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犬の皮膚糸状菌症は人にも感染る!?症状や治療、予防法

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人間にも犬にも起きる皮膚のトラブルは、痛みや痒みが長引いたり治るのに時間がかかったりして厄介なものです。あなたの愛犬は身体をしきりに掻いたり、足先をやたらと舐めたりしていませんか?もしかしたら、それは皮膚トラブルを抱えている可能性があります。

身体の一部が赤くなっていたり毛が抜けたりしていないか、身体中をくまなく確認してみましょう。ここでは犬の皮膚病の中のひとつである「皮膚糸状菌症」についてご説明していきます。

人間にもうつる皮膚病ですので、原因や症状、治療法と予防法をしっかり覚えておきましょう。

目次

犬が「皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう)」になる原因は?

皮膚糸状菌症とは、皮膚糸状菌という真菌(カビ)が皮膚に生えてしまうことで起きる皮膚炎のことです。皮膚糸状菌は、その形態から白癬菌属・小胞子菌属・表皮菌属に分けられており、犬や猫に寄生するのは小胞子菌属になります。犬に寄生するものは「イヌ小胞子菌」、猫に寄生するものは「ネコ小胞子菌」と呼ばれる菌です。

また、皮膚糸状菌は人間にも感染します。人間に感染した場合はその部位によって呼び名が変わり「白癬菌」となります。いわゆる水虫の原因です。つまり、犬の皮膚糸状菌症も同じで「犬の水虫」ということなのです。

 

犬の皮膚糸状菌症の感染経路は?

皮膚糸状菌症は人獣共通感染症(ズーノーシス)の一つで、接触感染によって犬から人間にうつる場合もあれば人間から犬にうつる場合もあります。飼い主さんや家族の誰かが水虫(白癬菌)になっていたり、逆に愛犬が皮膚糸状菌症にかかっていれば、スキンシップなどからお互いにうつしてしまうこともあります。

ですが、犬の皮膚糸状菌症の多くはペットショップなどで仔犬のときに感染するケースが多いようです。皮膚糸状菌に感染している他の犬などと接触することでうつってしまうのです。また、土の中には「石膏小胞子菌」という菌がたくさん潜んでいますので、穴掘りが大好きな犬は感染する可能性が高くなります。

とはいえ、健康な成犬であれば発症することはそう多くありません。ただ仔犬や高齢の犬、免疫力が低下している犬などは注意する必要があります。

皮膚糸状菌症は、命に関わるような危険性は低いのですが感染力は強く、人間から犬に感染した場合には激しい炎症が生じますので気をつけましょう。

 

犬の皮膚糸状菌症の症状とは?

皮膚糸状菌症の初期段階では、フケや湿疹などが見られることもありますが、痒みはほとんどありません。細菌感染を起こすと痒みが出るようになり、顔や目のまわり、耳や脚、皮膚の柔らかい部分などに斑点や脱毛が現れるようになって、痒さから脱毛している部分を掻くようになります。

症状が進んでいくと、赤くて大きな湿疹(丘疹)ができていき丸く円形状に脱毛が広がっていきます。円形脱毛の範囲は少しずつ大きくなって、その周囲の毛はちょっとつまんだだけでも簡単に抜けてしまい、遠目にも毛がある部分と抜けている部分の見分けがつくほどです。毛が抜けてしまった部分は、赤くなってフケが出たり膿や水疱が出来たり、かさぶたになることもあります。

皮膚糸状菌症は、治療をせずに放っておいても時間が経てば症状は落ち着きます。そのため治ったのだと安心してしまいがちですが、決して完治したわけではありません。菌は犬の身体に潜んだまま、ひそかに繁殖しているのです。そして他の生き物に寄生する機会を狙っています。

 

人間の皮膚糸状菌症(白癬菌)の症状とは?

白癬菌のカビは皮膚の層の中でも浅い部分での増殖によって発症しますが、角層の下の方に増殖するまでは痒みなどの症状が出てきません。ですから、痒みがあるということは皮膚の層の深くまで増殖が進行しているということです。

そして人間の白癬菌でも、症状は犬と同じです。顔や頬、腕や足などに痒みを伴う赤く丸い湿疹ができて、場所によっては脱毛する場合もあり、水ぶくれが出来ることもあります。白癬菌はケラチンというタンパク質を栄養源とする菌ですので、ケラチンが多く存在する場所ならば、足・股・頭髪・爪・顔・手とどこにでも寄生します。

また、家族の中で白癬菌に感染している人が一人でもいると、その人が感染源となって他の人やペットにまで広がってしまいます。もちろん、菌に接触したからといってすぐに感染したり発症するわけではありません。通常であれば皮膚が持っている免疫力によって守られます。

ですが、あまりにも頻繁に菌と接触していて洗い流されることがなかったり、免疫力が著しく低下している状態では、菌が皮膚内部へ侵入するのを許してしまうことになります。

 

犬の皮膚糸状菌症の診断

愛犬が皮膚を痒がったり、円形脱毛の症状が見受けられるようなら、とにかく動物病院で診察してもらいましょう。

動物病院では、発疹が起きている部分の表皮から剥がれ落ちたフケのようなものを採取して顕微鏡検査をします。そこで皮膚糸状菌が確認されれば皮膚糸状菌症と診断されます。場合によっては培養して確認することもあります。

 

犬の皮膚糸状菌症の治療

菌の特定ができたら、抗真菌薬による治療を始めるために患部の毛をカットします。フケや脱毛などの症状が出ている部分以外にも菌が生息している可能性があるため、なるべく広範囲にわたって毛を刈ります。

そして抗真菌薬が配合された薬用シャンプーによって患部を清潔にし、同じく抗真菌薬配合の塗り薬を塗って治療していくことになります。治療期間は数ヶ月ほどと長期になりますが、獣医師の指示を守って根気よく治していきましょう。

皮膚糸状菌症は皮膚の層の深くで繁殖しますので、表面の皮膚はキレイに治ったように見えても、皮膚の奥にはまだ菌が潜んでいます。油断をするとすぐに再発してしまうので、素人判断で勝手に薬を中断してしまわないようにしましょう。

なお、症状が重度の場合や塗り薬だけでは不充分と判断された場合には、抗真菌薬の飲み薬が出されることもあります。この場合も、たとえ症状が治まったように見えても必ず処方された分すべてを飲ませ切ってください。獣医師に完治したと診断をもらうまでは、しっかり治療を続けましょう。

ちなみに、愛犬から人間に感染したり、人間から愛犬に感染した時は、必ずどちらも並行して治療を行う必要があります。片方だけが完治しても、また感染する危険性は高いままです。同時進行で治療して、部屋の掃除や除菌も徹底的に行って、家の中に潜んでいる菌もキレイに取り除いてしまいましょう。

 

犬の皮膚糸状菌症の対策とは?

他の動物との接触を避ける

皮膚糸状菌症は接触感染によって起こりますので、対策としては他の動物との不用意な接触を避けて、菌をもらわないようにすることがまず第一です。散歩で他の犬に会っても必要以上に接触させない、山登りなどで野生動物と接触しないよう気をつけるなど、飼い主さんが注意してあげてください。

また、公園や動物園の「ふれあいコーナー」などで飼い主さんが動物に触った場合、もしその動物が感染していて触った手を洗わないまま愛犬に触れてしまったら、飼い主さんを通して愛犬が感染する可能性も出てきます。

感染予防の手段として、動物を触った後は必ず手を洗う習慣をつけましょう。皮膚糸状菌は、石けんを使ってキレイに洗い流せば皮膚に残ることはありません。いつも清潔な状態にしておくことで、愛犬も飼い主さん自身も感染から身を守ることができるのです。

 

水虫(白癬菌)になっている人は自分専用のスリッパを履く

家の中でも感染しないように気をつける必要があります。家族の一人が水虫になっていたら、他の家族や愛犬にも感染する危険性があるためです。

たとえば感染した人が裸足で家の中を歩き回ったら、感染した人の足にいる白癬菌は家中にバラまかれることになります。カーペットや座布団などに付着した菌が他の家族や愛犬に接触感染して、被害が拡大してしまうのです。

とくにカーペットで寝転ぶ愛犬がいる場合など、水虫になっている人は常に自分専用のスリッパを履くよう意識する必要があります。足ふきマットも別にしましょう。そして、病院で治療を受けることを最優先してください。

 

犬の皮膚糸状菌症を予防するには?

シャンプーやトリミングを定期的に行う

犬の毛は人間の洋服と同じで、空気中の汚れや臭いが付着して汚れていきます。洋服ならば全部着替えてしまえばいいのですが、犬の毛はそうはいきません。洋服を洗うように、愛犬も定期的にシャンプーしてあげましょう。何か月も汚れたままでは、臭いがきつくなり毛もボサボサになってしまいます。風通しが悪くなって肌にも悪い影響を与え、皮膚病の原因となってしまうことも多々あります。見た目がキレイになるというだけでなく、愛犬の健康を維持するためにもシャンプーは必要なのです。

犬種によって多少の違いはありますが、平均的に月に1~2回のシャンプーを目安としましょう。自宅で飼い主さんが洗ってあげてもいいですし、トリミングサロンなどでトリマーさんにお願いするのもいいでしょう。トリマーさんはトリミングのプロですので、しこりや発疹など皮膚の異常も早期発見してくれます。

普段は自宅でシャンプーをしている飼い主さんも、定期健診のような感覚でたまにお願いするのもいいですね。

 

免疫力を上げる

実は皮膚糸状菌とはそもそも皮膚上に存在している常在微生物です。それでも多くの犬や人間が感染していないというのは、皮膚に備わっている免疫機能が有害なものを体内に侵入させないようバリアを張って守っているからなのです。ですから健康体であれば簡単に感染することはありません。

ところが、皮膚の免疫機能が低下して抵抗力がなくなると、菌は皮膚の奥まで侵入して一気に繁殖してしまいます。皮膚の免疫機能が低下しないよう、もっと免疫力がアップするように生活習慣を見直していきましょう。

 

日光浴

愛犬にとっての日光浴は、人間と同じようにとても重要なことです。太陽光には、幸せホルモンであるセロトニンや若返りホルモンである成長ホルモンの分泌を促す働きがあり、何よりも免疫力を高めるビタミンDを体内で合成するには太陽光が必要不可欠だからです。そして太陽光に含まれる紫外線には殺菌効果もあります。皮膚病の改善や予防にも効果が期待できるというわけです。

また、犬は猫のように夜行性ではありませんので、日光浴によって体内リズムを整えることもできます。規則正しい生活は、人間だけでなく愛犬の免疫力も上げてくれます。

 

毎日の食事

犬は、植物性タンパク質よりも動物性タンパク質の方が消化しやすいのですが、ドッグフードの中には犬が消化しにくい植物性タンパク質を多く含んでいるものもあります。消化できずに消化不良を起こしてしまうと、免疫細胞の主原料であるタンパク質を取り込むことができずに免疫力が下がってしまう原因にもなりかねません。

愛犬には、お肉などから良質なたんぱく質を取り入れてあげたり、消化しやすい動物性タンパク質を多く含んでいる無添加のドッグフードを選んで与えましょう。普段から与えているジャーキーなどのオヤツも一度見直してみる必要があります。

また、サプリメントなどをうまく利用して腸内環境を整えるのも免疫力アップには効果的です。

 

適度な運動

免疫力が低下してしまう最大の原因はストレスです。不充分な散歩や飼い主さんとのコミュニケーション不足は、愛犬に大きなストレスを与えてしまいます。

毎日、たとえ短時間でも一緒に散歩をしてあげてください。散歩で外の世界に触れることはストレス発散になりますし、歩くことで足腰が鍛えられ、骨や筋肉の形成にもつながって基礎代謝が上がります。散歩する時間があまり取れなくて運動量が足りないと感じた時は、室内で一緒に遊んであげましょう。

ボールを投げて遊ぶスペースがなくても、ロープの引っ張りっこだけでもOKです。運動不足とコミュニケーション不足の両方が一気に解消されます。

 

まとめ

犬の皮膚糸状菌症は、皮膚糸状菌という菌が感染することによって起きる皮膚病です。命に関わったり重症化することはまずありませんが、痒みがあったり円形状に毛が抜けたりという症状があって、なかなか完治しない厄介な病気といえます。悪化してしまうと治療はさらに長引き、人間に接触感染する可能性も高くなってきます。

愛犬にとっても大きなストレスとなってしまいますので、疑わしい発疹があったり身体を痒がる素振りがあれば、放っておかずに早目に動物病院で診察を受けましょう。

もし愛犬から家族に接触感染してしまったら、感染した人も並行して治療を始めてください。同時進行で治療して、家庭内から菌を根絶しましょう。

犬の皮膚糸状菌症

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獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

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記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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