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犬の腎炎とは?原因・症状から食事、治療法、余命について

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獣医師・宿南章

犬の腎炎は、腎臓が何らかの原因で炎症を起こし、腎機能が下がる病気です。腎臓の働きは主に尿を作り出すことと認識されていますが、腎臓の機能が下がると生きていくために出た血液中の老廃物をしっかり取り除けなくなります。

そして綺麗になりきれなかった血液が体中を巡るため、体の色々な臓器や器官に影響を及ぼし、最悪の場合は命の危険もあるので絶対に放置できない病気です。

愛犬が腎炎になった時に飼い主はすばやく体調の異変に気づき、動物病院に連れて行ってあげることが大切です。

犬の腎炎とはどのような病気なのでしょうか?
症状や原因、腎炎になった場合の治療法と食事療法、そして余命などについてご説明していきます。

目次

腎臓の働きとは?

腎臓の働きは尿を作り出すというイメージがありますが、その他にもいろいろな働きがあります。
体の中の血管の中には、生命を維持するために溜まった老廃物や余分な水分が含まれており、これらの老廃物と余分な水分を尿として排出します。

また、血圧をコントロールしたり、血液の酸性やアルカリ性の値であるpHを一定に保つためのホルモンの分泌も調整しています。

体内の水分量や電解質の調整を行ったり、血液を作る指令を出すのも腎臓の役割です。

犬の腎臓も人間と同じく左右対称に1つずつ、合計2つの腎臓があります。
1つが何らかの原因で働かなくなってももう1つの腎臓がその働きを補いますが、重要な臓器である腎臓は一度損傷を受けると再生することができませんし、腎機能がある一定以下の状態になると生命そのものを維持できないことになります。

犬の腎炎とは

腎炎とは腎臓の機能が低下してくることです。
腎炎になる原因は様々ですが、腎臓のネフロンと言う器官が損傷されて腎機能が下がってきます。

犬にはネフロンが80万個あるといわれていて、ネフロンには糸球体という血管の集まりがあり、そこで血液の中の老廃物をろ過します。

ろ過された綺麗な血液がまた体をめぐり、濾しとられた老廃物を尿と一緒に体外に排出します。

腎炎になるとネフロンが損傷を受けるため、徐々にろ過機能が下がっていきますが、ネフロンは損傷を受けていても予備能力があるために、正常なネフロンがその働きをカバーするために損傷を受けていてもすぐには病状としてはっきり現れません。

軽度の腎炎では、痛みも苦痛もないのでなかなか腎炎になっていることに気がつきませんが、腎機能がある程度下がってきて体調が悪くなり気がついた時には既に病状が大きく進行していることが多いのです。

腎炎にかかったことに気がついて動物病院に連れて行っても損傷を受けた腎臓は治療では元に戻りません。
更に病状が進むと腎臓機能がどんどん下がってきて腎不全という状態になり、尿毒症になると手の施しようがなくなります。

腎炎には慢性と急性がある

腎炎は急に状態が悪くなる急性腎炎と、数ヶ月から数年をかけてゆっくり腎機能が下がってくる慢性腎炎があります。

種類特徴
急性腎炎 急性腎炎の場合、数時間から1週間以内に腎機能が急激に下がるのが特徴です。
急激に腎機能が下がるために症状がはっきり出ますので、飼い主も愛犬の体調が悪いことにすぐに気がつく場合が多くなります。

急性腎炎の場合は、腎機能が一時的に下がっているので、治療により機能を元の状態に戻すことができます。
慢性腎炎 慢性腎炎の場合は、徐々に腎機能が下がってくるのである程度病状が進行した状態にならないと飼い主は気がつきません。

気がついたころには腎機能が既にある程度低下していて、腎臓のネフロンに損傷を受けている場合は治療しても元の状態には回復しません。

犬の腎炎はどんな症状がある?

腎炎には様々な症状がありますが、急性腎炎と慢性腎炎では症状が異なる場合もあります。
愛犬に腎炎の症状が疑われる場合は、一刻も早く動物病院に連れて行って検査や治療を受けさせてあげることが大切です。

急性腎炎の場合

  • 体がむくむ
  • 尿の量が減る
  • 尿の色が濃くなる
  • 血尿がでる
  • 食欲が落ちる
  • 元気がなくなる
  • 高窒素血症
  • 嘔吐
  • 口からアンモニア臭がする
  • 口から出血する
  • 痙攣

慢性腎炎の場合

  • 尿の色が薄くなる
  • 尿の量が増える(病状が進むと尿の量が減る)
  • 何となく元気がない
  • 食欲が落ちる
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 貧血

犬の腎炎の原因は?

急性腎炎の場合は、原因が比較的はっきりしていることが多いのが特徴です。
膀胱に細菌が入ってかかる膀胱炎や、マダニに噛まれることによって感染するライム病などがあります。

細菌感染から急性腎炎になる場合は、早急に対処療法をすることで一時的に下がった腎機能が再生するので比較的症状が軽い場合が多いです。

しかし、原因である症状に気がつかず、早急な治療が出来なかった場合などは症状が重くなり合併症を起こす可能性もありますので、これらの症状が疑われる時は愛犬をできるだけ早く動物病院に連れて行ってあげましょう。

犬の場合、寄生虫が寄生して起こるフィラリアから腎炎になる場合もあります。

また、アデノウィルスなどのウィルスに感染すると免疫反応で腎臓のネフロンの中の糸球体を損傷してしまうことで腎炎になります。

リンパ球性白血病やリンパ腫などは血液やリンパ液にガン細胞が存在することで腎臓にダメージを与えてしまい、腎炎を併発してしまうこともあります。

老犬は腎炎になりやすい

老犬は免疫力が下がってくるので細菌やウィルスに感染しやすくなります。

また、長年に渡ってゆっくり腎機能が下がってくる場合があるので若い犬に比べてどうしても腎炎のリスクが高くなると言えます。

愛犬が老犬の場合は特に、尿の量や色、匂いなどに日頃から気をつけることが大切です。

犬の腎炎の治療法

腎臓に損傷を受けて腎炎になってしまった場合、残念ながら腎臓の損傷そのものを再生する薬というものは現在のところありません。
そのため、腎炎の治療は現在の腎機能を今以上に下げないようにする治療を行います。

急性腎炎で一時的に腎機能が下がっている場合は、原因となる疾患の治療を行うことで腎機能は元の状態に戻りますのでこれを第一に優先して行います。
そして、腎機能が急激に下がるので輸血をして血液をきれいにします。

確かな成分の血液を輸血することで脱水症状になっている場合は水分を補給したり、血液中の電解質の調整を行うことができます。

また、血液が高窒素血症になっている場合は、人工透析の機械に血液を通して老廃物を取り除く血液透析を行います。

腎機能の低下によりホルモン分泌ができなくなると血圧の調整ができないので、ホルモン剤の投与を行なったり、人工透析や輸血をせずに血液中の窒素化合物を吸着して排出する薬を投与する場合もあります。

慢性腎炎の場合は、塩分やカリウム、たんぱく質などを制限した食事療法を重視した治療を行いますが、病状のステージが高い場合は、急性腎炎と同じように血液透析をしたり、輸血をしたりします。

腎炎の食事療法

腎炎になると腎機能が下がります。
このため、体に老廃物が溜まってしまうことが一番問題になってきます。
体に老廃物を溜めないためには、老廃物となるものを摂取しないことが重要です。

腎炎の犬にとって食事療法は絶対不可欠であり、その摂取制限などは個々の犬の健康状態によります。

一般的な腎炎の食事療法はありますが、犬によって症状や数値が異なりますので動物病院での血液検査、尿検査、体重などのデータをもとに獣医のアドバイスを受けながらしっかり食事療法を行うことが大切です。

特に以下の3つの事が重要になってきます。

  1. たんぱく質の制限
  2. 脂質と糖質でカロリーを補う
  3. 塩分の制限

それぞれについて、詳しく見ていきましょう!

たんぱく質の制限

動物が生きていくためには、脂質、糖質、たんぱく質はなくてはならない大切な栄養素です。

脂質と糖質は体を動かすエネルギーとして使われた後は、汗や二酸化炭素になって体の外に出すことができますが、たんぱく質は血液や筋肉などを体の組織を作る栄養素として使われた後は、血液中にもその老廃物が残留します。

腎臓が正常な働きをしているとたんぱく質が分解された後の老廃物をしっかりろ過できるのですが、腎機能が下がっている腎炎の犬は老廃物をしっかりろ過することができません。

このため、腎炎の愛犬にはたんぱく質を与えると腎臓に負荷をかけることになりますが、たんぱく質を全く摂取しない食事制限をすることもできません。

たんぱく質は体を作ったり、体を動かすためのカロリー源になっていますので、たんぱく質を摂取しない食事をあげているとカロリー不足になってしまいます。
カロリー不足になると、体は自分の体の筋肉を消耗して生命活動をします。

食事としてたんぱく質を摂らないという食事制限をしても、結局は自分の体についているたんぱく質を消耗しますので、腎臓にとってはたんぱく質を摂取していることと同じになり腎臓への負担は減りません。

腎臓への負担は減らないという状態でも、自分の体をエネルギー源として消耗しているので腎炎の犬は徐々に痩せていくことになります。

腎炎の犬が生きていくために必要なたんぱく質の上限は体重の×3.5(g)ほどです。
獣医と相談しながら適切な量のたんぱく質を摂り、足りない分のカロリーは腎臓に負担がかからないように脂質や糖質などで補うようにしましょう。

また、たんぱく質の食材ならばどれでも腎臓への負担は同じということはありません。
たまごの白身や肉などの動物性のたんぱく質は少量だけでもしっかりと栄養を補える上に、腎臓でろ過するものも少ないので腎炎の愛犬には適した食材です。

脂質と糖質でカロリーを補う

たんぱく質でカロリー摂取をすると老廃物をろ過できない腎炎の犬には負担がかかります。

しかし、生きていくためにカロリーは必要になるのでたんぱく質で取れない分のカロリーは脂質や糖質でカバーします。
糖質は炭水化物で摂取すると良いでしょう。

腎臓病の犬にとって良質の脂質は、オメガ3、オメガ9というような必須不飽和脂肪酸が多く含まれているものです。

しかし、脂質を摂りすぎると動脈硬化や中性脂肪、肝臓への負担を考えるとあまりよくありませんので糖質や脂質でカロリーを補う場合も、獣医のアドバイスをよく聞いて食事をあげるようにしましょう。

塩分制限

体には塩分は必要です。
塩分は体の中で体液の量を調整する役割を持っています。

腎機能が正常であれば、体にとって最適な塩分濃度をろ過しながら調整できますが、腎炎の犬は腎機能が下がっているために塩分をしっかりろ過できないために、血液中に塩分が残ります。

塩分は水と結びつく性質がありますが、血液中に過剰に塩分が残っていると体の中に水分が溜まりむくみや高血圧の原因になります。

塩分量は愛犬の腎機能の状態により異なりますので、動物病院で獣医と相談して塩分制限を行いましょう。
一般のドッグフードの塩分量は腎炎を患っている愛犬には多いので、専門に開発されたドッグフードを利用すると良いでしょう。

また、犬は人間よりもかなり薄味で充分です。
食事を手作りしている場合は、人間の味覚の感覚で食事を与えることのないように注意しましょう。

腎炎の愛犬の余命は?

急性腎炎の場合は、急激に体調が悪くなったり、腎機能が下がるために比較的早めに治療を受けさせることが出来ます。

このため、早急な治療を行った場合は腎炎が完治することも多いのですが、治療が遅れてしまうと病状の進行が早いので早い場合は数時間~1週間ほどで腎炎から腎不全になり尿毒症になり死亡することもあります。

一方、慢性腎炎の場合は、数年をかけてゆっくりと病状が進行していきます。

突然、生命の危機になるということはありませんが、腎機能が30パーセントを切ってくると腎不全と言う状態になりますので余命ということを考えておく必要があります。

食欲や尿の量、回数などの状態によりますが、尿が作れなくなる尿毒症という状態になると余命は1週間から1ヶ月以内と覚悟を決めておいた方が良いでしょう。

まとめ

獣医師・宿南章

腎臓は犬の生命活動に大きく影響する大切な臓器ですので気をつける必要があります。

腎臓が細菌やウィルスの影響を受けて腎機能がどんどん下がってくることを腎炎といいますが、腎炎でも比較的早期に治療を行うことで回復の見込みがある急性腎炎と、数年に渡り症状が続く慢性腎炎があります。

腎臓の損傷を受けた組織を元に戻す薬はありませんので腎炎の治療は人工透析や輸血など血液中の老廃物を除去する方法と腎臓に負担をかけない食事療法が主体になってきます。

できるだけ早く動物病院で診断を受け、治療にあたることや獣医の指導を受けてしっかりと愛犬の食事療法を行うことが大切です。

犬の腎炎とは?

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獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

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記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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