犬によく見られるのがノミアレルギーです。
愛犬が背中からお尻の辺りまでに湿疹で赤くなったり、痒がったりするとノミアレルギーの可能性があります。
ノミは小さな虫ですが、犬の皮膚から血を吸い取る時に唾液を注入します。
そして、ノミの唾液にアレルギー反応を起こした犬がノミアレルギーの皮膚炎を起こします。
最近、愛犬が体をかゆそうにしている、壁に体をこすり付けている・・・という場合、愛犬がノミアレルギーに感染しているかもしれません。
季節を問わず、一年中あるノミアレルギーですが、放置すると膿皮症などの重症な病気の引き金にもなりますので注意が必要です。
ノミアレルギーは何が原因で起こるのか、症状とはどんなものか、またどんな治療法や予防法があるのかをご紹介しますので、しっかり飼い主さんが知識として知っておきましょう。
ノミアレルギーの主な症状
ノミアレルギーには以下の症状が見られます。
愛犬に次のような症状がないか、確認してみましょう。
- 毛が落ちる
- 赤い湿疹が出る
- 体が痒そうにする
- 掻きむしって二次感染を起こす
- 色素沈着
- 皮膚の肥厚
- 寝不足によるストレス
- 貧血
もっと各症状について詳しく見ていきましょう!
毛が落ちる
背中からお尻やしっぽのあたりの毛が落ちます。
毛が落ちる程度の場合から、完全に部分的に毛が全部落ちてしまい、皮膚がむき出しになってしまうこともあります。
赤い湿疹が出る
ノミは背中、特に腰からしっぽの辺りに寄生しやすく、アレルギー反応を起こすと赤い小さな発疹や蕁麻疹が出ます。
発疹が出ると、とても痒がることもあり、掻きむしってしまいます。
体が痒そうにする
ノミの唾液にアレルギー反応を起こすと、とても痒がります。
痒いので最初は舐めたりしていますが、徐々に痒みが酷くなると一日中体を掻きむしったり、自分を噛んだりして皮膚を傷つけてしまいます。
掻きむしって二次感染を起こす
痒みが強いと自分で強く掻いたり、噛んだりして痒みを紛らわそうとしますが、長時間強く掻いたりして皮膚を刺激するので皮膚が傷ついて出血してしまいます。
皮膚の掻き傷から細菌に感染し、症状は更に重くなります。
色素沈着
強い痒みがあると、長期間自分で皮膚を傷つけて掻くことで皮膚の色が変化して色素沈着します。
ノミアレルギーが慢性化すると色素沈着になりやすく、一旦色素沈着してしまうと、なかなか元の状態にはなりません。
皮膚の肥厚
痒みを抑えるために、強く皮膚を刺激することを長時間行っていると、皮膚の組織がだんだん厚くなってきます。
このため、掻いた部分だけ皮膚が厚くなってしまいます。
寝不足によるストレス
痒みが24時間ずっと続くと、睡眠不足になります。
睡眠不足になると疲れがとれず、ストレスがたまってきます。
貧血
ノミは寄生して、血を吸い取ります。
愛犬の体にノミが大量発生していると、血を大量に吸われるので貧血状態になります。
ノミアレルギーが重症化するとなる病気
ノミアレルギーは気付かずに放置してしまうとよりひどい病気になってしまうことがあるので、注意が必要です。
重症化した場合どのような病気になってしまうのでしょうか?
膿皮症を引き起こす
強い痒みのために、愛犬が自分の皮膚を強く掻きむしったりすることで皮膚に傷ができ、その傷から細菌感染することによって起こるのが膿皮症です。
皮膚が赤くなったり、脱毛やぶつぶつした発疹が出たりします。また、膿疱やかさぶたができる場合もあります。
膿皮症は細菌の感染が浅いか深いかということで症状も変わってきますが、感染が深いと腫れて痛みが出たり、発熱することもあります。

条虫症になる
条虫病は寄生虫が愛犬の体内に入ることで感染して発症するものですが、ノミアレルギーの原因となるノミに条虫が寄生しているので、愛犬にノミが寄生していると口の中からノミが体内に入り感染します。
感染すると下痢や食欲不振などの症状が起こります。
犬のノミアレルギーの原因は?
このような症状があり、他の病気を併発する可能性のあるノミアレルギーですが、その原因には何が疑われるのでしょうか?
ノミにかまれる
ノミは愛犬に寄生すると血を吸うために体をかみます。
ノミが吸血のために愛犬の体をかむ時に、ノミの唾液に含まれるアレルギー物質が愛犬の体内入り、アレルギー反応が起こることでノミアレルギー皮膚炎の症状が出ます。
アレルギー反応とは外部からの物質に体が免疫反応を強く起こしてしまうことです。
アレルギー反応を起こす物質のことをアレルゲン(抗原)といいますが、ノミアレルギーの場合のアレルゲンは、飲みの唾液と糞です。
ノミの唾液や糞には、アレルギーの原因である低分子のハプテンや血管を拡張するヒスタミンが含まれているので皮膚が痒くなります。
ノミは主に愛犬の皮膚に寄生し、吸血する時にアレルゲンが体内に入ることでノミアレルギーを引き起こしますが、アレルゲンとの接触が15~30分以内にアレルギーを引き起こすものもありますし、数時間以上経ってからアレルギー反応を起こすこともあり、個体差があります。
他のアレルギーを発症している
ノミアレルギーだけでなく、食べ物アレルギーやアトピー性皮膚炎など他のアレルギーやアトピー体質を持っている弱い愛犬は、ノミにかまれることでノミアレルギーを発症してしまうことが多い傾向にあります。
犬には大敵!そもそもノミってどんな虫?
ノミは犬だけでなくいろいろな動物の皮膚に寄生します。
皮膚に寄生するので外部寄生虫と呼ばれますが、皮膚から血を吸うことで栄養を摂り繁殖していきます。
ノミにもいろいろな種類がありますが、日本国内で犬に寄生するノミはイヌノミとネコノミです。
これらのノミは肉眼で確認できますが、体長が1~2ミリメートルほどあり、平べったくて、赤褐色で、脚が6本あります。
ノミは愛犬から出る体温や二酸化炭素に反応して近寄ってきて寄生します。
また、愛犬のフケや食べこぼしなどにも反応して近づいてきます。
ジャンプ力が非常に強いので少し離れたところからでもジャンプして体に寄生します。
ノミの成虫は愛犬に寄生すると卵を産みつけます。
しかし、ノミの卵はつるつるしているために犬の体から滑り落ちてしまいます。
すべり落ちた卵は犬や猫の寝床など温度や湿度が生息に適した場所で成長し、卵が幼虫、さなぎ、成虫と脱皮を繰り返しながら成長していきます。
ノミは卵から1週間ほどで孵化し、犬の体に飛び移って寄生するのです。
成虫が愛犬の体に寄生すると血を吸い、また2日ほどで愛犬の体に卵を産み付けます。
産卵すると血を吸い寄生しながら産卵を繰り返しますが、成虫になってから1~2ヶ月ほど命です。
1個体の寿命は短いのですが、その間も産み落とした卵がどんどん成長して成虫が体の中に寄生し続けることになります。
どこでノミがつくの?
犬にノミが寄生しやすい場所はやはり屋外です。
特に、山や林の中や川原などに自然の中愛犬を連れて行く際はノミが寄生しやすい場所であることを知っておきましょう。
日常の散歩途中にもノミが隠れている場所がたくさんあります。
例えば、公園や道端の茂み、庭にも多くのノミがいます。
また、野良猫の通り道などにはノミが大量に発生していることも多くあります。
家の中でも物置や犬小屋、犬が使っている毛布、ラグ、たたみ、カーペット、ソファーなどにはノミが寄生しやすい場所になります。
犬の周囲にノミが寄生しないようにこまめに掃除機をかけたり、洗濯をしてノミの生息し難い環境を作りましょう。
ノミのサイクル
ノミの成長サイクルについても知っておきましょう。
白くて砂粒よりも小さいがよく見ると愛犬の毛の中についているのが分かります。
愛犬が体を動かすと下に落ちる程度の強さで体毛についていますので、卵は体表からすぐに落ちてしまいます。
地面に落ちた卵をそのままにしておくと再び愛犬の体毛につき寄生しますので注意しましょう。
卵の生息期間は2日から2週間と長いですが、その時の温度や湿度が孵化に適温になると孵化します。
光が嫌いなので、外部には出てきません。
部屋の中でもじゅうたんの下などに入り込んでいます。
成虫から出る糞に含まれる成分をエサに成長していきます。
生息期間は5日から20日間ほどです。
体表が粘着質になっているので一旦くっつくとなかなか離れない性質を持っています。
生息期間は数日から数週間ですが、環境が孵化に適応しない場合は、数年さなぎのままでいることもあります。
主に愛犬の体温や振動、二酸化炭素などが孵化に影響しています。
孵化して成虫になると数時間で血を吸うようになります。
また、数日で産卵し、1日40個ほどの卵を産みます。
湿度が高く、気温が20~30度ほどの環境を好みます。
卵は1~2ミリほどで褐色です。
犬のノミアレルギーの治療法
ノミアレルギーを発症してしまった場合、その症状に適した治療が必要となります。
ノミアレルギーの治療法を見ていくことにしましょう。
ノミの駆除薬を投与する(滴下式)
ノミアレルギーを治すためには、アレルゲン物質を持っているノミを駆除することが大切です。
ノミを駆除するための薬剤がありますのでできるだけ早くに薬剤を投与してください。
ノミを駆除する薬剤は様々な形状のものがありますが、最近ではスポットタイプといわれる滴下式の薬剤が使用しやすいので人気があります。代表的な薬として、フロントラインやアドバンテージがあります。
これらのノミ駆除薬は体内には吸収されずに体の表面だけに作用するので有害性もありません。
このため、犬だけでなく人間や猫に対しても安心な薬と言えます。
また、有効性に関してもノミの成虫のほぼ全部確実に駆除できると言われています。
滴下式のノミ駆除薬は愛犬の皮膚に直接垂らし、体表に寄生したノミがその成分の有毒成分によって死にます。
滴式の駆除薬はノミが愛犬の血を吸うまでに駆除できる可能性が高いので、アレルゲンが体内に入る前にノミを駆除できます。
アレルゲンが体内に入らないのでノミアレルギーを発症しません。
ただし、皮膚に駆除薬を塗っているので、愛犬を洗ったり、シャンプーしてしまうとその効力が下がってしまいます。
薬を投与してから24時間以内にはノミの駆除ができるという報告がありますが時間がかかりすぎるということや、体の部位によっては効果が出にくいこともあります。
ノミ駆除薬
代表的なノミ駆除薬、フロントラインとアドバンデージについてご説明します。
フロントライン(メリアル全薬)
フロントラインの主成分はフィプロニルです。
油との相性が良いので全身にしっかりと付着するので効果を長期間持続させることができます。
滴下式だけでなくスプレー式のものもありますが、効果は同じです。
効果の持続時間がスプレー式の方が長くなります。
全身に分布したフロントラインは皮膚の皮脂腺の油にも溶け込みます。
皮脂が体に分泌される時に一緒に体表に出て行くことで効果を持続することができます。
ノミ駆除だけでなく、ダニが寄生するのを防ぐこともできます。
アドバンテージ(バイエル)
アドバンテージは犬の肩甲部に垂らしてノミの寄生を予防します。
主な成分はイミダクロプリドで、この成分に触れたノミは徐々に弱って死んでいくので、寄生していても吸血する可能性が低いとされています。
ノミの駆除薬を投与する(経口投与剤)
錠剤で口から飲ませるノミの駆除薬もあります。
愛犬にノミの駆除薬を服用させると愛犬の血液にノミの有毒成分を含ませます。
有毒成分を含んだ血液を吸ったノミが死滅するという仕組みです。
血液に有効成分が混じるので体の隅々にまで有毒成分がいくのでノミの駆除が早く確実に行えることがメリットですが、ノミにかまれるときに有毒成分をノミに与えるのでアレルゲンであるノミの唾液が体内に入ってしまうことが難点です。
アレルゲンが体内に入ることでノミアレルギーを発症するリスクが高まります。
また、寄生している成虫を駆除することはできますが、卵、幼虫、さなぎの期間は吸血しないので有毒成分で駆除することができません。
予防を心掛けよう
ノミアレルギーを発症しないためには、ノミを体につけないことが一番です。
愛犬がノミにかまれる前に、ノミアレルギーにならないように普段から予防として体にノミがついていないかマメにチェックすることが大切です。
もし肉眼でノミが確認できたら、できるだけ早くノミを取り除き、他に卵や幼虫、さなぎがいないかもチェックします。
少なくとも1ヶ月に1回はしっかり体中をチェックし、異常があれば早めに病院に連れて行って早急にノミの駆除を行ってあげましょう。予防の観点からも、ノミのチェックはマメに行い、継続して行うことが大切です。
ノミの予防薬もありますのでそれらを利用するのもよい方法です。
予防の為に以下のような事を心がけましょう!
- 室内のノミ駆除を並行して行う
- 感染していない愛犬や愛猫がいる場合も同じように駆除する
- 散歩に行った後のチェック
- 食べ物も注意する
- 室内のノミ駆除を並行して行う
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ノミは肉眼で見えますし、愛犬の体にノミを見つけたらすぐに駆除することが大切ですが、体毛に付着していたノミは卵、幼虫、さなぎ、成虫にいたるまで簡単に皮膚から落ちて、部屋のじゅうたんの下などに移動します。
そのように部屋に落ちたノミはまた簡単に犬の体に付着することができますし、成虫にいたっては自分の体調の100倍ほどのジャンプ力をもって犬の体に付着します。
このような事態を避けるためにも、愛犬の通る場所、家の中の居場所などをマメに掃除してノミがいない環境を維持してあげることが大切です。
掃除機でマメに掃除し、カーペットやソファー、ベッドなどはノミが好んで生息しますので常に清潔にしましょう。 - 感染していない愛犬や愛猫がいる場合も同じように駆除する
-
ノミは犬だけでなく、人間を含めいろいろな動物に寄生します。
そのため、家の中で複数の動物などを飼っている場合は、一匹にノミが認められたら、その他複数の動物にも既に寄生しているかもしれないと疑って、しっかりチェックすることが大切です。
- 散歩に行った後のチェック
-
ノミが寄生するタイミングは室内だけではありません。
散歩先、外出先でもノミが体についてしまうことは充分考えられます。
散歩から帰ってきたらできるだけマメにノミがついていないかチェックしてあげましょう。
見つけたらできるだけ早くにノミを取ってあげることが大切です。 - 食べ物も注意する
-
ノミアレルギーは体に寄生することでも発症しますが、口からノミが入ることでも感染する危険があります。
食べ残しなどにノミが寄生する場合も多いので愛犬が口にするドッグフードなども注意して管理することが大切です。
食べ残しをそのままにしないようにしましょう。
ノミアレルギーは一旦発症すると繰り返し発症するので要注意!
ノミアレルギーを一度発症した愛犬は、ノミを駆除してもまたノミに寄生されるとノミアレルギーを発症しやすい体質になり、一生涯ノミアレルギーにかかりやすい状況になります。
何度もノミアレルギーを発症させないためにも、ノミアレルギー皮膚炎になる前にしっかりノミを駆除してあげてください。
まとめ
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ノミアレルギーは犬が感染する皮膚炎では非常に多い病気です。
ノミは生活環境のあらゆる場所に生息していますし、少し離れた場所からでも簡単に体に飛んでついてきます。
ノミアレルギーを引き起こすと痒みがでるので、愛犬が体を痒がったり、掻いたりするなと思ったら、すぐに体にノミが寄生していないかチェックしましょう。
もし、ノミが寄生していたら、できるだけ早く病院に連れて行って薬などを投与し、ノミを駆除してあげましょう。
ノミを寄生させないために部屋を清潔に掃除したり、ドッグフードの食べ残しなどにも注意してみることも大切です。
飼い主の気配りでノミアレルギーにならないよう気を付けてあげましょう。