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犬の乳腺腫瘍(悪性)の症状と治療法や費用、手術後の食事について

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悪性腫瘍、いわゆるガンと呼ばれているものは犬にも存在します。
その一つである乳腺腫瘍は、特にペットに発生の多いガンです。

悪性のもの、良性のもの双方ありますが、発症率は50%ずつと安心できない数字です。
一般的に悪性のものを乳ガンと呼びます。
乳腺のそばには、リンパや血液が通っていることもあり、転移することも多く、早期発見できないと命取りになることも。

愛犬をガンの脅威から守るためにも、ここでは犬の乳腺腫瘍の症状と予防、治療法や費用、寿命、食事について見ていきます。

乳腺腫瘍の症状や治療法を良く知って、ぜひ予防や治療に役立ててみてください。

目次

乳腺腫瘍とは?

乳腺にしこりができたものを乳腺腫瘍と呼んでいます。
犬は人と違い、たくさん子供を産む分、乳腺の数も多く発症する率も高いです。

一つの乳腺にだけできると言う訳ではなく、複数の乳腺に同時にできる場合もあり、また腫瘍の数も個人差があります。

悪性、良性双方の腫瘍が見られますが、その確率はそれぞれ50%。オスよりもメスの発症が多く、メスのかかるすべての腫瘍の52%が乳腺腫瘍となっています。

ガンで最も怖い転移に関しても、悪性の腫瘍の50%の確率となっているため決して軽視できません。
乳腺腫瘍を発症した犬の25%が死を覚悟しなくてはならない病気です。

乳腺腫瘍の症状とは

乳腺に腫瘍ができる病気、乳腺腫瘍ですが、しこりの大きさは数ミリから数センチと様々なタイプがあります。
しこり自体を発見し、動物病院を受診する飼い主さんも多いですが、乳腺腫瘍が見られる場合、妊娠もしていないのに乳汁がでることがあります。

その乳汁には膿や血が混じっているため、それを心配した飼い主さんが行動を起こしたことがきっかけで発見につながることも少なくありません。

また、血液検査などを行った時、病院を訪れた際に発見されることも多く、皮膚病と間違えて受診し発見に至ることもあります。

乳腺腫瘍が進行すると、乳腺付近が腫れて赤くなったり、痛みを訴えることもありますので、乳腺炎や皮膚病などと見誤ることがあります。

腫瘍の進行は、やはり症状と同様異なり、3か月ほどで大きく成長するものもあれば、ゆっくりとしたスピードで年月をかけて進行するものもあります。

乳腺腫瘍の発生傾向

乳腺腫瘍は老犬に多く見られる腫瘍ですが、若犬にも見られることがあります。
5歳以上の年齢に達すると発症する可能性が高くなり、2000から3000匹に1匹の割合で発症が認められます。

また、オス犬よりも乳腺の発達したメス犬が多く発症しています。
ただしオス犬だから心配がないと言う訳でもありません。
稀なケースではありますがオス犬の発症例もありますので、メス犬同様注意しておくことが大切です。

また、ネコは乳腺腫瘍を発症した場合80%から85%が悪性と言われておりますが、犬の場合は悪性だけでなく良性の場合もありますので、まずは早期に見つけ病院を受診し、治療を行っていくことが重要です。

乳腺腫瘍の75%は患部を摘出することで完治できますので、落胆することなく早めの治療を心掛けてください。

乳腺腫瘍の原因とは?

犬の乳腺腫瘍の原因は人間同様、様々な原因が考えられます。
食事や生活環境、習慣、体質などが原因になると言われていますが、はっきりとした詳しい原因は今現在も不明です。

ただし、避妊の有無、手術の時期などとの関係性が強いことから、一番有力な説は女性ホルモンではないかと示唆されています。エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンが何らかの引き金となっているようです。

また、悪性の乳腺腫瘍に関しては、遺伝子の異常もその原因として考えられています。

乳腺腫瘍のできやすい犬種とは?

乳腺腫瘍発症のピークは9.3歳という統計があります。
老犬になればなるほど発症する確率が上がってきますが、若い犬にも見られるのが乳腺ガンです。
年齢に限らず発症することで知られる乳腺腫瘍ですが、犬種によって発症のリスクに違いはありません。

ガン全般でもゴールデン・レトリバーなどは発症しやすい犬種と言われますが、当然他の犬種でもガンになっており、一概にこの犬種が乳腺腫瘍のリスクを上げているとは言えません。
犬種に限らず、メスの飼い主や老犬などを飼っている場合には気を付けてあげることが大切と言えるかもしれません。

乳腺腫瘍の治療

乳腺腫瘍かなと思うしこりを発見した場合、やはり組織検査が必要になります。
その乳腺腫瘍が本当に腫瘍であるかをはじめ、良性か悪性化をはっきりさせるためです。

乳腺腫瘍と診断された場合でも、その大きさ、広がり、転移具合に応じて進行度合いを4段階に分類します。
そのため治療法はそれぞれの進行状況によって変わってきますがその治療法を解説していきます。
おおよそは人間が行うガン治療と違いありません。主に以下のような治療を行います。

  • 手術
  • 化学療法
  • 放射線治療
  • 免疫療法

それでは各治療について詳しく説明していきます。

手術

腫瘍が摘出できるようであれば、その腫瘍の摘出が行われることになります。
局部的に腫瘍がある場合や腫瘍が大きい場合には、即効性があり腫瘍そのものを排除できるため、病状を改善させるためには有効な手段です。

しかし、手術と言うだけあってそのリスクは十分にあります。
犬とは言え、神経を傷つけてしまう恐れもあり、運動機能を低下させてしまうことも考えられます。

また、組織を大きく摘出してしまうため、見た目にも身体的にもリスクを負う危険性があります。
麻酔を施して手術が行われるため、そうした危険性も全くないとは言えません。
とはいえ、費用の面から考えても、乳腺腫瘍の場合には手術が最もポピュラーな治療法です。

化学療法

人間同様、抗がん剤を投与するなどの治療が行われます。
ガン細胞を全滅させることは稀ではありますが、転移を防いだり、進行を遅らせる効果が期待できます。
ただし副作用として元気が低迷したり、骨髄の生成が抑制されたり脱毛などが見られます。

放射線治療

放射線が持つ力を利用し、ガンを抑制していく治療法です。
細胞に直接作用するため、化学療法と比べ、治療効果が望めます。
手術が極めて困難な脳や心臓と言った場所のガンに用いられることも多いですが、治療費が高額と言うデメリットがあります。

免疫療法

犬の持っている免疫をコントロールし、ガンを攻撃する治療法です。
手術などでは賄いきれないガン細胞を攻撃するのに向いています。
マクロファージ活性化など色々な免疫療法があります。

乳腺摘出手術とは?

乳腺を摘出し、ガン組織をできるだけ完全な状態で取り除いていきますが、その方法は三つほどあります。
それが以下の3つです。

  • 単純乳腺摘
  • 部分乳腺摘出手術
  • 両側性乳腺摘出手術

症状によって医師が手術の選択をするケースが多くなっていますが、飼い主も知っておくべきことの一つですので、手術の種類についても見ていきましょう。

単純乳腺摘出手術

文字通り腫瘍の認められる乳腺だけを取り除いていく手術です。

入院も数日と比較的簡単に行える手術であるため、費用の負担も少ないというメリットがありますが、後日転移が発見される可能性が最も高く、場合によっては再度手術が必要なこともあります。

病院によって異なりますが平均5万円ほどで手術が可能です。

部分乳腺摘出手術

単純乳腺摘出手術と異なり、ガンが転移することを考えてガンが認められる部位以外の乳腺も同時に摘出する手術になります。
隣合わさる乳腺をまとめて2、3個摘出してしまうため、再発のリスクが軽減できるというメリットがありますが、その反面費用も少々高額となり、手術のための時間や入院日数も増えます。
おおよそ3日から4日程度の入院が必要です。

医師の意見と費用の負担などを考慮に入れ、愛犬の手術法を選択してみると良いでしょう。
病院によっては費用にも幅がありますが10万円から15万円程度が必要となります。

両側性乳腺摘出手術

乳腺を幾つと言うのではなく、乳腺すべてを取り除く手術です。
複数の腫瘍が広い範囲に広がっている場合に用いる方法で、転移の可能性も減る有効な手術です。

手術の時間がどうしても他の手術よりかかってくるため、費用は高額な請求となりますが、その後の治療がスムーズにいくというメリットがあります。
身体的リスクも高いため、入院は1週間程度必要となります。

その子の症状や体力によって左右分けて手術を行うことも多くなっています。
病院によっても異なりますが、トータルで50万円ほどの費用が必要となります。

乳腺腫瘍の寿命

犬に乳腺腫瘍が見つかり末期と診断された場合、治療を続けて少しでも延命させてあげるか、それとも緩和治療を行って痛みを少しでも取り除いてあげるか悩むことと思いますが、長くは生きられないと考えてあげる必要があります。

治療法を続けていくかどうかでも寿命は長くなりますし、年齢が若い犬の場合、乳腺腫瘍の進行も早いため、寿命が短くなるのが一般的です。

半年、3か月などと言い渡されるのが一般的ですので、残り少ない愛犬との生活をどう過ごしていくか家族で話し合い、その後の治療法を決めていくことが大切です。

乳腺腫瘍が見つかった後の食事は?

乳腺腫瘍をはじめ、がんが見つかった場合、できるだけ体力を温存し、ガンに打ち勝つためにも食事内容の見直しが必要となります。炭水化物中心の食事をやめ、たんぱく質や脂質の多い食事がベストです。

なぜなら炭水化物は糖分が多く含まれ、ガンの栄養源となってしまい、犬の栄養として残りにくくなるからです。
その反面たんぱく質や脂質の多い食事であれば、ガンも栄養を吸収しにくく、犬の栄養源となりますので、大変良い食事と言えます。

また、食欲が低減してしまうため、食事のバリエーションを増やしてあげることも大切かもしれません。
手作りの食事を与えてみたりすることも飽きさせないで食事をしてもらうポイントです。

ガンの進行を抑える栄養分などが特別に含まれているドッグフードもありますので、医師と相談しながら、愛犬のためにも良い食事の内容に変えてあげると良いでしょう。

また、末期など食欲がない病状の場合には、食べられるものを与えてあげることも大切です。
栄養面を考えながら、まずは食べてくれるものをチョイスしてみるようにしましょう。

早期発見がカギ!

乳腺腫瘍を発症しないことが一番ですが、それでも腫瘍が見つかることは少なくありません。
愛犬の体にしこりを見つけたら、できるだけ早く動物病院に連れていき、乳腺腫瘍かどうか他のガンではないかなど検査を行ってもらうと良いでしょう。

検査結果で悪性腫瘍と診断された場合でも、乳腺を摘出することで死に至ることは避けられます。
早期発見、早期検査、早期治療を心掛けましょう。
常日頃から愛犬の体を触って、しこりがないかどうかチェックすることが大切です。

胸や胸、腹部の周り、わきの下などは特に乳腺ガンの発覚する、できやすいゾーンと言われていますので注意深く定期的に観察するようにしてください。

乳腺腫瘍を予防するためには?

乳腺腫瘍を防ぐためには、その原因でも少し触れましたが避妊が一番有効な手段と言えるでしょう。
ただし、手術を受ける時期によってその効果は違っています。

初めて発情する前に子宮を摘出した場合0.5%まで発症の確率を抑えることができるとの研究報告があり、2回目前までなら、8%、3回目前なら26%と発症確率は手術時期が遅くなればなるほど上がっていきますので、できるだけ早く避妊手術することが予防策と言えるでしょう。

避妊手術を行った場合、悪性の腫瘍となることも少ないようです。
愛犬に子供を望んでいないという場合にはできるだけ早く、処置を施してあげることが延命につながると考えておけると良いでしょう。

まとめ

獣医師・宿南章

犬の乳腺腫瘍は乳腺と呼ばれる場所にできる腫瘍です。
悪性と良性があり、その確率は五分五分となっていますが、決して治療が困難な病気ではありません。
人間のガン同様、早期発見が回復のカギとなっています。

日ごろから愛犬とのコミュニケーションを習慣とし、早期発見に努め、愛犬をガンから守ってあげたいものです。

また、愛犬に子供を望まないのであれば、避妊手術をすることも乳腺腫瘍を回避できる方法です。
初めて発情する前に避妊手術を行えば、その発症確率はゼロにほど近く、乳腺腫瘍の予防につながります。

発情回数が増えれば増えるほど乳腺腫瘍を発症するリスクが増えてしまいますので、できるだけ早い避妊手術を心掛け予防してあげましょう。
3回の発情を超えると75%とリスクも高くなります。

犬の乳腺腫瘍

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獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

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記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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