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【獣医師監修】犬が腎不全になったら?症状と余命、食事、治療法

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獣医師・宿南章

犬にも腎臓が機能しなくなる腎不全という病気があります。

人間は腎不全が悪化すると人工透析をして腎機能を助けながら生活することができますが、犬は人間のように治療として人工透析はしません。

そのため、腎不全にかかってしまうと命の危険にさらされてしまうという状態になります。

犬の腎不全というのはどのような病気なのでしょうか?

目次

犬の腎不全とは?

腎不全というのは腎臓という臓器の働きが悪くなり、最悪は全く機能しなくなるという恐ろしい病気です。

腎臓と聞くと、尿を作る臓器というイメージがありますが、生命維持のために体の老廃物を体外に排出するというのは非常に重要な役割があります。

腎不全になって腎臓が機能しないということは体の中に老廃物が常にある状態になり、その事が原因で他の臓器や器官にも悪影響が及び、その結果生命を維持できなくなります。

腎臓の働きとは?

腎臓というのは犬でも人間でも生命維持の維持に非常に重要な働きをしています。

腎臓は別名「沈黙の臓器」とも言われ、その働きが悪くなっても、痛いというはっきりした症状がないため、その働き自体を理解していない人も多い臓器ですが、最近の研究では人間でも腎臓の働きが非常に重要であると注目されています。

腎臓の働きで一番重要なことは、体の中の老廃物や毒素を除去するというものです。
いわば、体の中にあってはいけないものを腎臓のフィルターに通して尿と一緒に体外へ出すということです。

次に、腎臓は尿を作る器官ですが、血液をフィルターに通して必要な水分を体に残し、不必要な水分を尿として排出します。
また、体内の水分量や電解質の調整を行ったり、血液を作る指令を出したり、血圧の調整を行うホルモンの分泌も腎臓の役割とされています。

一見、体の老廃物を濾すフィルターの役割だけが注目を浴びる臓器ですが、生命活動の中心的な機能も果たしている重要な臓器です。
このため、腎臓が悪くなると命を落とす危険があるということも容易に理解できますね。

腎不全には急性と慢性がある!

犬だけに限りませんが、人間でも腎不全には突然腎不全を起こす「急性腎不全」とじわじわと腎機能が失われていく「慢性腎不全」があります。

特に犬の病気でも急に腎臓の機能が失われる急性腎不全になると命を落とす危険性が高いので飼い主は愛犬の様子を注意深く見守ることが大切になってきます。

急性腎不全になると数時間から数日の間に急激に腎機能が失われてしまい、高カリウム血症や尿毒症になり死に至ります。

犬が腎不全になったら出る症状は?

腎不全は死に至る恐ろしい犬の病気ではありますが、その症状はあまりはっきりしたものがありません。
急性腎不全の場合と慢性腎不全の場合は症状が若干異なりますが、腎不全の初期症状というのがはっきりとは出ません。

犬も特に痛がったり、苦しがったりする不快な症状を示さないので症状に気がついた時には既に病気が悪化していたということも珍しくありません。

初期症状として挙げられるのは多く水を飲むようになることです。
その結果、尿の色が若干薄くなったり、尿の量が増えます。

このような状態で気づいてあげられると良いのですが、その症状が些細なのでなかなか腎不全であることに飼い主も気が付くことができません。

もう少し症状が進んでいくと、食欲不振や嘔吐、下痢、体重の減少などで飼い主が何だか様子がおかしいと気がつきますが、他の病気にもよく見られる症状ばかりですので、動物病院で受診するまではなかなかその原因が腎不全であると気づく飼い主はいないようです。

急性腎不全の場合と、慢性腎不全の場合ではその症状も若干異なりますので例として挙げておきましょう。

急性腎不全の場合

  • ほとんど尿が出ない
  • 食欲がなくなる
  • 嘔吐する
  • 元気がなく動かない
  • 脱水症状
  • 背中を丸める

慢性腎不全の場合

慢性腎不全とは腎機能の4分の3以上の機能が既に低下している状態です。

  • 水をたくさん飲む
  • 尿の回数が増える
  • 食欲がない
  • 嘔吐する
  • 痩せる
  • すぐに疲れる

犬の腎不全の原因

犬の腎不全の原因は様々ですが、脱水症状などによって腎臓の糸球体というフィルター機能を果たす機関に流れ込む血液量が減ってしまったり、腎臓が突然機能しなくなったり、尿が腎臓を通過した後の膀胱や尿道で腫瘍や結石があることで詰まったり、尿路が傷ついて尿がうまく排出できないことによって起こることがあります。

また、腎盂腎炎や糸球体腎炎、アミロイドーシスというような腎臓の疾患があるという場合は、徐々にネフロンという血液をろ過して尿を作る器官の働きが悪くなっていくことで腎不全になっていく場合もあります。

腎不全からなる尿毒症とは

腎不全の症状が進み、末期症状になると「尿毒症」になります。
尿毒症というのは、腎臓で尿を作ることができずに老廃物や毒素を体の外に排出出来ない状態のことを言います。

腎臓は本来犬も2つあり、腎機能が本来の30パーセントほどになっても正常な尿を排出することができると言われています。

このため、尿が排出できない尿毒症というのは、腎機能がほとんど正常に働いていないという末期状態である場合が多いです。尿毒症になった場合の腎臓内部の細胞はほとんど破壊されており、一度破壊さえた細胞は元には戻りません。

治療が不可能になるため、腎不全の末期症状である尿毒症になると、余命は数時間から数ヶ月ほどです。
余命については愛犬の体力がどのくらいあるのか、対処療法をどのくらい続けるかによって変わってきます。

尿毒症の代表的な症状とは?

獣医師・宿南章

腎不全は老犬がなりやすく、また腎臓の疾患というものはなかなか症状がはっきり現れないのが特徴で、尿毒症になってもなかなか飼い主でさえ愛犬の変化に気がつかないことが多くなります。

初期症状としては、食欲不振や元気がない、体がむくんでいるという状態ですが、徐々に嘔吐、下痢、脱水症状になり異変に気づきます。
口からアンモニア臭がしたり、出血したり、体が冷たくなることから、尿が出ていないという状態が見られます。

尿毒症であると分かっても、すでに痙攣やこん睡状態に陥ってしまうことも多く、手の施しようがないと言われてしまうケースも少なくありません。
特に重症になってくると一気に症状が出てきますが、その後数時間で死に至ってしまうこともある病気です。

老化やちょっとした体調不良で元気がないと思っていると手遅れになってしまいますので、調子が悪いなと思ったらできるだけ早く動物病院に連れて行ってあげましょう。

腎不全から尿毒症になった場合の余命は?

腎不全になると、腎臓が機能しなくなるので尿を作り出すことができず体の中に老廃物や毒素が充満します。
尿毒症という状態になると回復するということがなかなか難しくなります。
回復が難しいということは、あとどれぐらい生きられるかという余命を考える必要があると言うことです。

極初期段階の尿毒症の場合

腎不全というのは、歳をとった老犬がどうしても陥りやすい病気で、原因は老化で徐々に腎臓の機能が落ちてきて尿毒症になります。

極初期段階での症状は食欲不振であったり、元気がなかったりするだけなので、それだけの症状でなかなか動物病院を受診するということはありませんが、何か他に疾患があって尿検査などを行った結果腎臓に異常があり腎不全になって、尿毒症になっているということが分かります。
この段階で尿毒症が分かった場合は、すぐに治療を始めることができるので余命も数年単位で考えられます。

腎臓の炎症を抑える投薬治療を受けたり、塩分を控えたり、高たんぱくの良質な食事療法を行うことで病気の進行を遅らすことができます。
尿毒症の超初期段階で診断がついた愛犬は非常に幸運であると言えるでしょう。

初期段階の尿毒症の場合

尿毒症が酷くなると徐々に腹部にかたまりができたり、体がむくんだりしてきます。
これは腎臓に水分が溜まってしまっている状態で、ある程度腎機能が下がっています。

体がむくむということは腎臓の細胞が徐々に破壊されて体内のミネラルバランスが崩れている状態ですので完治が難しい状態です。
この段階で、尿毒症であるということに気がついて治療を受けることができれば、余命は約1年半ほどであるのが一般的です。

治療としては、利尿剤やホルモン剤、ビタミン剤などを投与し、塩分制限や高たんぱく質の食事療法を同時に行います。
また、尿道にできた尿路結石が原因で尿毒症になった場合は、腎不全が原因でなく腎機能がある程度機能しているので治療によって完治することができます。

嘔吐、下痢、脱水症状になった場合

腎不全から尿毒症になって、嘔吐、下痢になると水分が体から急激に失われるので脱水症状になります。

嘔吐や下痢は様々な病気の症状でなかなか尿毒症であることが飼い主には分かり難いのですが、できるだけ早めに動物病院に連れて行くと対処療法で治療を行い余命を少しでも伸ばすことができます。

腎機能がどのぐらい残っているかによって治療も余命も変わってきますが、まだ尿が出るようならば腎機能が残っているので利尿剤やビタミン剤を服用したり、塩分制限などをした食事療法で体の負担を軽くするという治療を行います。

余命は愛犬の体力との問題もありますが、数ヶ月伸びたとしても年単位ではなく、数ヶ月単位であると考えられます。

アンモニアの口臭がするということは、腎機能がある程度低下して毒素が体に残っているということです。
この状態が長期間続くことによって体力もより消耗しますし、感染症にもかかりやすいので通常よりも注意が必要です。

尿が全く出なくなった場合

腎機能がほとんど働いていないということで、尿が出なくなった尿毒症は腎不全の中でも最も末期の状態と言えます。
この場合、余命は月単位ではなく数週間単位であると考えられます。
最悪の場合は、1日も持たずに数時間で死に至ることもあります。

口の中が出血したり、体温がどんどん下がってくるということは体温を維持する力もなく、体内の水分やミネラルバランスも調整不可能な状態になっています。
このまま何の治療もすることなく放置すると数時間の命ということもあります。

動物病院で輸血をしたり、透析をした場合は数週間単位の余命になるかもしれませんが、飼い主も覚悟をしておく必要があります。

腎不全になった場合の食事の内容は?

腎不全になってしまった場合、食事の内容を見直す必要があります。
腎不全に適したフードにすることはもちろん、専門家や獣医が推薦した信頼できるフードを選ぶことがとても大切です。
では、どのような食事に切り替えていく必要があるのでしょうか?

リンを制限する

腎不全になると腎機能が低下しているのでリンを制限する必要があります。
リンは骨や歯、細胞を作るために必要が栄養素ですが、腎機能が下がった腎不全の犬には余分なリンが排出できなくなり、腎機能を更に悪くします。

実際にリンを制限した食事を摂っている腎不全の犬はリンを制限していない犬よりも長生きするというデータもあります。

リンの制限をするためには低リンの食材であるジャガイモ、精白米、卵(卵白の生は与えない方が良い)などを利用すると良いでしょう。

たんぱく質の摂取量を調整する

たんぱく質は体内で分解されると老廃物が発生します。
腎不全は老廃物が排出できないので過剰にたんぱく質を摂取すると体に負担をかけてしまいます。

しかし、たんぱく質は体の組織を作るために必要な栄養素ですので摂取しないという訳に行きません。
獣医の指導の元、たんぱく質の量を調整して食事療法を行う必要があります。

食事回数をこまめにする

腎不全になると食欲がなくなります。
一度にたくさんの量を食べることができないので消化をできるだけ助けるためにも食事の回数を増やします。
1日3回~6回くらいに分けて少量を小まめにあげるようにしていきます。

を与える

体内の老廃物を排出しやすくするために充分な水分を与えるようにします。

犬の腎不全の治療は?

急性の腎不全の場合は、病院で輸血や透析治療などを行います。
既に尿毒症になってしまっている場合も、老廃物や毒素を体外に排出させる治療を行います。

慢性の腎不全の場合は、食事療法が一般的です。
たんぱく質やリンの摂取を制限しますが、食事療法だけでは不十分ですので点滴治療や増血剤、皮下輸血などを行います。

食事療法などはしっかり獣医の指導の元、行うようにしましょう。
また、ドッグフードを与える場合は、腎臓疾患のある愛犬に食べさせるためのものを利用するようにすると良いでしょう。

まとめ

獣医師・宿南章

腎不全は、老犬に多い病気です。
腎臓の機能が徐々に失われていくので、体の中に老廃物や毒素が溜まってしまいます。

腎臓は沈黙の臓器で腎不全にまで機能が落ちていてもはっきりした症状が現れないので飼い主も愛犬の体調不良に気がつかない状態が続き、尿を全く排出できない尿毒症にまで悪化して死に至るということも多々あります。

初期の段階で腎不全の治療ができるように、日頃から愛犬の様子に目を配ってあげると良いでしょう。

また、発症してしまった場合は、獣医の指導の元、適切な治療法を行い、腎不全に適した信頼性のある療法食を与えることを忘れないようにしてください。

愛犬が腎不全になったら

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獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

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記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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