてストレスを発散させてあげましょう。

食事や栄養管理にも気を遣ってあげる

食事は犬の健康な体作りの基本です。
日頃から免疫力を高めてあげるよう、栄養バランスの取れた食事を心がけてあげれば、少しばかりの細菌に負けることはありません

また、膿皮症になってしまったとしても、治癒能力が高いため悪化を避けることができます。
栄養面を考えたドッグフードやサプリ、おやつを選んであげるといいでしょう。

日頃からの予防と早期発見がポイント!

膿皮症になりやすい子は一度完治しても、また同じ季節に膿皮症を発症してしまうことがあります。
常日頃から予防を心がけてあげると同時に、早期発見してあげることが重要です。
そのためにも日ごろから愛犬とのコミュニケーションを濃密にしておきましょう。
ちょっとした変化や湿疹、膿などにも早く気づくことができます。


また、予防のために行うケアをしやすくするためにも、体を触られることに慣らしておくことも大切と言えるかもしれませんね。
膿皮症だけでなく、愛犬の健康を守り、楽しいペットとの暮らしを満喫してくださいね。

まとめ

獣医師・宿南章

膿皮症は飼い主の心がけ一つで、未然に防ぐことのできる病気です。

犬に多い皮膚病であるため、散歩など他の犬との接触が原因となって、膿皮症を起こしてしまうこともありますが、早期発見できれば、治癒も早く、膿皮症を長引かせることはありません。

常日頃から愛犬とコミュニケーションを多くとることが膿皮症の予防、早期発見につながります。

愛犬の健康を守るためにも、充実したペットライフを過ごすためにも愛犬との濃密な時間を設けていけると良いですね。

犬の膿皮症

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獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

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記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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