当然のことですが、犬を飼うにはお金がかかります。毎日の食費やおやつ代、シャンプーやトリミング、年に一度の予防接種やワクチン代、そして病気やケガをすれば人間以上に高額な費用が必要となってきます。そのため、万一の場合を考えて犬や猫などのペット保険に加入している飼い主さんも多いです。しかしその反面、ペット保険を必要と感じていない飼い主さんもいます。
では、実際にペット保険は必要なのでしょうか。もし加入する場合、どのようなペット保険を選ぶのがいいのでしょうか。あなたの大事な愛犬のために、ペット保険の必要性と選ぶ際のポイントをご紹介します。
ペットの医療費が高額になる理由
私たち人間には健康保険という制度があります。病気やケガをしても診療費の3割ほどを負担するだけで適切な診察を受けられます。
ですが犬や猫などペットには健康保険という制度がないため、動物病院での医療費は飼い主さんの全額自己負担ということになります。なぜなら、動物病院では国で決められた治療費というものが存在しないからです。
「独占禁止法」によって、獣医師や団体が協定を結んで費用の基準や治療費を決めてはいけないと定められています。つまり動物病院での診療は「自由診療」という制度であるため、動物病院によって医療費が異なるのです。
○○動物病院は△△動物病院より高かった、ということが起きるのもそういう理由からなのです。
ペット医療の進歩
近年はペットの衣食住環境が向上しており、愛犬が家族と一緒の空間で過ごす「室内犬」も増えています。日本の昔ながらの飼い方といえば、家の外に犬小屋を建てて犬は鎖につながれているのが普通でした。
しかし今では、うだるような暑さの中や身も凍るような寒さの中ひたすら犬小屋の中で丸まっている必要もなく、快適な室内で家族団らんを楽しむことができます。常に近くにいることで、愛犬の身体に異常があればすぐに気付くことができ、愛犬も安心感を得ることができるのです。
そういった環境の変化やペットフードの進化もあり、ペットも人間と同じく高齢化が進んでいます。それまでは屋外での飼育によって4~5歳だった犬の寿命が、今では15歳前後にまで伸びており、20歳まで長生きするケースもあります。
そして、人間と同じくペットの医療技術も発展と進歩を遂げています。大手の動物病院になるとCTやMRIといった医療機器が備えてあり、人間と同じように高度な治療を受けることができるのです。必要があれば手術を行い、愛犬が元気になった、目が見えるようになった、歩けるようになった、という喜ばしい報告も多々あります。
家計を圧迫するペットの医療費
しかし、高度な医療を受けられるということは、治療費も必然的に高額になるということです。まして人間のように健康保険がないのですから、かかる医療費の全額が飼い主さんの負担となります。
たとえば1回の手術で数十万円ほどかかることは珍しくなく、時には100万円を超える場合もあります。入院費や通院費も含めればもっと負担する額は増えてきます。
実際に、愛犬の治療費にどのくらいかかったかというアンケートでは、1~5万円未満が約40%と一番多かったものの、5~10万円未満が17.6%、10~30万円未満は15.8%、30~100万円未満でも10.3%となっており、10万円以上の高額医療は全体の約26%となっています。
つまり飼い主さんの4人に1人は、10万円より高い医療費を払っているということになるのです。愛犬が元気で長生きしてくれるのは嬉しいことですが、全額負担の治療費はやはり家計にとって痛手となっているのは事実です。
愛犬にペット保険は必要か?
では、飼い主さんはペット保険の存在をどれくらい知っているのでしょうか。実は、ペット保険に加入していない飼い主さんのほとんどが存在を知っています。そして約半数近くの飼い主さんがペット保険の必要性を感じているのです。
ところが実際に検討しているかというと、約90%の飼い主さんがNOと答えています。つまり、ペット保険の存在は知っているがそれほど必要とも思わず、加入を検討している飼い主さんがとても少ないということです。
ペット先進国のスウェーデンでは、愛犬にペット保険をかけている飼い主が約80%、イギリスでは約45%です。日本では現在約16社ほどがペット保険を扱っていますが、加入率は4~5%ほどしかなく、ペットに関してはまだまだ発展途上といえるでしょう。
これは、日本人の昔からの考え方に由来するのかもしれません。獣医師の中にも、人間と犬は違うから必要最低限の治療のみで、できるだけ自然に沿って看取るという方針の方がいます。一方で、愛犬は家族だから人間と同じように手を尽くすのが当然だと考える方もいます。
どちらが正しいとか間違っているとかの問題ではないのですが、愛犬が病気やケガをした時に適切な治療をしてあげられるだけの環境や心構えを整えておくことは良い事だと思います。
一見若そうでも健康そうでも愛犬は確実に老いている
現在ペット保険への加入を検討していない飼い主さんの多くが「うちの子はまだ若くて元気だからペット保険は必要ない」と考えているようです。モコモコと体中を柔らかい毛で覆われている動物は、年を重ねても人間のように分かりやすく老けていくことはありません。シニアといわれる年齢になっても可愛らしさは変わらないものです。それゆえに、飼い主はいつまでも愛犬が若くて健康だと思い込んでしまいがちです。
しかし、年を重ねた分だけ愛犬の身体は確実に老いていきます。ペット保険に加入している飼い主さんの多くが、愛犬が病気になって医療費が高額なことに驚いたのがきっかけだと話しています。いつまでも元気だと思っていた愛犬が病気になってしまった事にショックを受け、治療費が思っていたよりずっと高い金額だったことにさらにショックを受けてしまうようです。
もちろん病気の内容にもよりますが、手術が必要な場合、手術と入院が必要な場合、退院してからも通院が必要な場合とさまざまです。また、手術となれば10万円以上かかるケースがほとんどで、最先端の医療ともなれば100万円を超えることも珍しくはありません。
つい先日まで元気だと思っていた愛犬に病気が発覚し、数日後には高額な費用がかかる手術を受けなくてはならなくなる、飼い主さんが困惑するのも無理からぬことです。ですが、よくあるケースだということもまた事実だと知っておいてください。
約80%の犬が5歳になるまでに一度は手術を受けている
「うちの子はまだパピー(1歳未満の仔犬)だから今すぐ考えなくてもいいな」と思った飼い主さんもいるかもしれませんね。しかし犬を飼うにあたって、狂犬病の予防接種や数種類のワクチンなど、約90%の飼い主さんと愛犬が少なくとも年に1度は動物病院を訪れています。そしてその中の約80%以上がなんらかの手術を受けているのです。
5歳になるまでに手術を受けているケースも約80%ということから、若いからといって病気やケガと無縁だとは言い切れないことがわかります。犬種によっては、若い頃から気をつけなければならないという「かかりやすい病気」もあります。生まれつきの持病というものもあります。また、パピーならではのヤンチャから思わぬケガをしてしまうこともあります。そしてあってはならない事ですが、犬同士のケンカやトラブルから相手にケガをさせてしまうという事態もあり得るのです。
そういったあらゆる問題に対処できるよう、まさに「保険をかけておく」というのは賢明な判断といえるでしょう。すでに病気にかかってしまってからではペット保険に加入できない場合もありますから注意が必要です。ペット保険とは、人間の保険と同様にもしもの時に備えておくことが前提なのだと考えてください。
加入するか加入しないかは飼い主さんの判断
飼い主さんによっては、ペット保険に加入しているつもりでタンス預金をするという方もいらっしゃいますが、それはそれでとても良い事だと思います。ペット保険の種類によっては、加入時の保険料が安くても継続するにつれて金額が上がるタイプもあります。愛犬にもっとも医療費がかかる年齢に差しかかった頃に、払い続けるのが苦しくなって解約してしまうようでは意味がありません。先の事を考えて無理のない保険料を設定する事も大事です。
また、保険料を払い続けるつもりでタンス預金に回すのも選択肢の一つだといえます。保険に加入していても、飼い主さんにかかる負担は0円にはなりません。高額な手術になればそれなりの医療費は負担しなければならなくなります。
たとえば飼い主さんが3割負担なら、50万円かかる手術で15万円、100万円では30万円です。この金額は、もともとの保険料にプラスしての出費です。保険料と払った年数などを計算してみたら、もしかしたら損になる場合もあるかもしれません。もしくは、一生涯病気にかからず手術をする必要もないかもしれません。そうなるとたしかに掛け損となってしまいますね。
ですが、いざ愛犬が病気になってからでは遅いのです。万一、タンス預金を大幅に上回るような医療費が必要になったら、通院や薬で毎日一万円札が飛んでいったら、そして治療を続行することが出来なくなったら、飼い主さんは悔やんでも悔やみきれない思いをすることでしょう。
ペット保険のおすすめの選び方3つのポイント
ペット保険を選ぶ際にまず気をつける必要があるのは愛犬の年齢です。シニア期をいわれる7歳を過ぎると加入できない保険もありますので注意してください。
1,補償内容
補償は、入院補償・通院補償・手術補償の3つが整っているものを選びましょう。中でも通院補償は大事です。手術補償や入院補償が多いのも安心ですが、保険会社の統計データによれば保険金の請求の約2/3が通院補償となっています。
通院には、診察料や薬代や検査費なども含まれるので、全額自己負担になると思っているより費用がかさみます。1年間に補償される手術の回数は1~2回というものが多く、年に何回も手術をするというのは珍しいケースですので、より実用性の高い通院補償に重きをおきましょう。
2,免責金額
免責金額がない保険プランかどうかも確認してください。免責金額とは、保険請求した時に飼い主さんが支払わなければならない自己負担金です。たとえば50%補償の保険プランの場合、免責金額がなければ、1万円支払っても50%を補償してもらえるので残りの5000円だけの負担で済みます。しかし免責金額があった場合は、1万円から免責金額を差し引いた分の50%となるのです。もし免責金額が2000円であれば、1万円から2000円を引いた残りの8000円が補償の対象額となります。その金額から50%ですから、4000円しか補償してもらえず6000円は自己負担という事です。
保険料が安いというメリットをもつ免責金額付き保険プランですが、免責金額が高いほど自己負担の金額が増えるというデメリットがあるのです。また、免責金額を下回るような少額の治療費の場合は補償してもらえなくなるので注意してください。
3,保険料と終身継続
保険に加入する上で保険料は一番気になる部分ですね。ペット保険は基本掛け捨てですから、なるべく安く抑えたいというのが飼い主さんの気持ちでしょうが、安いなりの補償しかしてもらえないのでは加入した意味がありません。
とはいえ、手厚い補償はどうしても保険料が高くなってしまうものです。愛犬の年齢によって保険料が上がり続ける保険プランも、ずっと保険料が変わらない保険プランもあります。加入の際には色々な保険プランを照らし合わせてみて、保険料と補償内容のバランスが良く、愛犬の健康状態やずっと払っていける金額かどうかも考慮して、納得のいくものを選びましょう。
なおペット保険には、更新があるものと終身継続ができるものがあります。更新可能な年齢を設けている保険もありますので、終身継続を希望するなら可能な年齢をしっかり確認しておいてください。
まとめ
愛犬にいつまでも健康で長生きしてもらいたいと思うのはどの飼い主さんも同じだと思います。そして、愛犬を亡くした時に何一つ後悔しなかったという飼い主さんはとても少ないのです。愛犬が病気やケガや寿命で長くないとわかった時、飼い主さんは愛犬のために一生懸命介抱すると思います。
ですが、たとえ最期の時まで最善を尽くしていたとしても、どうしても「もっとこうしてあげればよかった」「ああしてあげたかった」という自責の念がよぎってしまいます。それがもし、必要な治療を受けさせてあげられなかった結果だったとしたら、もっと自分を責めることになってしまうでしょう。
ペットは高齢になると病気のリスクが高くなる、その治療費は決して安くはない、そのことを念頭において、どうか愛犬と自分自身のために備えておいてください。