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犬のマラセチア皮膚炎の治療法は?原因と症状、食事について

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ジメジメした季節などに発症の多いマラセチア皮膚炎は若い犬から老犬にまで見られる病気です。
もともと犬が持っている常在菌が原因となっているため、どんな犬でも発症の危険性がある病気です。
人間に感染る危険性はまずないですが、悪化すると完治が難しくなる病気でもあります。
ここではマラセチアの症状や、なりやすい犬種、原因と予防法、治療法について解説していきます。

目次

マラセチアって何?

マラセチアとは真菌の一種で、誰にでも存在している常在菌です。
健康な犬や人間でも持っている菌の一つで、普段生活をしている分には何の害もありません。

しかし、一定の条件が揃うことで異常に繁殖する力が強まり、その繁殖が進むことで皮膚炎となって顔を見せる病気です。
マラセチアは皮脂の多い場所を好み常在しているため、皮脂腺の多い場所から症状が悪化することが多くなっています。


皮脂を栄養源として生きているマラセチアは、皮脂を分解した後に脂肪酸を作り出します。
通常であればこの作られる脂肪酸は少なく皮膚に炎症を起こすことはないのですが、増殖してしまうと、この分解後に作られる脂肪酸の量も増えることになります。

脂肪酸は肌にとっては刺激物であるため、量が増えてしまうとかゆみや炎症を引き起こしてしまうのです。
ひどい肌トラブルの要因となります。

犬マラセチアは人にうつる?

マラセチアには実は14種類の菌が確認されています。
人間にも存在している菌でもあるため、マラセチアはニキビに似た症状となって現れることがありますが、犬のマラセチアとはその種類が異なります。

犬や猫に常在するマラセラチアはMalassezia pachydermatis(マラセチア パチデルマティス)という種類で長径が3から5μmの小さなピーナツ状の真菌です。
猫の場合、炎症を起こすことは少なく、犬に多く異常繁殖する傾向があります。

人に犬のマラセチアがうつるかどうか心配になる飼い主さんもいらっしゃいますが、人と犬とでは常在できるマラセチアの種類が違うため、感染して同じ症状を発症してしまう危険性はほとんどありませんので、心配の必要はないでしょう。

犬のマラセチアの症状

マラセチアは健康な状態では問題のない常在菌のため、異常繁殖した場合に炎症を起こします。
その皮膚炎の症状は以下の通りです。

  • ワックスのようにべたべたした皮脂が目立つようになる
  • フケが出る
  • 脱毛が見られる
  • 発赤、発疹が見られる
  • かゆがる
  • 油が酸化したような刺激臭がする
  • ただれた臭い耳垢が出る
  • 黒い皮膚が見られる
  • ボコボコと皮膚表面が厚くなる

上記のような症状が見られるようになります。
愛犬にこのような症状が見られる場合には、マラセチアを疑ってみると良いでしょう。

マラセチアが症状となって現れやすい部位とは?

犬のマラセチアは、他の動物などに存在するマラセチアと違い、脂分の多い場所だけに限らず広範囲に症状が出ると言う特徴があります。
症状が良く見られる部位は次の通りです。

  • 口周り
  • 足の指の間
  • 爪の間
  • お腹
  • 肛門

などです。
耳にマラセチアが増殖し、外耳炎の症状として現れることも多くなっていますので注意しましょう。

マラセチアになりやすい犬種とは

マラセチアは若い犬から老犬にまで年齢に関係なく症状の現れる病気ですが、免疫力が深く関係していることから老犬の方がその発症も多くなっています。
また、体質として皮脂の多いと体質の犬種や、体のしわの多い犬種などに発症が多く見られることがあります。

マラセチアになりやすい犬種

アメリカン・コッカー / ウエストハイランドホワイトテリア / ダックスフンド / フレンチブルドッグ

愛犬が該当する場合にはマラセチアにかかっていないか小まめに観察してあげるなど、配慮してあげる必要があるでしょう。また、チワワやプードルなどもアトピー性皮膚炎の多く見られる犬種です。

アトピーを発症しやすい犬種は肌のバリア機能が弱い体質の子も多くマラセチア皮膚炎を発症してしまう可能性も高くなりますので、気を付けてあげてくださいね。

マラセチアを発症してしまう条件、原因とは

マラセチアは常在菌であるため、普段は何も悪さすることはありませんが、その繁殖力が高まる条件が存在します。
マラセチアが異常繁殖してしまう条件、原因には以下のような事があります。

  • 皮膚のバリア機能の低下
  • 皮脂が多い
  • 高温多湿の環境
  • 外耳炎
  • 甲状腺機能低下症、クッシング症候群などの病気

それではひとつずつ見てみましょう!

皮膚のバリア機能の低下

皮膚のバリア機能とは、皮膚を細菌などから守る役目をしていますが、この機能が低下してしまうと当然ながらマラセチアの影響を強く受けてしまう危険性が高まります。
皮膚のバリア機能を低下させてしまう要因には色々考えられますが、アトピー性皮膚炎もその一つです。

アトピー性皮膚炎を患っている場合、そのかゆみから犬は肌を掻きむしったり、傷つけてしまうこともありますが、そうなると皮膚機能はどうしても低下してしまいます。
健康であれば問題ないマラセチアも肌の炎症の原因となり、より感染力を強めてしまうのです。

他にも食物アレルギーや脂漏症などの皮膚病をはじめ、乱れた食生活やストレス、加齢なども皮膚バリア機能を低下させてしまう要因になりますので、普段の生活の中でも気を付けてあげることが大切です。

皮脂が多い

マラセチア皮膚炎になりやすい犬種でもお話ししましたが、皮脂の多い犬種はマラセチアの症状を発症しやすくなっています。皮脂が増えるとそれだけマラセチアの栄養源が増えることになりますので、マラセチアはより異常繁殖してしまいます。

寒冷地が原種となっている犬種は、厳しい寒さから身を守るため、毛の量なども多く、皮脂を多く分泌する体の作りとなっていますので、マラセチアの繁殖条件がより他の犬種より揃っているため、マラセチアを発症しやすくなります。

また、マラセチアは湿度が上がると繁殖力を高めますが、毛の量が多く、しわの数が多いと、この湿度条件も満たしているため、発症する確率がより高まります。
皮脂の分泌量が多く、毛量、しわの量が多い犬種は特にマラセチアに注意してあげましょう。

高温多湿の環境

マラセチアは皮膚の皮脂を栄養源としていますが、高温多湿の場所も好む傾向があります。
夏の暑く、ジメジメしている気候ではマラセチアは増殖のスピードも上がりますので、皮膚の炎症を起こしやすくなります。
梅雨の季節などもマラセチア皮膚炎が多く見られます
ので、気を付けましょう。

外耳炎

マラセチアは外耳炎を起こすことでも知られている細菌です。

耳はもともと湿度が高くなりやすいため、常在しているマラセチアの住みかとなりやすい場所ですが、そのことが原因でマラセチアによる外耳炎を引き起こします。
外耳炎の原因の中でもマラセチアが要因となっているものは70%以上と高いため、注意が必要です。

シャンプーの後など湿気が耳の中に残ってしまっているとマラセチアの増殖を助ける環境となってしまいますので、きれいに水分を取り除くようにしましょう。
また、耳が垂れている犬種の場合には特に耳の中が高温多湿となりやすいので、耳掃除などを行い、マラセチアの増殖を抑える予防が必要です。

甲状腺機能低下症、クッシング症候群などの病気

甲状腺機能低下症、クッシング症候群などの内分泌系の病気は免疫機能を低下させます。
つまり、皮膚のバリア機能も低下してしまいます。

また、代謝機能も衰えてしまうため、マラセチアの排泄物に対する抵抗力も低いことから菌の増殖が進みやすく、炎症の悪化を早めてしまうことになります。

治療を行えば、すぐに治る程度のマラセチアであっても、もともとの免疫機能が低下しているため、完治まで時間がかかることも多く、予防に努めることが大切です。

マラセチアの検査

マラセチアを疑って動物病院を受診する場合、まずはマラセチアであるかどうかの検査が行われます。
患部の表面についている菌を採取し、染色液で染めてマラセチア菌がいるかどうか検査していきます。
また、顕微鏡で直接観察し、マラセチアを確認していきます。

マラセチアの治療

マラセチアの引き金となった、アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、脂漏症、内分泌系などの疾患がある場合、その治療が行われます。

根本の原因となる治療を行わないとマラセチアの治療自体が長引くことになり、またせっかく治したマラセチアが再発してしまうため、この治療が優先となります。

ただしアトピー性皮膚炎などで頻繁に使用されているステロイド剤は皮膚のバリア機能を低下させてしまうため、マラセチアを併発している場合には使用を中止することがあります。

また、同時にマラセチアの治療も行っていきます。
マラセチアの治療は主に抗真菌薬の投与と殺菌作用のあるシャンプーの使用、塗り薬での治療になります。
マラセチアによる外耳炎を併発している場合には点耳薬を用いることもあります。

マラセチアの予防法は?

マラセチアは犬の常在菌であるため、どの子でもマラセチアになる危険性があります。
そのため、できるだけ犬の免疫力を保つことが予防策になります。
マラセチアを増殖させない環境を飼い主が作ってあげることが重要と言えるでしょう。
予防法には以下のようなものがあります。

  • 食事の見直し
  • 清潔を保つ
  • 水分を残さない
  • 耳のお手入れ

それぞれ、詳しく見ていきましょう!

食事の見直し

犬の健康を保つためには、やはり食事が大切です。
普段からマラセチア菌を増殖させないよう、免疫力を高める食事に切り替えると良いでしょう。

安価なドッグフードには添加物や保存料など健康を害するものがたくさん含まれていますので、あまりお勧めできません。
犬の健康を考え作られたドッグフードを選び、栄養バランスの整った食事を考えてあげると良いでしょう。
サプリメントを取り入れ、犬の食事バランスを補助してあげるのも良いでしょう。

清潔を保つ

日ごろから愛犬の体を清潔に保つよう心がけましょう。
小まめにシャンプーをすることも予防策になります。ただし、洗いすぎは良くありません。
皮膚を保護している油分まで取り除いてしまうからです。
2週間に一度ぐらいの適度なペースでシャンプーをしていくと良いでしょう。

また、シャンプーを使わず、体を流すのであれば、適度に余分な皮脂だけを落としてくれるので、過度にバリア機能が低下する心配もありません。
そうした方法で清潔を心掛けていくのも良いでしょう。

また、同時に犬の普段暮らしている環境を清潔に保つことも心掛けましょう。
ほこりなどは皮膚のバリア機能を低下させてしまうだけでなく、マラセチア増殖につながる皮膚病の引き金になってしまうことも考えられます。

ベッドやトイレなど普段犬が生活している環境も清潔を心掛けてあげましょう。

水分を残さない

シャンプーの後などタオルドライで終了していると言う飼い主さんも多いと思いますが、マラセチアを増殖させないためには、ドライヤーを使ってしっかり毛を乾かしてあげることが大切です。
特にお腹や股間、手足の指の間の水分をしっかりと乾かしてあげて下さい。
湿度が高い状態をできるだけ早くなくしてあげるよう心掛けましょう。

耳のお手入れ

マラセチアは高温多湿の耳の中にも繁殖しています。
そのため定期的に耳のお手入れをしてあげ、マラセチアの増殖を防いであげましょう。
特にシャンプーの後は耳の中に水分が残らないよう気を付けましょう。

また、耳垢がたまっていると、マラセチアを増やすことになるため、小まめに耳掃除をしてあげましょう。
ただし耳掃除をしすぎてしまうと耳の中が傷ついてしまい、逆に傷口からマラセチアを侵入させてしまうことになりますので、優しく行うことが大切です。

耳掃除のためのローションなどを使い、優しく拭き取るように耳掃除をしてあげましょう。

マラセチアがこんな方法で治った!?

マラセチアは一度悪化してしまうと完治の難しい病気です。
また、再発などが多いことでも知られています。
もちろん動物病院で治療することが対処策と言えますが、中には色々な方法を試している飼い主さんもいるようです。
科学的な根拠は全くありませんが、参考のために以下に紹介しておきます。

  • 針治療
  • マイクロバブル温浴
  • ヒバ水

針治療

犬の治療と並行して、犬が本来持っている治癒力、抵抗力を高めるために針治療をさせている飼い主さんもいるようです。
実際に症状がひどいマラセチアもすんなり治ってしまった事例があるようです。

マイクロバブル温浴

アメリカで人気のマイクロバブル入浴法で完治できたという犬もいるようです。
CS放送やyoutubuなどでも紹介されているもので、細かな泡で皮膚の汚れを効果的に洗い流せると言うものですが、皮膚病にも効くとされています。

最近ではそんな評価もあり、新規導入を始めている動物病院が増えているようなので、導入している病院に一度尋ねてみるのもありかもしれません。

ヒバ水

青森の木材ひばの鋸くずから作られた精油で、それを水に溶かして水溶液を作り、綿棒で耳につけたところマラセチアが完治したとのこと。高い抗菌作用があり、耳ダニなどにも効いたと言う飼い主の話を耳にし、試してみたそうです。

まとめ

獣医師・宿南章

マラセチアはどの犬にも存在する真菌であるため、健康な状態の犬であれば発症が見られることはまずありません。
ですが、ちょっとした環境の変化から、いつ患ってもおかしくない病気とも言えます。
風邪をひいてしまったり、皮膚炎を患ってしまったり、ストレスを感じたり、シャンプー後の水分が残っていただけでも、それがマラセチア増殖の引き金になります。
普段から飼い主がマラセチアを意識して予防してあげることが大切と言えるでしょう。
皮膚病や内分泌系の病気などが原因となってマラセチアになってしまうことも少なくありません。
普段から清潔を心掛け、犬の健康を守ってあげましょう。
また、免疫力を高めることにつながる食事にも気を使ってあげてください。

日ごろからバランスの摂れた食事をしていれば、皮膚のバリア機能も高まり、抵抗力も強くなるため、マラセチアの予防につなげることができます。
マラセチアに負けない良い食生活を心掛けてあげましょう。

犬のマラセチア

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獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

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記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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