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犬の肝炎の原因と症状、余命、食事、治療法の知識

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犬の肝臓は非常に生命維持のために様々な働きをしていますが、非常に我慢強い臓器でもあり、肝臓にトラブルが発生していてもなかなか症状に現れないということが難点です。
特に急性肝炎は数週間で命を落とす場合もありますのでとても注意が必要です。
犬の肝炎にはどのような病気があり、どのような症状があるのでしょうか?
犬の肝炎の症状と余命、原因、その食事や治療法などをまとめてみました。

目次

犬の肝臓の働きとは?

犬の肝臓には様々な働きがあります。
体に取り入れられた食べ物からの栄養素は胃や腸で消化吸収されて肝臓に送られます。

肝臓はその栄養素を体の器官のそれぞれに合わせた形に作り変えて、臓器や血液に送りこむ代謝機能、胆汁という消化酵素を分泌する分泌作用、血液を固める血液凝固機能、体内に入ってきた体にとって有害な物質を分解して解毒する解毒作用、食べ物にエネルギーなどを送り込む貯蓄機能、造血機能などが主な働きです。

肝臓は生命維持のために非常に多くの働きをしている臓器ですが、肝臓は再生能力が高いので肝臓の一部にダメージを受けていても、他の部分がその働きをカバーするので症状がなかなか外に現れないので、飼い主も愛犬の異常に気がつかず、気がついた時には既に肝炎がかなり進行してしまっていて手の施しようがないということがよくあります。

肝臓はこのような特徴から「沈黙の臓器」と言われており、肝炎の早期発見がなかなかできません。

犬の肝炎とは?

犬の肝炎とは、肝臓の機能が下がってくることです。

肝臓は、代謝機能、酵素の分泌機能、血液の造血や凝固機能、毒素を体外に排出する解毒作用、エネルギーの貯蔵機能などがあり、肝臓に何らかの炎症が起きると細胞が壊れたり、細胞に脂肪が溜まるなどして肝臓が本来の様々な働きができなくなることを肝炎と言います。

肝臓の働きは生命維持のためには重要なものばかりですが、肝臓という臓器自体は予備能力が非常に高い臓器であるために組織の一部、若しくはそれ以上の部分に何らかの障害があっても症状としてはっきり現れないので、飼い主は愛犬の異常になかなか気がつきません。

肝炎の症状を飼い主が見て感じるようになったときには、既に症状がかなり進んでいることが多いのも肝炎の特徴です。
肝炎が進行すると肝臓の働きが悪くなるので体全体で障害が起こってきます。

初期の段階で早期発見できた場合は何らかの対処ができますが、病状が進行すると肝性脳症や肝硬変、肝不全などの状態に命に関わる肝臓病になります。

高齢の愛犬はどうしても加齢のために肝機能が徐々に落ちてきて肝炎になりやすい
ので、日頃から定期的に動物病院で定期健診を受けて肝炎になっていないかということを確認するということが非常に大切になってきます。

犬の肝炎の症状とは?

肝臓は沈黙の臓器と言われていて、ある程度重症になるまでは我慢強く働き続ける臓器です。
このため、愛犬を毎日見ている飼い主でさえ体の不調にはなかなか気がつかないということが多いので、飼い主が異常を感じて自ら早期発見するということはほぼないと考えておく方が良いでしょう。

犬の肝炎においては初期症状はほぼ無症状ですが、病気が進行してくると飼い主なら感じるような以下の症状が徐々に出てきます。

肝炎が進行してくると出てくる症状
  • 食欲がない
  • 下痢をする
  • 嘔吐をする
  • 元気がない
  • 体重が落ちる
  • 歯ぐきや白目、耳の中が黄疸によって黄色くなる
  • よく水を飲むようになる
  • 尿の回数が増える
  • 尿のオレンジ色っぽくなる

というような症状が肝炎の犬には見られます。

どの症状も何か体に疾患があるときによくある症状ですが、肝炎の症状として特徴的なものは黄疸です。

黄疸の症状が出るということは既に肝炎の症状がある程度進行しているということですので、そのような症状があるときはできるだけ早く動物病院に連れて行ってあげましょう。

犬の肝炎でチェックすべき血液検査項目

何となく愛犬の体調が悪かったり、全く他の症状で動物病院にかかって血液検査をした結果、肝炎であるということが判明することが多いです。
血液検査のどのような検査項目の数値が上がると肝炎である疑いがあるのかということを、飼い主も知識として持っておくと良いでしょう。
指標となる血液検査の項目をご紹介します。

ALT(GPT)

ALTとは、アラニンアミノ基転移酵素(アラニンアミノトランスフェラーゼ)と言い、GPTはグからルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼの頭文字をとっています。
ALTもGPTも呼び方は違いますが、同じ物質のことを示しており、最近はALTが一般的な名称です。

ALTは肝臓から分泌されるアミノ酸という酵素の代謝と深く関わっています。
ALTは肝臓だけではなく、腎臓などにも存在する物質ですが、健康体の場合は、血液中には基本的に存在しない物質です。

犬のALTの血液検査の正常値というのは20~70U/Lです。

このことからも血液中にALTが全く存在しないわけでないということが分かりますが、肝臓に何らかの障害がある場合は、肝臓からALTが漏れだして血液中に混じっているということになりますので、ALTの数値が高いときは肝臓に何らかの問題があり肝炎であるという可能性が高くなります。

ただし個体差があるので、正常値を超えても肝炎でないという場合もあります。
1000U/Lというような高い数値が出る場合は、かなり肝炎の症状が重いと考えられます。

AST(GOT)

ASTはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼと言い、GOTとは、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼの略です。最近ではASTという呼び名のほうが主流です。

主にアミノ酸の代謝に関わる酵素で、本来は、肝臓、心筋や骨格筋と言った筋肉、赤血球に多く含まれています。

ASTの正常値は20~50U/Lほどですが血液検査でこの正常値を下回る数値が出ても全く問題はありません。

個体差もありますが、正常範囲を超えて高い数値が出る場合は、肝臓や心筋、骨格筋、赤血球に多く含まれている成分ですので血液検査の数値が悪い場合は肝炎の疑いがあります。

獣医師はASTの値が高い場合、血液検査項目のALTの数値を確認します。

血液検査において、ALTよりもASTの方が高い場合やASTとALTの両方の値が高いという場合は、肝炎であるという疑いが高くなります。

ALKP

ALKPというのは、アルカリフォスファターゼのことですが、ALPと同じと考えていいでしょう。
肝臓、胆管、骨に疾患がある場合や、特定の薬物を使用した場合にも数値が高くなりますし、腫瘍や副腎皮質機能亢進症でも高くなります。

LDH5

LDHは酵素たんぱく質でブドウ糖がエネルギーへ変換される時に必要になる物質です。
LDHは全身の臓器や筋肉に含まれていますが、血液中にはほとんど存在することのない物質です。

血液検査でLDHが検出されるというのは、どこかの臓器内の細胞壁が破壊されることによって血液中にLDHが存在していると考えられることから、肝炎の発見の指標になる血液検査の項目となります。

LDHが血液中にあるというだけでは、どの臓器に異常があるか分からないのでLDHアイソザイム検査という検査を行いLDH5というタイプのLDHであると判明した場合には、肝硬変や肝機能障害、慢性肝炎などの疾患の疑いが高くなります。

犬の肝炎には急性と慢性がある

犬の肝炎には慢性肝炎急性肝炎があります!

肝炎には、数ヶ月から数年をかけて徐々に肝臓の機能が下がってくる慢性肝炎と、何らかの原因で肝臓の細胞が傷つくことで肝炎を発症し、急速に肝機能が下がってくる急性肝炎があります。

慢性肝炎は急性の肝炎を見過ごして放置して治療が遅れてしまったために炎症がそのまま残って徐々に時間をかけて機能が下がってきます。

慢性の場合は、肝炎であっても症状がはっきり出ませんが、急性肝炎の場合は急に元気がなくなり、嘔吐や下痢になったり、食欲がなくなり、目や歯ぐきなどが黄疸で黄色になります。

肝臓が出血すると血便が出たり、吐血をするといった明らかに異常な症状が出ますので飼い主なら愛犬の様子にすぐに気がつくはずですので、おかしいなと思ったらできるだけ早く動物病院に連れて行ってあげましょう。

急性肝炎の場合は進行も早いので、放置すると数週間以内に意識障害や昏睡状態になり命の危険もあります。

それでは、急性肝炎の原因と治療法、慢性肝炎の原因と治療法をそれぞれ見ていきましょう!

急性肝炎の原因

急性肝炎の原因は様々ですが、細菌やウィルスの感染や寄生虫によって肝臓に炎症を生じたり、犬には有害な水銀や麻酔薬や鎮痛薬やホルモン製剤、薬物の誤飲により肝臓にダメージを与えてしまうことで急性肝炎になることもあります。

また、化学物質やヒ素、水銀、銅などの有害物質が体内に入ることで肝臓がダメージを受けて急性肝炎になることもあります。

べトリントンテリア、ウェストハイランドホワイトテリア、スカイテリアという犬種は遺伝的に銅が体内に入った場合、解毒できずに体内に蓄積してしまうことによって急性肝炎を起こしやすい犬種です。

また、交通事故や怪我で外部からの強い刺激を受けて肝臓が損傷を受けた場合にも、急性肝炎になる可能性があります。

急性肝炎の治療法

急性肝炎の場合は、症状にはっきり現れますし、動物検査で各種検査を行うことによってはっきりした原因がある程度分かります。このため、急性肝炎はできるだけ早く症状の進行を遅らせるようにします。

原因がはっきりしている場合は、その原因を取り除くことが大切になってきますので、感染症などが原因している場合は、その感染症を治療します。肝炎の場合は肝臓に負担をかけないように安静にすることが大切ですし、肝臓に負担をかけない食事をあげることも大切です。
病院には、肝炎に適した療養のためのドッグフードもありますので、しっかり指示通りにあげてください。

急性肝炎は症状の進行が早く、肝性脳症になることもあるので肝性脳症の原因であるアンモニアを抑制する治療も行う場合があります。

慢性肝炎の原因

慢性肝炎の原因は、急性肝炎とは違って特定し難いものです。

急性肝炎を見過ごしてしまってその時の傷害が肝臓に残って徐々に肝機能が落ちてくる場合もありますし、同じように体の他の臓器の疾患の結果、肝機能が長時間をかけて下がってくる場合もあります。

また、長年に渡って銅やヒ素、水銀などの化学物質や鎮痛剤やホルモン剤などの薬品が原因でなることもあります。

遺伝的疾患によって慢性肝炎になることもよくあります。
アメリカンコッカースパニエル、イングリッシュコッカースパニエル、ドーベルマン、スカイテリア、スタンダードプードル、ラブラドールレトリバーなどは慢性肝炎になりやすい犬種です。

長年に渡る食生活が関係している場合もあります。

慢性肝炎の治療法

慢性肝炎の場合は、症状は突然悪くならないのでどの程度症状が進んでいるのかということや、肝機能がどの程度働くのかということを調べます。
肝臓と言う臓器は残念ながら治療薬がありません。

一度機能を失った肝臓は再び機能を正常な働きをするようにはならないので、治療法はこれ以上肝臓の機能を下げないための対処療法になります。

もし慢性肝炎でもはっきりとした原因となる疾患がある場合は、その疾患の治療も並行して行います。
失われた肝機能を補うために薬物治療や肝臓に栄養を与える食事療法を行います。

肝炎になった場合の余命は?

急性肝炎の場合で、発見が早く治療を早急に開始した場合は病気は完治することも多いのですが、急性肝炎でも対応が遅れた場合や放置した場合は、数週間で肝硬変、肝性脳症になって命を落とすこともあります。

慢性肝炎の場合は、症状の進行が比較的遅いので余命には個体差があります。

肝炎の犬の食事は?

肝炎の愛犬には肝臓に負担をかけない食事をあげることが大切です。

体に栄養を蓄えられないと栄養失調になるので充分にエネルギーや栄養素があることが大切ですし、解毒作用が弱まっているのでできるだけ自然素材で保存料などが入っていないものが良いでしょう。
食欲がなくなってしまっている場合は、食事の回数を複数回にしてこまめに栄養をとれるようにします。


また、良質のたんぱく質を与える必要があります。
肝臓に良い食べものは納豆、ゴマ、白身魚、パセリなどですが、毎回手作りの食事を用意するのも飼い主にとって負担になるので、肝炎の犬が食べるためのドッグフードを利用すると良いでしょう。

肝炎の犬のためのドッグフードは、高たんぱく低脂肪で添加物が少ないというのが特徴です。
肝臓病用に専門に開発された愛犬用のドッグフードもあるので是非利用してみましょう。

まとめ

獣医師・宿南章

肝臓という臓器は沈黙の臓器で、肝臓に疾患があっても初期の段階ではなかなかはっきりした症状が出ませんので早期発見が難しいのが問題です。

犬の肝臓は様々な働きがあり、肝炎になると生命維持に関わる機能を失う可能性があるので飼い主さんは日頃から気をつけてあげることが大切です。

愛犬の肝炎を早期発見、早期治療を行うためにも定期的に動物病院で健康チェックを行うようにしましょう。

犬の肝炎

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獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

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記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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