あなたの愛犬は、「しきりに首を掻く」「頭を振り回す」「耳を床などにこすりつける」などしていませんか?
かゆくても手の届かない外耳炎を患っている場合、犬はこのような行動を見せることがあります。
外耳炎になるとベトベトした耳垢と嫌な臭いがしますし、ヒドくなると皮膚炎などのきっかけにもなりますので、早期の治療がとても大切です。
ここでは犬の外耳炎の症状と原因、治療法や費用、再発しないための予防法などを解説していきます。
外耳炎とは
外耳炎は耳の入り口から鼓膜までの間である外耳道が炎症を起こす病気です。
原因は様々なものが考えられますが、炎症を起こすと、ベトベトとした耳垢がたまり、臭いを発します。
耳垢は耳垢腺という外耳道にある器官で作られるため、外耳炎になっていなくても出てくるものですが、耳の中をきれいな状態に保つと言う働きがあり、炎症を起こすとその原因である異物を外に出そうと活発化します。
しかし、菌が繁殖してしまっている為、その原因そのものを追い出すことはできず、臭い耳垢が大量に作られてしまいます。
この状態に飼い主が気づかずに放置してしまうと、菌の増殖と炎症が進み、耳の中の皮膚が厚くなったり、外耳道を防いでしまうこともあり危険です。
また、炎症がより進行し、外耳の奥にまで広がってしまうと、中耳炎や内耳炎などを引き起こす可能性もあり、重症化してしまいます。
外耳炎は悪化する前の早めの治療がカギとなります。
常日頃から愛犬の体調やご機嫌などと共に耳の中の状態も、注意深く観察してあげることが大切と言えるでしょう。
外耳炎の症状
外耳炎を起こすと、茶褐色黒色などのベトベトとした耳垢が出始めます。
この耳垢は普段の物と比べ臭いも強く、異臭を放つことも少なくありません。
また、炎症が見られることから耳を覗くと赤く腫れ上がるなどの症状が見られます。
かゆみや痛みが伴うため、愛犬の中には床や壁に耳をこすりつけたり、首を大きく揺らしたり、ブンブン頭を振りまわしたり、頭や顔周辺などを触られるのを嫌がる子もいますので、このような行動が見られた場合には、まずは耳の中を観察してみると良いでしょう。
炎症が軽い場合には、動物病院での治療ですぐに完治しますが、ひどい症状を伴う場合、手術が必要なこともあります。
頭を振りすぎたことで、耳の軟骨の毛細血管が切れてしまい、耳に血がたまってしまう耳血腫を発症してしまう子もいますので、完治までは時間がかかることも多くなります。
外耳炎になり例えその時は治っても、症状がひどい外耳炎を患ってしまった場合、再発など癖になることもありますので、注意が必要です。
できる限り早期に発見し治療させてあげることが、再発などを防ぐポイントです。
外耳炎の原因
犬の外耳炎の原因は主に細菌や真菌の繁殖です。
耳の中で菌が増加してしまうため、赤く炎症が見られ、とにかく耳垢が多くなります。
臭いの強い耳垢が発生するため、飼い主がその匂いに気づき発見することもありますが、かゆがる様子に異変を感じ動物病院を訪れるケースも少なくありません。
外耳炎の原因には以下のようなものがあります。
- 外耳道の形状
- 犬種によるリスク
- 耳ダニ(寄生虫)
- 脂漏症皮膚炎
- アトピー性皮膚炎
- 外耳道が狭くなる
それでは詳細を見ていきましょう!
外耳道の形状
外耳道とは、耳の入り口から鼓膜までの耳の孔のことですが、人間と異なり犬の外耳道はL字に曲がっている形をしています。そのためどうしても耳の中の温度と湿度が上がりやすく、細菌や真菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。
外耳の形が原因となる炎症とも言えるため、特に発症の多い病気でもあります。
犬種によるリスク
外耳炎の発症の多い犬種も存在します。
ダックスフンドやゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバーなどは耳が垂れていますが、外耳の形状に加え、耳が垂れていることで耳の中の温度や湿度も他の犬よりも上がりやすく、細菌、真菌の発症するケースがどうしても多くなります。つまり外耳炎になってしまうリスクが高いと言えるのです。
また、シーズーやトイプードルなどは、耳の毛の量が多いため、外耳炎になる確率が高くなっています。
特に、耳の毛量の多さ、垂れた耳の形を持っているアメリカン・コッカー・スパニエルは外耳炎になりやすく、重症化しやすいので注意が必要です。
耳ダニ(寄生虫)
耳ダニは耳の中で繁殖するダニです。
大きさは0.2㎜から0.5㎜程度と小さく、その一生を一宿主の耳で過ごします。
耳ダニに感染してしまうと、激しいかゆみと痛みが襲うことになりますので、犬も足で耳を掻く、耳を強く物にこすりつけるなどして抵抗します。
しかし、そのことが原因で耳の中を傷つけてしまい、細菌性の外耳炎を発症してしまうことも少なくありません。
外耳道にはダニのフンや卵だけでなく、ダニを排除しようと汚れた耳垢や分泌物なども多くありますので、外耳炎の引き金になってしまうのです。
耳ダニは他頭飼いしている場合や散歩などでも発症の多く見られる病気ですので、注意しましょう。
脂漏症皮膚炎
外耳炎を起こしている7割から8割の犬がマセラチア皮膚炎によるものと言われているほど、外耳炎の引き金になる病気です。マセラチアは高い温度を好むため、耳の中が最も繁殖に適した場所となってしまうのです。
マセラチア皮膚炎を発症した場合、外耳炎も併発することが多くなっていますので、治療を続けていくとともに耳の健康状態にも気を配ってみると良いでしょう。

アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎を発症している子の多くは、アレルギー体質でもともと皮膚の抵抗力が弱いことが多くなっています。
そのため、細菌や真菌などの感染もしやすく、体質的に健康な子と比べ、外耳炎の発症も多くなっています。
皮膚のバリア機能を高め、アトピー性皮膚炎の治療をしていくことはもちろん大切ですが、併せて外耳炎にならないよう、飼い主が心がけてあげると良いでしょう。
また、外耳炎を発症してしまった場合でも、すぐに治療ができるよう早めに動物病院を受診するようにしましょう。

外耳道が狭くなる
植物の種などの異物の混入や腫瘍によって外耳道が狭くなってしまった場合にも、外耳炎を発症することがあります。
外耳道が狭いと温度や湿度も上がりやすく、また異物によるばい菌なども要因となって、外耳炎を起こしてしまいます。
また、過剰な耳垢などでも外耳炎を発症することがあります。
外耳炎を引き起こす細菌や真菌とは?
外耳炎を引き起こす細菌や真菌には他にも、ブドウ球菌、大腸菌などがあります。
耳の奥の水平耳道でブドウ球菌が見つかることも少なくありません。
外耳炎の治療は?
外耳炎の治療は、その外耳炎の原因になっているものによって様々な治療法が行われます。
まずは耳を耳鏡やオトスコープなどを使って観察し、耳垢や血液、レントゲンなどを用いてその原因を特定します。
それから耳に溜まった耳垢の洗浄が行われます。
ただし耳の炎症がひどく、強い痛みなどがある場合には耳の洗浄を行わないこともあります。
痛みがあり、洗浄が行えない犬の場合には、まず点耳薬や飲み薬を用いて治療を行っていき、その上で症状が治まってきてから、耳を洗浄していきます。
細菌・真菌の治療
細菌が原因の場合は抗生剤を使って治療を行っていきます。
真菌が原因の場合には抗真菌剤の投与をしていきます。
原因となっている菌をしっかり特定し、その菌に合った治療を行っていくことで、スムーズな治療となります。
寄生虫の治療
寄生虫が原因となっている場合には駆除剤を使います。
耳ダニが原因となっている場合には抗ダニ薬が最も有効であるため、それを耳に投与します。
耳を掻いて傷ついているケースでは抗生物質が処方されることもあります。
病院だけで治療を行うのではなく、飼い主さんと共に、3週間程度継続して治療を行って様子を見ていきます。
駆除剤を何度か継続して使用し、ダニが完全にいなくなるまで、つまり完治するまで治療を行うことが大切です。
多頭飼いなどをしている場合には、他の犬や猫も耳ダニに感染しているケースが多くなっていますので、他の子と合わせて治療していくことが大切です。
ダニの隠れ家である耳垢を掃除することも飼い主が行うべき治療の一つとなります。
アレルギーの治療
アレルギーが疑われる場合にはアレルギー検査を行った後、そのアレルギーの治療をしていきます。
点耳薬などを用いての治療も行っていきますが、抗アレルギー剤を使うことでかゆみなどがなくなり、外耳炎も徐々に炎症が引いていきます。

異物・腫瘍などの治療
異物が原因の場合はその異物を除去していきます。
腫瘍の場合には外科的処置を行うこともあります。
外耳炎の治療期間はどのくらいかかる?
外耳炎の治療はその症状の度合い、原因によって治療期間が異なります。
短期間で治療が完了することもありますが、医師から「かなり重症ですね」と言われた場合には、時間が長くかかることもあります。
また、再発を繰り返すこともありますので、治療後も注意深く耳を観察してあげることが必要と言えるでしょう。
治療後の予防は?
外耳炎の治療はそれぞれ点耳薬などの薬を用いて行っていきますが、完治したと医師に言われ治療をやめた後でも、再発が見られることが多くなっています。
再発を防ぐ予防はどうしたらいいのでしょうか?
基本的な予防方法は以下の3つです。
- 愛犬の耳のお手入れを忘れずに
- 定期的な検診を
- プロアクティブ治療を行う
それではひとつずつ見ていきましょう!
愛犬の耳のお手入れを忘れずに
再発を防ぐためには、やはり耳を清潔にすることが大切です。
耳掃除などを心掛け、再発を防いでいくと良いでしょう。
ただし耳掃除をしすぎて耳の中に傷がついてしまうとそこから菌が侵入し、外耳炎を引き起こしてしまうことがありますので注意しましょう。
市販の耳洗浄液などを使って優しく耳掃除をしてあげましょう。
また、耳の温度や湿度を上げないことも再発を防ぐカギとなります。
シャワーの後はよく拭いてあげたり、耳が垂れている犬の場合には時々風を当ててあげて湿度を上げないようにしてあげることも効果的と言えるでしょう。
耳に毛が多いこの場合には、体のカットと同じように耳の毛を短くカットしてあげたり、抜いてあげると予防につながります。
定期的な検診を
外耳炎は炎症の軽いうちに治療を行えば、早く症状を抑えることができますが、一度悪化してしまうと長い時間治療に専念しなくてはなりません。
しかし、耳の中に炎症が出始める外耳炎ですので、飼い主が早期発見することは簡単なことではありません。
やはり医師によるチェックが一番です。
定期的に獣医の診察を受け、早期発見、早期治療を心掛けると良いでしょう。
外耳炎の再発経験のある犬の場合は、最低でも1か月ほどのスタンスで定期検診を受けるようにしましょう。
プロアクティブ治療を行う
最近では人のアトピー治療の主流となっている治療法ですが、犬の外耳炎でも応用している病院が増えてきています。
再発を繰り返しやすい子に用いられることが多くなっていて、症状が出る前に、点耳薬を投与し外耳炎を未然に防ぐ治療法です。
動物病院によって様々な予防法を提案してくれることも多くなってきていますので、よく医師の話を聞いた上で予防治療を受けてみるのも良いでしょう。
外耳炎の治療費は?
外耳炎の治療費は、症状にもよりますが1000円から3000円前後かかるのが一般的です。
ただしオトスコープを使った検査も種類によっては数万円と高額になることがあります。
また、外耳炎の治療は1回で終わらないことも多いですので、何度か動物病院での受診が必要となります。
もちろん通院回数は外耳炎の進行によっても変わってきますので、費用面もその都度かかってくることになります。
腫瘍などが原因で外耳炎を患っているケースでは、手術が行われることもあり、その治療費は数十万円など高額になります。
費用を話し合った上で、治療を決めることも大切ですし、費用についても医師と相談することが必要と言えるでしょう。
まとめ
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外耳炎は耳の入り口から鼓膜までの領域に炎症が起こる病気です。
外耳炎の主な原因は細菌と真菌の感染です。
マセラチアなどで感染するケースが多くなっていますので、大量の茶褐色の耳垢を見つけたり、かゆがる仕草、何かにこすりつける行動をとることがあったら、いち早く動物病院を受診し治療を受けさせてあげましょう。
また、外耳炎は一旦患ってしまうと再発の多い病気です。
治療後も予防を心掛けるようにしましょう。
体を洗った後に耳に水が残っている場合には良くふき取ってあげることが大切です。
外耳炎になりやすい犬種の場合には、耳の蒸れや毛を抜くなどして、定期的にチェックしてあげると良いでしょう。