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犬の耳血腫の治療法とは?症状・原因と注意点

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愛犬の耳が腫れていたり、痒がったりしていると耳血腫の疑いがあります。
耳血腫は軟骨と皮膚によって覆われた外側の部分の耳に耳からの分泌液や血液が溜まるために耳が腫れてしまう病気です。

耳が腫れることによって痒みが出たり、痛みがあったりします。
耳血腫が悪化すると二次感染として膿皮症になったり、耳が変形したりする危険がありますので注意が必要です。
また、一度かかると自然治癒することはありませんので、適切な治療をすぐしてください。


ここでは耳血腫で、具体的にどのような症状が出るのか、その原因と治療法、そして耳血腫になりやすい犬種についてもご紹介していきます。

目次

犬の耳血腫の症状

耳血腫はまたの名を耳介血腫と言います。
耳血腫では以下のような症状が見られます。

  • 耳が腫れる
  • 耳を痛がる
  • 耳が痒い
  • 耳を触られるのを嫌がる
  • 耳が熱を持つ
  • ストレスがたまる

それぞれについて詳しく見ていきましょう!

耳が腫れる

通常では薄い耳が急に綿を入れたかのようにパンパンに腫れあがりますが、突然耳が腫れるということはなく、痒がる、痛がるといった前触れがあります。
しかし、その症状を見逃してしまうと、突然耳が腫れあがるので飼い主さんはびっくりしてしまうことがあります。
一旦耳が腫れると外部からの刺激を受けやすいので、できるだけ早く動物病院に連れて行ってあげましょう。

耳を痛がる

耳を痛がり、不快そうにします。
腫れていると痛みが出やすく、腫れた耳はより一層他からの刺激を受けやすくなり重症化します。

耳が痒い

耳が痒いので後ろ足で掻いたり、他のものに耳をこすりつけて掻こうとします。
耳介に刺激を与えると数日で腫れあがるので、耳をしきりに掻いているときは、飼い主さんも注意し、すぐに動物病院に連れて行ってあげましょう。

耳を触られるのを嫌がる

耳が痛かったり、痒かったりするので飼い主さんにでも耳を触られるのを嫌がります。
いつもは耳を触られることに抵抗のない愛犬が、耳を触って欲しくないしぐさを見せたりするので注意が必要です。

耳が熱を持つ

耳介を触ると少し熱を帯びているように感じます。
耳介の内側が炎症起こしていることで熱が出ます。

ストレスがたまる

痛みや痒みがあると充分に睡眠をとれなくなりますが、睡眠不足でストレスに耐えられなくなるので、機嫌が悪くなったり元気がなくなります。
ストレスは万病の元で、自律神経が乱れてくると体調も崩れます。
すべての犬がストレスを受けたからと言って耳血腫を発症するわけではありませんが、ストレスが原因となり食欲がなくなり、体力も次第に落ちていきます。

耳血腫が悪化すると膿皮症になる

耳血腫で耳が腫れていると、痛みや痒みが出てきます。
このため、愛犬は激しく耳を掻いたり、刺激を与えたりするようになると長期間に渡り皮膚に強い刺激が加わりますので、耳の表皮が傷つき、その傷から細菌が体内に入って二次感染を起こすことがあります。
二次感染として犬がよくかかる皮膚病には膿皮症があります。
膿皮症になると膿が溜まったり、皮膚がただれたりします。

犬の耳血腫の原因

耳血腫の原因についても見ていくことにしましょう。
どんなことが原因となり発症するのでしょうか?
主な原因は以下の通りです。

  • 耳介への刺激
  • 外耳炎や中耳炎など耳の病気
  • 血小板減少症
  • 細菌に感染した
  • アレルギー疾患がある
  • 寄生虫が原因

耳介への刺激

耳介に強く刺激があった時に耳血腫になります。
例えば、壁などに強く耳をぶつけてしまった、何かと衝突したというようなことです。
強い刺激によって皮膚内の血管が損傷し、皮膚の内部で出血すると、耳に血液が溜まり腫れ上がります。
人間でも指の先端などを何かに挟んでしまったというようなことがあると、指先が内出血を起こして血豆ができますが、犬の耳血腫も同じような症状です。

外耳炎や中耳炎など耳の病気

愛犬が元々外耳炎や内耳炎など耳の病気を患っていると、耳に違和感があるので愛犬は自分の頭を強く振ったりします。
頭を強く揺することで耳の内部の毛細血管は損傷を受けて出血し、血液が耳の皮膚内で固まってしまうことで耳血腫になります。

血小板減少症

血液中の血小板が減少していると、内出血しても血液がなかなか固まらず、出血が止まらない、異常な出血が起こるということがあります。
血小板が減少することが、耳血腫という形で症状として現れることがありますので気を付けておきましょう。

細菌に感染した

元々耳に何らかの傷があった場合、その傷から細菌が皮膚内に侵入し炎症を起こして耳血腫を起こす可能性があります。

散歩中に耳に何かが当たったり、他の犬から噛まれたりして起こるようなちょっとした耳の傷でも細菌感染を起こすことがあるので日頃から傷には気をつけておきましょう。

細菌に感染して耳血腫になる場合、犬の耳に常在しているとされるマラセチアやブドウ球菌などが原因になる場合が多くあります。

アレルギー疾患がある

アレルギー体質の愛犬はアレルギーが原因で耳介に傷ができて炎症を起こしていることがあります。
耳が炎症を起こすと強い痒みが出ることもあるため、自分で強く掻いてしまい血管が損傷して内出血を起こし耳血腫になります。

寄生虫が原因

犬の耳にミミヒゼンダニが寄生することによって耳疥癬症という皮膚病を起こすことがよくあります。
耳疥癬は非常に強い痒みがあるため、愛犬は強く耳を掻きます。
耳を強く刺激することで耳の内部の血管に傷がついて、内出血を起こし耳血腫を起こしてしまいます。

犬の耳介は様々な働きを持っている

人間にも軟骨と皮膚でできている、いわゆる耳である耳介があります。
しかし、犬の耳介は人間の耳介よりもたくさんの働きがあります。

大きな役割としては、鼓膜や耳の器官を守る働きがありますが、犬の耳は人間の耳よりも敏感で、色々な方向から入ってくる音の情報をキャッチする働き、コミュニケーションツール、体温を調節するための放熱などを担っています。

そのため耳を覆っている耳介周辺にはたくさんの血管があり、外部から耳介に力の刺激などが与えられると、血管に血が溜まって、耳介軟骨とそれを覆う皮膚の間が腫れ上がります。

人間でも耳介血腫がありますが、主にラグビーや柔道など耳介や頭部に刺激が多いスポーツをしていると耳血腫になることがあり、決して珍しいことではありません。

耳血腫になりやすい犬種

耳血腫は比較的大きな垂れ下がった耳を持つ犬種がなりやすいと言われています。
耳血腫になりやすい犬種には以下の通りです。

耳血腫になりやすい犬種
  • ビーグル
  • ゴールデンレトリーバー
  • アイリッシュ・ウルフハウンド
  • アイリッシュ・セッター
  • アフガン・ハウンド
  • イングリッシュ・コッカー
  • イングリッシュ・セター
  • ダルメシアン
  • ダックスフント
  • キャバリア
  • シーズー
  • ドーベルマン
  • チン
  • ボーダーコリー
  • バーニーズ・マウンテン・ドッグ
  • ボクサー
  • ワイマラナー
  • セントバーナード
  • サルーキ
  • ロットワイラー
  • マルチーズ
  • プードル

大型犬や中型犬がなりやすいため、小型犬ではあまり症状が見られることがありません。
猫も耳血腫になることが稀にありますが、基本的には多くありません。

しかし、猫が耳血腫になった場合は、犬の治療よりも困難であることが多いです。

耳血腫になりやすい体質

よく外耳炎になるという犬が耳血腫になりやすい傾向があります。
外耳に違和感があるので愛犬が耳を激しく掻くことから、外耳炎をよく起こす愛犬は耳血腫になりやすいと昔から考えられます。

しかし、最近では耳を掻きすぎるから血管が傷ついて出血するのではなく、耳の軟骨が変形してくることによって耳介に血液が溜まるという説も有力です。

犬の耳血腫の治療

耳血腫は自然治癒の難しい病気です。
耳が腫れたり痛がった時には、できるだけ早く動物病院を受診してしっかり治療してもらうことが大切です。
耳血腫の主な治療方法は以下になります。

  • 血腫の血を抜く
  • 血腫を切開する
  • インターフェロンを注入する
  • ステロイドを内服する
  • 基礎疾患の治療をする
  • エリザベスカラーの装着

それぞれについて詳しく見ていきましょう!

血腫の血を抜く

耳の腫れの原因になっている血腫は大きさにもよりますが、血腫に針を刺して注射器などで内部の血液を抜きます。
通常よりも太い針を刺すので愛犬が嫌がる場合もありますが、耳介に溜まった血液を抜くだけで辛い症状は一気に楽になります。

血を抜く施術も特に難しいことではありませんので安心です。
一方、血液を吸引することで細菌感染の危険があるという理由から血腫の血液を注射器では吸引しないという獣医もいます。

血腫を切開する

注射器で中に溜まった血腫を抜き取ることができない場合や、血腫が非常に大きい場合は耳を切開して血腫を取り除きます。

一旦は血腫を取り除き、耳に腫れがなくなりますが、再び血液や体液がその空間に溜まらないように皮膚と軟骨を縫いつけて隙間ができないようにします。

耳から抜いた後に、感染予防のために抗生物質や止血剤を注入することがあります。

インターフェロンを注入する

5~7日に1回の割合で耳に5-10MUのインターフェロンを耳に注入します。
インターフェロンは体内で増殖するウィルスの増殖を押さえたり、免疫システムに働きかける薬です。

免疫システムを正常に近づけることで、体から出るアレルギー反応を減らすという治療に使われます。
比較的副作用が少ない薬とされていますが、薬が高価なことがデメリットです。
インタ-フェロンを耳に注入すると犬は痛みを感じるため、治療を嫌がる子もいます。

ステロイドを内服する

耳血腫を放置しておくと、内部に溜まった血液が軟骨に変化することで耳そのものが変形してしまいます。
この耳の変形を抑制するためにステロイドを内服して予防します。
ただし、ステロイドは長期間使用すると副作用を起こす危険もあります。

基礎疾患の治療をする

耳血腫の原因である基礎疾患の治療をしっかり行うことも大切です。
外耳炎や犬疥癬などはこれらの治療も優先的に行います。

エリザベスカラーの装着

耳にできた傷を掻いたり、刺激することで耳の中の血管が傷つきて出血するので、愛犬が自分で耳を掻かないようにエリザベズカラーを装着して刺激を与えないようにします。

放っておくと耳が変形する

耳血腫は、耳に血液が溜まった状態で放置すると内部でもっと血液が溜まっていきます。
放置しておくと1ヶ月ほどで耳の中に溜まった血液は徐々に体内に吸収されて、軟骨に変化し石灰化します。

そして耳の軟骨はどんどん変形してカリフラワーのように収縮して完全に変形します。
耳が一度変形してしまうとその後治療をしても、もう元のように綺麗な耳の形には戻りません。

耳の軟骨が収縮するので耳道が狭くなったり、慢性的な外耳炎の体質になってしまいます。

耳血腫は自然治癒しないので、治療せずに耳血腫の愛犬を放置しておくと耳が変形してしまいます。
できるだけ早く動物病院を受診させてあげましょう。

犬の耳血腫の予防

犬の耳血腫は予防することも可能です。
予防法についても見ていくことにしましょう。

清潔な環境を心がける

耳血腫の原因である耳疥癬やアレルギーは、犬の住む環境を衛生的に清潔に保ってあげるということが大切です。
ミミヒゼンダニやアレルギーの原因物質を事前に取り除くことで、耳血腫の原因になる疾患を予防できます。

怪我をしないようにする

耳血腫は耳に怪我をして傷を作り細菌感染した結果、皮膚病などにかかり強い痒みが出ることで耳を強く掻いたりすることで起こります。また、耳をどこかにぶつけたり、何かとぶつかったりして強く耳を打つことで耳の内部で内出血が起こって耳血腫になります。
小さな怪我や不注意による強打が原因で起こることが多いので、それらの怪我をしないように飼い主は気を配ってあげる必要があります。
家の中では、愛犬が不注意で何かに当たってしまわないように通り道や寝床などの物の整理も必要です。

また、外を散歩する時は愛犬がとっさに飛び出して、自動車や自転車などにぶつかって怪我を負うことがよくあります。
他の犬とケンカして耳を噛まれて怪我をすることもありますので、散歩中も愛犬の周りに注意してリードをつけ、勝手に飛び出していかないように注意しましょう。

まとめ

獣医師・宿南章

犬の耳血腫はある日突然愛犬の耳が腫れあがって飼い主がびっくりして気がつくということが多い病気です。

耳血腫は耳介に何らかの刺激があり、それが原因で耳の内部の血管が損傷して出血したり、体液が耳介の皮膚と軟骨の間に溜まることで耳が腫れ上がります。

血管を損傷する原因には、何かにぶつかって打撲したことが原因ということもありますが、外耳炎や耳疥癬を患っていることにより耳に違和感があったり、強い痒みがあることで愛犬自身が自分の耳を強く掻くということが原因になることも多いです。

耳血腫は一度かかると自然治癒することはありませんので、できるだけ早く動物病院を受診してしっかりと治療を始めましょう。

耳血腫は直接死因に繋がるような重病ではありませんが、愛犬にとっては非常に心身共にストレスを抱えてしまいますので、飼い主はできるだけ耳血腫にならないように日頃から愛犬のお世話をマメに行うことが大切です。

愛犬の周りの環境を衛生的に保ったり、耳に傷はないかというチェックしてあげてください。

耳血腫などの耳の病気は耳以外の基礎疾患が原因で起こる危険性もありますので、日頃からしっかりと体調の管理をしてあげましょう。

犬の耳血腫

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獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

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記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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