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犬のアカラス(ニキビダニ・毛包虫症)の症状・原因と治療法とは?

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愛犬の目や口周り、足先などに脱毛や皮膚の黒ずみ、膿疱(のうほう)と呼ばれる水膨れのようなものがありませんか?
もしかしたら、その症状はアカラス(ニキビダニ・毛包虫症)かもしれません。
アカラスは気が付くと病変が全身に広がったり、または二次感染を起こす危険性のある皮膚疾患です。
ここではアカラスの症状から治療法なども紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

アカラスとは?

アカラスは毛包虫、デモテックスと呼ばれるニキビダニが寄生して発症する皮膚炎です。
犬の毛包や皮脂腺に寄生するのですが、健康な犬にも少なからず存在する寄生虫です。


もちろん私たち人間をはじめ哺乳類の多くに常在しています。
マダニなどと異なり、サイズが0.3㎜ととても小さいため、目で確認することができないという特徴があります。

卵からかえり、幼虫、若虫、成虫と成長する過程をすべて同じ宿主の皮膚で過ごすため、一度症状を発症してしまうと、その数を抑えることは難しくなります。
そんな恐ろしいアカラスの症状について見てみましょう。

アカラスの症状とは?

獣医師・宿南章

アカラスの主な症状は脱毛です。

症状
初期段階

初期段階ではかゆみなどもなく、目や口の周り、下あごや頭、前足などに小さな脱毛が見られます。
また、軽い赤みやフケが見られることもあります。
やがて、皮膚炎の原因となるニキビダニが全身に広がり始めると、全身のあちこちが脱毛し、膿疱が見つかるようになります。

症状
さらに症状が進むと

さらに症状が進むと、膿疱はさらにたくさん発見されるようになり、皮膚がただれ始め、膿皮症に移行するケースも多くなっています。
化膿が見られるため、細菌などの二次感染を発症してしまうことも多く、こうなると治療は困難を極めます。
この頃には皮膚の表面がなくなり、皮下組織がむき出しの状態になったり、かさぶたができたりと、犬もひどいかゆみや痛みを伴うことになります。

症状がいったん悪化してしまうと長く根気のいる治療が必要になってきますので、そうなる前に、飼い主さんができるだけ早く発見し、治療してあげることが大切です。

アカラスを発症しやすい時期とは?

アカラスは、母体から感染することが多いため、生後4か月から9か月の子犬に多く見られます。
成犬になってから始めて発症することは少なく、子犬から成犬に成長する段階で見つかることが多くなっています。

また、老犬にも発症が見られる病気です。
老犬は糖尿病などの病気を持っていることも多く、また基礎疾患である免疫力や体力も衰えていることが多いため、アカラスを比較的発症してしまうことが多くなっています。

アカラスの原因とは?

アカラスは寄生虫であるダニの一つであるため、他の犬と接触することで感染します。
ですが、アカラスを発症する多くの犬がアカラスに感染した母親と接触することで感染しています。
母親から母乳をもらう際にニキビダニが子犬の体に移行してしまっている
のです。

この原因だけ見てみると、「それなら子犬を飼った時点で感染が判別できるのでは?」と思いますし、「アカラスに感染した母親の子なら発症は防ぎようがない」と思うかもしれませんが、アカラスが寄生しても、必ず発症が見られると言う訳ではありません。
多くの犬がアカラスに感染していても問題なく、普通に暮らしていくことができています。

人と接触しても犬には犬の、人には人のニキビダニが寄生しているため、種を超えて繁殖することもなく、大きな問題にはならないのです。
では、なぜアカラスを発症する子としない子がいるのでしょうか?
それが以下のような事が原因と考えられます。

  • 発育不全
  • 遺伝
  • 免疫不全
  • ホルモン異常
  • ストレス、加齢など

それでは、それぞれについて詳しく見ていきましょう!

発育不全

常在菌とも言えるアカラスは健康な子犬では発症も見られませんが、赤ちゃんの時に発育状態が悪かったり、栄養状態に偏りがある場合など発育不良が見られると発症するケースが目立ちます。
こうした成長の悪さは基礎代謝にも大きな影響を及ぼしますので、体力や免疫力が十分とは言えないことも多く、症状が出てしまうのではないかと考えられています。

遺伝

また、遺伝的要因も発症の理由の一つとして考えられています。
犬種などによって発症が多い場合と、そうでない場合があるからです。
免疫力なども母親、父親から受け継がれるものですから、やはり遺伝的なものは原因の一つと言えるかもしれません。

アカラス発症が見られやすい犬種
  • スコティッシュ・テリア
  • ボストン・テリア
  • エアデール・テリア
  • ウェスト・ハイランド・テリア
  • コリー
  • シェットランドシープドッグ
  • ブルドッグ
  • パグ
  • チャイニーズ・シャーペイ
  • アフガン・ハウンド
  • ワイマラナー

などの犬種は遺伝的要因から発症が多く確認されています。
愛犬が上記の犬種と言う場合には、特に初期症状の脱毛がないかなど定期的に観察するようにしましょう。

免疫不全

アトピー性皮膚炎を持っている場合や糖尿病、腫瘍、自己免疫疾患を患っている場合などにも発症が見られることがあります。
こうした病気を患っている犬の場合、体力が落ち込んでいるだけでなく、免疫不全を患っていることも多く、また治療のために免疫抑制剤の投与を行っているために肌のバリア機能や、ニキビダニから体を守る免疫機能が十分に働いていません。
そのため突如として発症するケースが多く確認されています。

ホルモン異常

ホルモンの異常もその理由の一つと言えます。
アカラス発症の多い、生後4か月から9か月の成熟期は、特に性ホルモンが急増する時期でもあり、症例も多く見られるからです。
また、副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症を患っている場合にも発症例が多く、これらの病気に主に関係しているのがホルモンの異常であるため、ホルモンも発症に深く関係しているのではないかと考えられています。

ストレス、加齢など

病気や基礎疾患と言う訳ではありませんが、ストレスが溜まっている犬や老犬にもアカラスの発症が見られることがあります。
ストレスは、犬の免疫機能を低下させてしまいますし、老犬の場合、体力だけでなく、体の免疫機能、ホルモンの分泌も衰えてくるため、ストレスをためること、老いることも原因の一つではないかと思われます。

アカラスの診断方法は

アカラスかもしれないと疑った場合には、動物病院に言って正確に病名を判断してもらうことになりますが、その場合医師は特徴的な皮膚の状態の視診と顕微鏡で直接確認を行うことでニキビダニが存在しているかどうか判断していきます。

毛包の中に存在するニキビダニを確認する「抜毛検査」や皮膚を削り、組織を採取して行う「掻爬検査」が主な検査方法となっています。

ただし、ニキビダニは皮膚表面だけの検査ではなかなか発見されないことも多く、ニキビ状の膿がたまった患部を削って検査を行う方法が一番確実に診断できます。
初期の場合、発見が難しいこともありますので、医師の判断に任せてください。

アカラスの治療法は?

アカラスの治療法は、主に以下の3つです。

  • 経過観察
  • 殺ダニ剤で薬浴
  • フィラリア予防薬の投与
  • 抗生剤の使用

では順にみていきます。

経過観察

子犬に見られる局所的なアカラスの場合には、経過観察で治療を始めるのが一般的です。
おおよそ90%の子犬が、6週間から8週間で治癒することが多いためです。
サルファサリチル酸シャンプーの洗浄を行うだけでとりあえず経過観察を行っていくことが多くなっています。
このシャンプー治療での治癒効果は50%程です。

殺ダニ剤で薬浴

殺ダニ剤アミトラズと言う薬剤を用いて、2週間に1度の薬浴を行っていきます。
毛穴が詰まっていると十分に薬の効果が得られないため、前日に角質溶解シャンプーを用いて皮膚の洗浄を行い、薬浴治療を行っていきます。
アミトラズは規定量をぬるま湯に入れて使用しますが、薬浴後は水で流さず、軽くタオルで水分を取り除いた後、ドライヤーなどで乾燥させます。

ただし、殺ダニ剤は、幼ダニ、若ダニ、成ダニには効果があっても卵には全く効果がありません。
死ぬことのない卵がまたふ化して繁殖を始めてしまうため、長期間しっかり薬浴を行っていくことが大切です。
長い子の場合1年以上この治療が必要なこともあります。

フィラリア予防薬の投与

本来、フィラリアに処方される薬イベルメクチンを使用して治療を行っていきます。
フィラリア予防薬はアカラスの神経系を狂わせることができるので、とても有効な薬です。

ただし、通常フィラリア予防のために犬が使用する300倍の効力のある薬を投与する必要があるため、犬用のフィラリア薬ではなく、牛や豚、馬のフィラリア薬を用います。

治療には、大量のフィラリア予防薬が必要となるため、治療費も大変高額となりますが、家畜用を使用することで犬用のフィラリア予防薬を使用する場合と比べ、費用を抑えることができます。

フィラリア予防薬として使用されるイベルメクチンはフィラリアを保有している犬には使用することができません。
そのため、必ず使用する前にフィラリア検査が行われます。

抗生剤

アカラスは時として二次感染を併発することが多く、その場合には抗生剤も同時に使用していきます。
アカラスは表面的には症状が治まっても、完全に治癒いていない場合、再発してしまうことが多くなっています。

治療も長期間に及ぶため、飼い主も根気が必要ですが、いったん治療を始めたからには、無駄に終わらせたくありませんよね。
医師の指示に従い、勝手に中断することがないよう気を付けましょう。

コリー犬種のイベルメクチンの使用には要注意!

コリー種として知られる、コリーをはじめとした、シェットランドシープドッグやオーストラリアンシェパード、オールドイングリッシュシープドッグなどはイベルメクチンの使用を避けるようにしましょう。

コリー種がイベルメクチンを使用してしまうと、麻痺やふらつきなどを起こし、ひどい場合には昏睡、死に至るケースもあるからです。これにはコリー種の持つ血液脳関門の機能異常が原因しています。

コリー種は他の犬種と違い、異物を代謝、排除する機能が上手く作用しないようです。
投薬後、すぐから数日後に症状が現れ、効果的な治療法も確立されていませんので、イベルメクチンの使用は避けるようにしましょう。

そのためコリー種の治療には同じフェラリア予防薬である「ミルベマイシン」が使用されます。
「ミルベマイシン」はコリー種でも副作用がないため、薬浴で効果がなかった場合、この薬を用いて治療を行っていきます。

ただし、一般的に治療に用いられているイベルメクチンより高価なのが難点です。
飼い主にとって費用面の負担が増えることになりますのでできる限り、予防に努めるようにしましょう。

アカラスの予防法

アカラスの発症は、遺伝的な要因ももちろん存在しますが、何より体力の低下、免疫力の低下、基礎疾患が大きく影響してきます。
子犬のころから十分な栄養のある食事を与え、体力をつけさせるよう心がけることが大切です。

また、常日頃から色々な病気に注意を払うことも必要と言えるでしょう。
子犬が健康な状態を維持できるよう努めていけると、アカラスが発症する確率を下げることができます。

まとめ

獣医師・宿南章

アカラスは完全駆除の難しい病気です。
状が軽くても最低1か月の治療が必要と言われるほど、根気のいる治療が必要な病気です。

早く、スムーズな完治を目指すために大切なことは、何といっても早期発見、早期治療です。
飼い主が毎日犬を観察し、アカラスに似た症状を発見した場合には、すぐに動物病院に連れていくよう心がけましょう。

また、アカラスは長い治療が必要と言うこともあり、治療費の面でも飼い主の負担が大きく、個人的に治療をやめてしまおうかと考える方も少なくないようです。

しかし、再発などを繰り返すことも多く、その場合治療は半年から1年とより長引くことになります。
費用の負担も大幅に増えることになりますので、自己判断で治療を断念することだけは避けるようにしましょう。

医師の指示に従い、完治までしっかり治療を続けていくことが重要です。
できることであれば、幼犬のうちから予防に努めるようにしてみましょう。

十分な栄養のある食事を与えたり、体力をつけさせてあげることはアカラスの予防につながります。
子犬を迎えたときから、アカラスにならない生活を心掛けてくださいね。

また、子犬を迎える段階で、予防策をとることもできるかもしれません。
母親がアカラスに感染していなければ、子犬がアカラスを発症する可能性はぐんと減ることになります。

繁殖者が気を付けることはもちろんですが、飼い主として子犬を迎える前にその子犬の出産環境を確認してみることも予防策の一つと言えるでしょう。

犬のアカラス

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獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

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記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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