獣医師・宿南章開発!ドッグフード・療法食の販売はこちら 販売サイトへ

子犬の避妊・去勢後は太りやすい!?術後の食事で注意する点

  • URLをコピーしました!

去勢・避妊手術をした後のワンちゃんは太りやすくなると言います。
身体にメスを入れる大きな手術を乗り越えたのですから、健康にすくすくと育ってほしいですが、術後にはホルモンの影響によって様々な変化があらわれます。

その一つに太りやすくなるという変化があり、体重が増えると肥満になる可能性が高まります。
肥満は万病の元ですし生殖器以外の病気にかかる恐れもあり、去勢・避妊後の食事の管理には注意しなければなりません。

今回は不妊手術について、手術を子犬期に行う理由や術後の変化と合わせて、肥満を予防するための食事の注意点をお伝えします。

目次

犬の去勢・避妊とは?

去勢・避妊の手術では、メスのワンちゃんは卵巣か子宮のどちらかか、もしくはその両方を摘出します。
オスの場合は睾丸のみを摘出します。
ワンちゃんの性別によってその言い方が変わりますが、生殖機能を外科的に取り除く不妊手術を行うことを指します。

去勢・避妊はなぜ必要なの?

病気でもないのに去勢・避妊の手術をすることについては賛否両論ありますが、もし実際に赤ちゃんが生まれてしまった時の引き取り手の問題や、引き取り手が見つからなかった場合の飼い主さんの飼育義務など、事前に想定しておかなければいけない課題もあります。

また、性別を問わずホルモンの影響で起こる問題行動を防ぎたいと考える飼い主さんもいらっしゃいます。
去勢・避妊をすると性ホルモンが分泌されないので発情期自体なくなります。
そうすると、メスは精神的に安定すると言われますし、オスは無駄吠えや他のオスとケンカしようとすることがなくなりトラブルを防ぐことが出来るのです。

他にも、乳房や子宮の腫瘍、精巣や前立腺の病気を不妊手術によって未然に防ぐことが出来るため、ワンちゃんのこれからの健康やリスクを考え、去勢・避妊の手術を選択する飼い主さんも少なくありません。

去勢・避妊手術はなぜ子犬期に行うのか?

オス・メス共に、不妊手術はかなり大掛かりな外科手術をしなくてはいけません。

オスは睾丸を取り出すため陰嚢を切り開きますし、メスも卵巣と子宮を取り除きますので、不妊手術は全身麻酔をかけて開腹する非常に負担のかかる手術です。

個体差もありますが、老齢になってからでは命の危険を伴う恐れもあるため、手術を行うのであれば体力のある若い時期でなければリスクが高まります。

そもそも、トラブルを未然に防ぐために行う手術なので、初回の発情期が来る前に完了しておくことが望ましく、ベストは生後数ヶ月の間なのです。

メスの場合、発情期が来る前に避妊手術を行なった方が乳腺腫瘍の発生率が低いというデータもあり、病気のリスクをより高い確率で避けるためにも、子犬期に手術をするのが一般的です。

オスは生殖機能が完成してしまう前に手術をする必要がありますので、生後6ヶ月頃を目安に去勢することが多いです。

発情期は犬種によって若干のズレがありますが、いずれの場合も最初の発情期が来る前に不妊手術を行うため、手術自体は子犬の頃に済ませてしまうのが通常です。

去勢・避妊後の変化について

性ホルモンが分泌されないことで、ワンちゃんには様々な変化があらわれます。
それが主に以下の3つの事です。

  1. 麻酔の後遺症
  2. 性格の変化
  3. 太りやすくなる

1、麻酔の後遺症

人間の場合も同じですが、全身麻酔には大きなリスクを伴います。
麻酔によって命を落とすケースもあるので軽視することは出来ません。

麻酔への耐久性は実際のところ手術が終わってからでなければ分からないので、何かしらの後遺症が残る可能性は考えられます。特に肝臓へ負担がかかるため、内臓に影響が出る確率があるでしょう。

2、性格が変わる

飼い主さんの体感ベースによるものですが、オスは攻撃性がなくなるため大人しく甘えん坊になったり、メスは逆に少しオスらしい感じになり性格がきつくなることがあります。

性ホルモンの分泌がなくなるため、その影響からとは思いますが、術後に愛犬の好みや性格が変わったような感覚があれば不妊手術によるものかもしれません。

3、太りやすくなる

いつくか原因がありますが、去勢・避妊手術後のワンちゃんは太りやすくなります。
「手術を頑張ったから」、「かわいそうだから」、「食事を欲しがるから」と飼い主さんがドッグフードやおやつをあげすぎてしまうと、術後の愛犬はあっという間に体重がオーバーしてしまうでしょう。

性ホルモンの分泌がなくなることで、これまで消費していたエネルギーが消費されずに余ってしまうため、以前と同じ量のドッグフードでも太ってしまう可能性があるのです。
病気にならないために不妊手術をしたのに、肥満が原因で病気になってしまっては意味がありません。
飼い主さんは術後の食事のケアや対策を行いましょう。

どうして太りやすくなるのか?太る原因は?

不妊手術後のワンちゃんは太りやすい身体へと変化しています。
これは手術による影響ですが、いくつか原因があるため、背景を知って愛犬の食事のケアを行なっていけるようにしておきましょう。
その太る原因が以下の事です。

  1. エネルギーが消費されない
  2. 活動量自体が減る
  3. ホルモンバランスが変わるため
  4. 飼い主さんが甘やかしてしまう

1、エネルギーが消費されない

生殖機能の維持には、身体全体の約30%のエネルギーを消費しています。

どんなに運動するのが嫌いな子でも、食べた分のエネルギーは基礎代謝としてきちんと消費されているため、適正な食事量で生活していれば肥満になることはありません。

ですが、去勢・避妊手術を行うことで生殖機能自体がなくなってしまう(性ホルモンの分泌がなくなる)ので、これまで生殖機能維持のために使っていたエネルギーがそもそも身体の中に残ってしまっている状態となります。

身体を動かして消費する以外にエネルギーを消費する方法がないため、術後のワンちゃんの身体は太りやすくなってしまうのです。また、オスは本来筋肉になるためのエネルギーが脂肪になるため、メスよりも太りやすくなる傾向にあります。

2、活動量自体が減る

特にオスにその傾向があらわれやすいですが、性ホルモンの分泌がなくなる影響で性格が大人しくなるワンちゃんがいます。

必ずしも活動量が減るわけではありませんが、穏やかで温厚な性格に変化すると、走ったり暴れたり激しく遊ぶことがなくなったり、運動自体を嫌うようになる子も中にはいます。

これまで身体を動かして消費していたエネルギーが消費されずに蓄積されることで、より代謝が悪くなり太りやすくなる原因に繋がってしまうケースがあります。

3、ホルモンバランスが変わるため

生殖機能を取り除くことで身体の中のホルモンバランスは変化します。

食欲はレプチンという食欲を抑えるホルモンと、グレリンという食欲を増進させるホルモンとが拮抗し合うことでバランスを取り合い制御されていますが、性ホルモンの分泌がなくなることで体内でのバランスが崩れるだけなく、身体に脂肪が増えることでレプチンの分泌が増え、満腹中枢への刺激が鈍くなって空腹を感じやすくなるのです。

エネルギーの消費量が減って少しずつ体重が増えていくことで、ますますレプチンを感じにくくなっていくだけでなく、性欲がなくなるためより食欲に意識が向かってしまいます。

4、飼い主さんが甘やかしてしまう

術後のワンちゃんはやはり弱々しく、ぐったりとしていることが多くなります。
身体が回復するまでの間、元気がないのは仕方がないでしょう。

しかし、元気がない愛犬に早く回復してもらいたいと、以前は食べさせなかったおやつを与えたり、欲しがる分だけドッグフードを追加したり、人間の食事を「少しなら」と与えてしまったり、飼い主さんが愛犬を心配する気持ちからついつい甘やかしてしまい、ワンちゃんが太ってしまうケースは多いです。

確かに、大変な手術を頑張りましたし、痛々しい傷跡を見てかわいそうにも感じと思います。
ですが、一度甘やかしてしまうことでワンちゃんも「ねだればもらえる」と勘違いしますし、飼い主さん自身も一度甘やかしてしまったことでしつける気持ちが薄れてしまいます。

体力が回復した後もねだられるまま、おやつや食事の量を調整出来ず結果的に肥満になってしまうと、生殖器以外の病気にかかるリスクが高くなります。

肥満になるとどんな病気になるのか?

肥満で発症する可能性のある病気は数多くあります。
その中でも多いのが以下の病気です。

  • 心臓病(心疾患)
  • 高脂血症や糖尿病
  • 関節痛

心臓病(心疾患)

肥満になると血流が悪くなるため、心臓も多く血液を送り出さなければいけなくなります。
そのため心臓が大きくなる心肥大や、心肺機能の疲労や圧迫によって心臓病を患ったり、何かしらの心疾患を併発する可能性は高くなります。

高脂血症や糖尿病

肥満になることでコレステロール値が上がり、高脂血症になったり、糖尿病を患うこともあります。
また糖尿病になると食欲が減退せず、さらに食べて肥満を悪化させてしまうことも。

重症の糖尿病にかかるとインシュリンの注射で症状を抑える必要があり、飼い主さんのケアが大変になるだけでなく、糖尿病のワンちゃんは長生きできないというデータがあります。

インシュリンを使い続けても発症してから2~3年ほどで亡くなるケースが多く、肥満による発症は予防したい病気の一つです。

関節痛

肥満になることで自分の体重を支えられなくなります。
まず関節に痛みが出てきますので、運動したがらなくなります。
運動量が減ると、エネルギー消費量も減るため、ますます肥満になるという悪循環です。
肥満を防ぐためにも運動量が減っている状態の時期には、餌の量を調節してあげることが大切
です。

去勢・避妊後の食事のケアについて

身体の状態だけでなく太りやすい環境にあることを理解して、愛犬の食事ケアをしましょう。
方法はいくつかあるので愛犬の体調に合わせて、上手に組み合わせてあげるのが良いですね。
その方法は下記の通りです。

  • 食事の量を減らす
  • 食事を小分けにして回数を増やす
  • おやつをやめる
  • 身体を動かす

1、食事の量を減らす

飼い主さんがコントロールしやすいのは普段与えているドッグフードの量です。
摂取カロリーを減らすことが一番簡単で手っ取り早い方法ですが、実は単純に量を減らしたら良いというわけではありません。
しかし注意しないといけないのは、餌の量を減らすことで必要な栄養素が取れなくなってしまう可能性です。

不妊手術前に与えていたドッグフードで調整することも出来ますが、カロリーを抑えて栄養価が高い種類のものに変えるなど一度見直してみることをおすすめします。

また、必要な摂取カロリーの割り出しは計算が複雑なのと、個体差と術後の経過によっても異なるので、どのくらい食べさせても良いのかは獣医に相談するのがベストです。

犬種によって違いますが、体重自体は1歳時の標準体重をキープするくらいがちょうど良く、愛犬が太ってきたのかどうかを判断する目安にすると良いでしょう。

2、食事を小分けにして回数を増やす

ドッグフードの量を減らしたにも関わらず一度の食事で与えてしまうと、空腹で胃液を吐いてしまう可能性があります。
毎日の食事の回数は徐々に決まってきた頃かと思いますが、空腹の時間を出来るだけ短くするため、1日に与える食事を小分けにして回数を増やす方法もあります。

3、おやつをやめる

おやつの習慣がある子は、ドッグフードだけにしましょう。

間食をなくすだけでも摂取カロリーは抑えることが出来ます。おやつのカロリー分を換算せず1日の適正量を超えていた場合には、食事内容の見直しにも繋がります。絶対に与えてはいけないというわけではありませんので、肥満にならないよう気をつけながら適切にあげてください。

ドッグフードはバランス良く栄養が摂れて脂質も高いので、食品をドッグフードの代わりとして混ぜ込んでみるのも方法です。

4、身体を動かす

体力が回復するまではワンちゃんも元気がなく、ぐったりとしているかもしれませんが、体力が戻ってきた頃からはしっかり散歩させるなどして、適度な運動をさせましょう。

術後すぐの激しい運動は控えた方が良いのと、あまり興奮させてはいけませんが、身体に負担の少ない程度で走り回ったり、ボール投げなどが楽しめる環境に連れ出してあげましょう。

肥満にならないためのケアなので、くれぐれも無理はさせないでください。

術後はどんなドッグフードを選ぶべきか?

体力の回復を早めるためにはタンパク質を多く含むものが良いでしょう。
あとは通常のドッグフードを選んだ基準と同じように、無添加でビタミン含有量が豊富なフードを選びます。

こうした術後専用のフードも販売されているので、どれが良いか分からなかったり、迷ってしまった場合には専用のものを選んでみてもいいかもしれません。

ワンちゃんは手術前に絶食しているため、術後はお腹の調子が整っておらず、食べても下痢や便秘になりやすいです。

専用のフードは消化吸収が良く作られているのでそのまま与えても問題ありませんが、食欲があまりにないようであれば、においを出して食いつきを良くするためにもお湯でふやかした離乳食で与えてみましょう。

まとめ

獣医師・宿南章

去勢・避妊後のワンちゃんの身体は太りやすく変化しています。
飼い主さんの食事管理で適性体重を維持出来るように調整してあげることが大切です。

子犬期の大きな手術で心配かと思いますが、愛犬のこれからの健康のことを考えて手術すると決められたはずです。

大変な手術を頑張った大切な愛犬が、肥満で病気になったりしないよう、食事のケアでフォローしていきましょう。

子犬の避妊去勢後の食事

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

ショッピングサイトはこちら

獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

興味の多いテーマ

記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
記事の目次
ページTOP
目次
閉じる