犬の癌(ガン)の1つ「リンパ腫」になる原因とは?治療法と予防の知識

犬の癌(ガン)の1つ「リンパ腫」になる原因とは?治療法と予防の知識

犬の寿命が上がるとともに、犬のガンが増えてきています。

ガンと一口に言ってもその発症部位ごとに様々な種類に分けることができますが、中でも怖いがんと呼ばれているのが「リンパ腫」です。

なぜなら、血液のガンには良性と呼ばれるものがありません。

発症した時点で悪性腫瘍となりますので、いかに早期発見して早期治療を始めるかが、その後の進行具合や症状に大きく関わってきます。

そこで今回は、悪性の腫瘍である「リンパ腫」について見ていくことにしましょう。

犬のリンパ腫とはどういうものか、原因・治療法・予防法なども含めて詳しく説明していきます。

犬の「リンパ腫」とは

リンパ腫とは6~8歳くらいの中高齢犬に多く発症する血液のガンのことで、「悪性リンパ腫」や「リンパ肉腫」とも呼ばれています。

現在の獣医療では不治の病とされており、致死率が極めて高い全身性のガンです。

 

 

リンパ腫のメカニズム

血液の中には、酸素を運搬する赤血球、出血を止める働きがある血小板、細菌やウイルスから体を守る働きがある白血球やリンパ球などの血液細胞があります。

リンパ球は免疫を司る細胞で、リンパ節というリンパ球が集まった組織も形成されており、脇の下やあごの下など全身のあらゆる部位に存在しています。

リンパ腫とはこのリンパ球がガン化する病気で、本来ならガン細胞を排除するはずのリンパ球自体がガン化してしまうため、悪性となり不治の病と言われています。

 

 

リンパ腫の特徴と余命

ガン化した細胞「リンパ腫細胞」は、そもそも拡散する性質を持っているため、一ヶ所に留まらずに増殖しながら全身に広がっていきます。

その進行速度は速く、転移というよりも拡散していくという状態です。

リンパ球はもとより体中に存在しているので、リンパ腫も様々な部位で発生します。

発生した場所によって引き起こされる症状が異なり、治療による反応や経過もそれぞれです。

他の病気のように分かりやすい症状が現れにくいこともあり、早期発見はとくに難しい病気です。

また、犬のリンパ腫のほとんどが「多中心型」と呼ばれるリンパ節が腫れるもので、皮膚の下の腫れに気付いて飼い主さんが動物病院に訪れるケースが多く見受けられます。

リンパ腫は進行が速めで、進行とともに体力を奪っていき、肺や肝臓や骨髄内へ入り込んで機能を低下させ、愛犬の命さえも奪ってしまいます。

リンパ腫は、何も治療をしなければ平均余命は約4~6週間ほどです。

1日でも早く発見して治療を始めるために、全身のボディチェックが大切になります。

 

 

犬がリンパ腫になる原因とは

リンパ腫になる原因は未だ解明には至っていませんが、細胞内の染色体の異常が関与していると考えられています。

染色体中のガン遺伝子が活性化したためにリンパ系細胞がガン化して発症に至る、という経緯があるのではないかという事です。

とはいえ、遺伝・ストレス・免疫力の低下・発ガン性物質の摂取など、様々な要因もまったくの無関係とは言い切れません。

しかし原因が未だ解明されないため、将来リンパ腫になるかどうかを予測することも、予防することも困難ではあります。

ただ、ゴールデンレトリバーやラブラドールレトリバーは、統計的にも明らかにリンパ腫を発症しやすい犬種です。

リンパ腫は高齢犬に多い病気ではありますが、若いうちに発症してしまう犬もいますので、飼い主さんはスキンシップを大事にして、愛犬がたとえ若くても全身をくまなくチェックすることを習慣にしてみるといいでしょう。

リンパ腫は、早期発見と早期治療に尽きるのです。

 

 

犬のリンパ腫が発生した場所による分類

リンパ腫は、体中に存在するリンパ球がガン化するため、全身のどの部位にでも発生する可能性があります。

発生した場所によって、現れる症状も治療に対する反応も、治療後の経過も違ってくるため、いくつかの型に分けられます。

 

 

多中心型リンパ腫

リンパ腫の約80%を占めるのがこの「多中心型(たちゅうしんがた)」と呼ばれるタイプで、体表面のリンパ節が腫れる悪性のリンパ腫です。

呼吸困難やいびき、元気がなくなったり食欲がなくなるなどの症状が現れます。

また、リンパ節に集まり腫瘍を作る特徴があり、足の付け根や首などにしこりとして現れます。

あごの下のリンパ節腫瘍がもっとも気付きやすく、腫れているのを発見した飼い主さんによって動物病院に連れてこられるケースが多いようです。

また、脾臓や肝臓が腫れて、お腹が膨らんだり張ったりする場合もあります。

しこりを触ってみるとコリコリとした硬い感触がありますが、しこり自体には痛みはありません。

2ヶ所以上のしこりが見つかったら、とりあえず獣医師さんに診てもらうことをお勧めします。

ですが、リンパ腫の腫れは悪性リンパ腫によるものだけとは限りません。

細菌やウイルスに感染した場合でも同じように腫れますし、悪性リンパ腫である方が少ないぐらいです。

すぐに結論付けずに、まずは動物病院を受診することが大切です。

 

 

消化器型リンパ腫

リンパ腫全体の約5~7%にみられるのが、腸にできる「消化器型」と呼ばれるタイプです。

お腹や腸内のリンパ節がガン化したケースで、しばしば腸管に腫瘍を作ります。

そのため他のリンパ腫より胃腸障害を起こしやすく、下痢や嘔吐といった症状が現れます。

また、腸管に病変が広がっていると吸収不良から体重減少や食欲不振、低タンパク血症などが生じる場合もあります。

 

 

縦隔型リンパ腫

「縦隔型(じゅうかくがた)」とは胸のあたりに集まって腫瘍を形成するリンパ腫で、犬のリンパ腫全体からみると約2~5%ほどです。

腫瘍が気管を圧迫したり、胸腔内に貯まった水が肺を圧迫するため呼吸がしづらくなります。

呼吸の乱れや長引く咳、食べ物が飲み込みにくいなどの症状がきっかけとなって発見されるケースが多いです。

縦隔型のリンパ腫を発症した犬は、約40%という高い確率で高カルシウム血症を併発します。

その場合は、下痢・嘔吐・多飲多尿・便秘といった消化器系によく見られる症状が現れることもあります。

 

 

皮膚型リンパ腫

皮膚に発生するリンパ腫で、約5%以下と非常に稀なタイプです。

口や口腔内の粘膜に発生する場合もあり、孤立性のケースも全身に多発するケースもあります。

また、体表リンパ節・肝臓・脾臓・骨髄などに進行する場合もあります。

 

 

その他のリンパ腫

リンパ腫は他にも、脳や脊髄などの中枢神経や、眼球、膀胱、鼻腔、心臓、眼球など、あらゆる場所に発生する可能性があります。

中枢神経に発生した場合は発作や麻痺などを引き起こし、目に発症した場合は緑内障や角膜炎など眼科系の様々な症状が現れます。

 

 

「悪性度」による分類

リンパ腫は腫瘍細胞の分化度、つまり腫瘍細胞の成長度合いによって、悪性度が高いか低いかで分類されます。

腫瘍細胞の成長が速い、すなわち進行が速いのが「高悪性度」です。

逆に成長が遅いのが「低悪性度」で、その中間が「中間悪性度」と3つに分類されるのです。

悪性度によって、使用する抗がん剤の種類、投与する時期や期間、生存期間などが異なってきます。

 

 

ガン化している細胞によって分ける免疫学的な分類

リンパ球には「Bリンパ球」と「Tリンパ球」の2種類があり、ガン化しているリンパ球によって「B細胞性リンパ腫」か「T細胞性リンパ腫」かに分類されます。

この分類は、使用する抗がん剤を決める時や、ガンの進行のスピードを予測する際に重要なのです。

 

 

B細胞性リンパ腫

犬や猫のリンパ腫で多く見られるのは「B細胞性リンパ腫」で、ガン細胞の進行が速い「高悪性度」の場合が多いようです。

抗がん剤には良く反応するため、ただちに投薬治療を始める必要があります。

使用できる抗がん剤の種類が多いので、より有効な組み合わせで進行を抑制する事が可能です。

 

 

T細胞性リンパ腫

T細胞性リンパ腫は、抗がん剤への反応が悪いため治療が困難だと考えられています。

T細胞性リンパ腫にはガン細胞の進行が遅い「低悪性度」も含まれているため、即座に治療を開始するのではなく、病状を見ながら判断した方が良い場合もあります。

 

 

犬のリンパ腫の診断

犬のリンパ腫の最終的な診断は、発生した場所による分類・悪性度による分類・ガン化している細胞による分類から、どのようなリンパ腫なのかを診断します。

たとえば、熱もなく感染症に罹っているわけでもないのに2ヶ所以上のしこりがあり、検査によってガン細胞の成長が速い「高悪性度」だと判明し、かつガン化しているリンパ球が「Bリンパ球」であった場合は、「多中心型B細胞性高悪性度リンパ腫」となります。

 

 

犬のリンパ腫の治療法

悪性リンパ腫は、現在の獣医療では不治の病になっています。

ですので、残念ながらリンパ腫が完治することはまずありません。

抗がん剤を投与して腫瘍がなくなったように見えても、それは「寛解(かんかい)」です。

寛解とは、検査でガン細胞が見つからなくなり、まるで完全に治ったかのように元気になる状態のことです。

ですが寛解はあくまでも一時的なもので、体の中から消えたかのように思えたガン細胞はいずれ再発します。

そして再発してしまうと、そこからの治療はかなり困難を極めます。

リンパ腫の治療で大事なことは、まずガン細胞の進行を抑えて寛解にまで持っていくことです。

その後は、出来る限りの手を尽くして寛解を少しでも長く維持すること、そして再発を防ぐことです。

悪性リンパ腫の治療目的は「延命」です。

犬のリンパ腫に対して何も治療を施さなかった場合、生存できる期間は約4~6週間ほどです。

しかし、リンパ腫がどの段階で発見されたか、どの場所に発生しているか、どのような治療を施したかなどで生き延びられる期間に大きな変化がある場合も多いのです。

 

 

抗がん剤治療

リンパ腫は全身性の血液のガンですので、抗がん剤治療がメインとなります。

寛解に持って行ける可能性があるのは化学療法のみで、多中心型のリンパ腫に抗がん剤を注射することによって約80%の確率で元気な状態に戻ることができます。

多中心型で高悪性度リンパ腫の場合に対しては、約90%以上とも言われています。

抗がん剤治療を施した場合、約50%の犬が1年後も生存しており、約25%の犬が2年後も生存しています。

リンパ腫に使われる抗がん剤には多くの種類があり、単体で使用する場合も併用して使用する場合もあります。

また、抗がん剤の副作用として、嘔吐や下痢などの胃腸障害、免疫力の低下、脱毛などが挙げられますが、個体差によるものが大きいようです。

副作用によって入院した事例は約10%以下ですので、異常があればすぐ獣医師に相談するなど、適切なケアで最小限に抑えましょう。

しかし、多中心型のリンパ腫でない場合は、抗がん剤の治療はそれほどの効果が上げられていないのが現状です。

消化器型リンパ腫に対しては、抗がん剤によって効果があったのは50%ほどで、生存期間は平均で約2~3ヶ月となっています。

皮膚型リンパ腫に対しても、抗がん剤の有効期間は3ヶ月ほどしかなく、生存期間も平均で数か月と短くなっています。

 

 

ステロイド治療

ステロイドとは副腎から作られる副腎皮質ホルモンの1つで、体の中の炎症を抑えたり、体の免疫力を抑制する作用がある、様々な疾患の治療に使われているポピュラーな薬剤です。

抗がん剤ではありませんが、リンパ腫に対して効果があるため、他の抗がん剤との併用や単体での使用など、悪性リンパ腫の治療薬としてよく用いられます。

抗がん剤に比べて副作用も少なく、体への負担が少ないステロイド治療は、愛犬に元気でいて欲しいけど苦しませたくはないと願う飼い主さんにとっても良い治療法です。

 

 

放射線療法

リンパ球は放射線に対して感受性が高いため、放射線治療はリンパ腫に対して効果があると言えます。

とくに、抗がん剤などに反応しない腫瘍や、縦隔(胸の中)に出来た大きな腫瘍など、特定の病巣によって著しく生活に支障が起きている場合には局所への照射は効果的です。

ただし、残念ながら様々な理由から実用的とは言えません。

まず、設備の整った動物病院が少ないことです。

また、放射線治療を犬や猫に行う際には全身麻酔をかける必要があるため、治療するたびに体に大きな負担をかけることになり、命を危険に晒してしまいかねません。

 

 

外科手術

血液のガンに対して外科手術はほぼ効果がありません。

しかし、脾臓が破裂もしくは破裂する可能性があるときの摘出手術や、腸閉塞が起きる危険性があったり起きてしまった場合の摘出手術などは、命を救う目的で行われるケースもあります。

 

 

犬のリンパ腫に対する予防

悪性リンパ腫は、原因が解明されていないという現状もあり、予防するのは大変難しいと言えます。

ですが、普段から気を付けて観察していれば早期に発見する事は可能です。

リンパ腫はだいたい6~8歳くらいに発生しますが、稀にもっと若い犬でも発症する場合があります。

愛犬が5歳になったら、あごの下や脇の下、足の付け根などをなるべく触ってみるようにしましょう。

そしてまず愛犬の毎日の様子を観察して、皮膚病がなかなか治らない、下痢が続くなど、いつもと違う事が起きたらすぐに気付いてあげてください。

また、定期的に動物病院で検診を受けることも予防になるでしょう。

 

 

まとめ

悪性リンパ腫は、一旦発症してしまうと完治することは非常に難しい、致死率が高い病気です。

ですが、早期治療によって症状が軽減され寛解に持ち込むことができれば、発症前のように元気で穏やかな日々を送ることができます。

そのためにも毎日のスキンシップが大切な予防法と言えます。

愛犬の毎日の微妙な変化を見逃さないようにしましょう。

もし何か発見した場合であっても、落ち着いて、すぐに動物病院を受診しましょう。

一日でも長く愛犬との幸せな日々を送ることができるよう、日ごろからの食事、ケアにも気を配るようにしてくださいね。

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