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犬の慢性腎不全の症状、原因と治療法、食事と余命について

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獣医師・宿南章

犬の慢性腎不全は、腎臓の働きが徐々に悪くなってきて慢性的に腎臓の機能が働かなくなる状態です。

急性の腎不全と比べると長年かけて腎臓機能が落ちてくるので健康状態も急変するものではありませんが、愛犬が慢性腎不全になってしまった場合は、飼い主さんはその病気のことについて正しい知識をもって対応する必要があります。

犬の慢性腎不全とはどのような症状で余命はどれぐらいなのでしょうか?
原因や治療方法、また日々の食事はどんなものを食べるようにすれば良いのかについて知って下さい。

目次

犬の慢性腎不全とはどんな病気?

犬の慢性腎不全は人間の慢性腎不全と同じように、数ヶ月から数年かけて腎機能が下がってくることによって腎不全という領域に症状が進んでいきます。

腎臓は血液中の老廃物を取り除き、尿を作り、老廃物を体外へ排出する働きがあります。
いわば、体の中の不純物を取り除くフィルターのような働きをしています。
ろ過機能をしているのが、腎臓の中のネフロンというものです。

ネフロンは腎臓の中の機能の1つですが、腎小体とその先の尿細管からなっています。
何らかの理由でネフロンが少しずつ機能しなくなることで腎臓の機能が破壊されていくことで腎不全になります。

徐々に腎機能が下がってくるので体調も徐々に悪くなってきます。

腎機能が下がってくると血液中に老廃物が体外に排出されずに常に残存しているということですので、綺麗になっていない血液が体を巡ることによって他の臓器などにも負担になり、体全体の健康に大きな影響を与えます。

腎臓のいろいろな働き

腎臓は血液中の老廃物をフィルターのように濾して尿を作る臓器というイメージがありますが、腎臓はその他にもいろいろな働きをしています。

エリスロポエチレンを分泌

腎臓はエリスロポエチレンやカルシトリオールというようなホルモンも分泌しています。
エリスロポエチレンは赤血球の生産を促進する役割があり、このホルモンが減少すると貧血になります。

カルシトリオールというようなホルモンを分泌

カルシトリオールは血液のカルシウム濃度を高める働きがあります。
カルシトリオールが分泌されないとパラトルモンというホルモンが副甲状腺から分泌されて副甲状腺機能亢進症になったりします。

血圧のコントロールや液の酸性アルカリ性の値のpHを一定に

血圧をコントロールしたり、血液の酸性アルカリ性の値のpHを一定にする働きもあります。
体内の水分量や電解質をコントロールするのも腎臓の役割ですので、腎臓機能が著しく悪くなると生命維持に関わります。

犬の場合も腎臓は左右1つずつあり、どちらか1つが機能しなくなっても、もう1つがその働きをカバーすることができます。
しかし、腎臓は臓器に一度損傷を受けると再生できないので、慢性腎不全になっても治療をして再生をすることができません。

犬の慢性腎不全の症状は?

犬の慢性腎不全の症状には以下のようなものがあります。

  • 食欲がなくなる
  • 毛並みが悪くなる
  • 尿の量が増える
  • 水分をやたらと飲む
  • 直ぐに疲れる
  • 嘔吐する
  • 食べているのに痩せていく
  • 骨が弱くなる
  • 貧血
  • 副甲状腺機能亢進症
  • 高窒素血症
  • 尿毒症

少し補足の必要な項目について説明しますね。

尿の量が増える

尿が薄くなって尿の比重が下がるので薄い尿をたくさんするようになります。
場合によっては、高窒素血症になります。

水分をやたらと飲む

尿としてたくさんの水分が体外へ出て行くので、水分をたくさん欲しがるようになります。

すぐに疲れる

腎不全の症状は老犬になるほど発症率が高いのですが、腎機能が下がり血液に不純物が混じっている状態になっているので運動してもすぐに疲れますし、元気がなくなります。
散歩に行きたがらなかったり、ぐったりと横になっていることも多くなります。

骨が弱くなる

腎臓は血液中のカルシウム濃度をコントロールしているので、腎機能が下がることによってカルシウム量を維持することができず、老犬や子犬は特に骨が弱くなります。

貧血

赤血球の生産を促すホルモンが腎臓から分泌されなくなることで貧血状態になります。
貧血になると歩いていてもふらついたり、口の中の粘膜が白くなります。

副甲状腺機能亢進症

腎臓の機能低下によって、カルシトリオールという血液中のカルシウムの濃度をあげるホルモンが分泌されなくなります。
また、尿中にタンパク質が過剰に放出されたり、ビタミンDが生成不足になりカルシウム不足になります。
カルシウム不足であるにも関わらず、カルシトリオールが分泌されないことで、その働きを補うために副甲状腺からパラトルモンという副甲状腺ホルモンが分泌されます。

パラトルモンはカルシトリオール同様に血液中のカルシウムに関わるホルモンですが、パラトルモンの作用が強くなり過ぎて血液中のカルシウム量が増加しすぎると骨や腸や腎臓に作用します。

腎機能が低下することにより副甲状腺機能亢進症になることから腎性副甲状腺機能亢進症とも呼ばれています。
副甲状腺機能亢進症になると水をたくさん飲んだり、尿が増えたり、骨密度が低下します。

高窒素血症

腎機能が慢性腎不全により低下すると、窒素などの老廃物が尿から排出されないので血液中の窒素濃度が上がってしまいます。窒素を含む老廃物が高濃度で血液中に残留していると高窒素血症になります。
高窒素血症になると水をたくさん飲みますが、尿が減少します。

また、体内の水分量の調整が上手くできないので体が浮腫んで元気がなくなります。
動きたがらなくなり、食欲もなくなります。高窒素血症の状態が進むと尿毒症になります。

尿毒症

慢性腎不全において末期の状態が尿毒症という状態です。
腎機能が下がることで血液中に高濃度の老廃物が蓄積すると血液の成分に影響を与えます。
血液の状態が良くないのでぐったりして元気がなくなりますし、体が浮腫み、貧血にもなってきます。
不純物の多い血液が他の臓器にも悪影響を及ぼしますので、心不全になったり血液の酸性度が高くなり、命にも危険が出てきます。

慢性腎炎から慢性腎不全へ

慢性腎炎は何らかの原因によって長期に渡り腎機能が徐々に下がってくる状態です。
突然腎機能が下がることはないので、症状としては現れにくいので発見し難い病気でもありますが、犬にはよくある疾患の1つです。
慢性腎炎の場合、その腎機能は長年をかけて徐々に下がってきますが、慢性腎炎の延長上に慢性腎不全があります。

腎機能がどの程度あるかということを血液検査(クレアチン、BUN値、リン値)や尿検査で調べますが、腎機能が30パーセントを切ってくると腎不全の領域に入ると判断されます。

慢性腎炎を愛犬が患っている場合は、長期的に病状が進むことで慢性腎不全になる可能性がありますし、急性腎炎を繰り返しているうちに慢性腎不全になることもあるということをしっかり認識しておきましょう。

犬の慢性腎不全の原因は?

老化

慢性腎不全の場合、7歳を超えたころから徐々に増えだし、10~13歳の老犬が慢性腎不全になりやすい年齢と言えます。
高齢になるほど腎機能が徐々に下がってきます。

偏った食事

日頃から塩分が多い食事や高たんぱく食を食べさせていると腎臓機能に常に負担をかけているということになり腎不全になるリスクが高まります。

糖尿病

ホルモンの一種であるインスリンの働きが悪くなることで血液中の糖の量が多くなってしまう病気で、病状が進行すると合併症として慢性腎不全になることもあります。

遺伝でなりやすい犬種

慢性腎不全になりやすい犬種があります。具体的には、下記の犬種になります。

  • ゴールデンレトリバー
  • ジャーマンシェパード
  • シーズー
  • ドーベルマン
  • ミニチュア・シュナウザー
  • チャウチャウ
  • スタンダードプードル
  • サモエド
  • イングリッシュコッカースパニエル
  • ケアーンテリア

他にもガンや自己免疫疾患などが原因となる場合もあります。

犬の慢性腎不全の治療法

慢性腎不全の場合、治療薬というものは現在のところありませんので、現在の腎不全の状況を進行させないようにする治療を行います。

一度損傷された腎組織というものは再生されませんので、治療法としては今の症状を少しでも軽減するという対症療法を行います。

腎機能が下がっているので血液中に老廃物が蓄積しているので輸血やホルモン剤の投与、人工透析によって血液を綺麗にしたり、腹膜透析、窒素化合物を吸着させる薬剤の投与などを行います。
また、血圧を安定させる薬を投与することもあります。

日常生活においては、疲れないように安静にしたり、食事療法がとても重要になってきます。

慢性腎不全の食事療法は?

慢性腎不全の場合、食事療法を行うことは非常に大切です。
腎機能がかなり低いので、栄養をたくさん摂りすぎると腎臓に負担がかかります。

ただ、制限しすぎると逆に栄養不足やカロリー不足になりますので、どんな食事がいいのかは動物病院でしっかり血液検査や尿検査を行ったり、体重を考慮しながら獣医さんと十分話し合って決めることが大切です。

また、慢性腎不全の場合の食事療法は長期間に渡って継続することが重要ですので、無理のない範囲で頑張りましょう。

リンの量を制限する

リンは骨や歯を作るためになくてはならない栄養素です。

しかし、腎機能が著しく低下している慢性腎不全の犬は体内にある余計なリンを体外に排出できないので、リンが体内に蓄積されて腎臓の細胞を傷つけることによって腎臓がダメージを受けます。

リンは肉類に多く含まれているので肉の摂取を制限することが大切です。

また、リンの少ない野菜や果物は以下の通りです。

リンが少ない野菜類ジャガイモ、大根、レタス、ピーマン、もやし、なす、トマト、白菜、ごぼう、小松菜、かぼちゃ、ほうれん草、きゅうり、チンゲン菜、栗
リンが少ない果物スイカ、リンゴ、メロン、みかん、バナナ、イチゴ、キウイ、梨、マンゴー

などです。
リンの摂取量は腎機能や体調を考慮しながら獣医さんとよく相談しましょう。

たんぱく質の制限

たんぱく質を摂取することで、体にとっての老廃物である窒素代謝物が発生します。

この窒素代謝物という老廃物が体内にあっても腎機能がしっかりしていれば問題なくろ過されるのですが、慢性腎不全で腎臓のろ過機能が著しく下がっていると腎臓のろ過の処理能力追いつかず、正常に機能している糸球体にも過剰に付加がかかり、腎機能がどんどん下がっていてしまいます。

たんぱく質を気にしすぎて、たんぱく質を全く摂取しないと生命活動に必要なカロリーが不足してしまいます。
カロリー不足になると、体は生命維持のために、自分の体についているたんぱく質である筋肉などを分解して消費していきます。

外部からたんぱく質を摂取制限した結果、体に元々ある自分のたんぱく質であっても分解されることで窒素代謝物が発生します。また、自分の体のたんぱく質でも窒素代謝物という老廃物が発生し、腎臓に負担をかけます。

そこで、たんぱく質を摂取制限する場合は、糖質や脂質などたんぱく質以外の栄養素でカロリーを必要量摂取しながらたんぱく質の摂取制限をすることが大切です。

たんぱく質をどのぐらい制限するかということは、腎機能の状態によりますので、獣医とよく相談して食事をあげるようにしましょう。

水分を摂る

慢性腎不全になると尿の量が増えますし、体の中に水分が少なくなると体の中の老廃物を体外に排出しにくい状態になりますので、小まめに水分を体に入れることが大切です。

食事の回数を増やす

慢性腎不全になると徐々に食欲がなくなってきます。
しかし、必要な栄養素を摂取することは非常に大切なので1日の食事の回数を3~6回ほどに増やして小まめに栄養を摂る事ができるようにしましょう。

塩分制限

慢性腎不全で腎機能が下がっていると塩分の排出機能が下がります。

体にとって塩分は必要なものですが塩分の排出機能が下がり体内に塩分が溜まりやすくなると、塩分が体の中で水分とくっつくために、体内に水が溜まりむくみや高血圧の原因になります。

犬は汗をかきますが、人間ほど汗として塩分を体外に排出しません。
このため塩分を含んだ食材をたくさん与えると塩分のとりすぎになるので注意しなければいけません。

また、人間と比べると犬は薄い味の食べ物でも塩分不足にはなりません。

慢性腎不全の愛犬には、その症状や腎機能によって塩分量の制限する必要がありますので、獣医の指導のもとに塩分の摂取分量を決めましょう。

慢性腎不全の愛犬にドッグフードを与える場合は、専用に開発された信頼できるドッグフードを選ぶようにして下さい。

犬の慢性腎不全の余命はどのくらい?

慢性腎不全というのは生命にかかわる非常に重い病気です。

腎不全になる犬は老犬が多いですし、急性腎不全のように急に状態が悪くなるものではないので、食欲や尿の量、回数、体重の減少など様々な要素が余命に関係します。

最後は尿毒症という状態になり尿を排出することができなくなります。

このようになると余命は1週間から1ヶ月以内である場合が多いと考えましょう。

残された時間が非常に少ないので愛情をしっかり注いであげてください。

まとめ

獣医師・宿南章

慢性腎不全は腎臓機能が非常に低下している状態を言います。

慢性腎不全は悪化すると命に関わる非常に重い病気ですが、慢性ですので病状は長時間をかけて徐々に悪くなっていきます。

獣医さんと協力しながら、人工透析やホルモン治療、食事制限などを行って、できるだけ病気の進行を遅らせるようにお世話をしてあげることが大切です。

犬の慢性腎不全

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獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

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記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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