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犬のクッシング症候群の症状、原因と治療法、費用について

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クッシング症候群は、別名副腎皮質機能亢進症とも呼ばれている病気です。
あまり聞きなれない病気ですが、ホルモンが過剰に分泌されることが原因で高血糖となり、様々な症状を引き起こします。
治療によって寿命もまちまちですが、投薬治療だけでなく外科的手術が必要になるケースも多く、その費用も高額になります。

しかし、完治は難しくとも治療によって症状を抑え寿命を全うできるケースもありますので、あきらめずに出来ることを愛犬にしてあげることが重要です。
ここでは、クッシング症候群の症状、原因、治療法や治療にかかる費用の目安などを詳しく解説していきます。
早期発見のためにも、ぜひ参考にしてみてください。

目次

犬のクッシング症候群とは

クッシング症候群とは副腎皮質で作られるホルモンの一つ、コルチゾールが過剰に増えてしまう病気です。
このコルチゾールは炎症を抑える働きや炭水化物の代謝、ストレスを軽減させるなどの働きのあるホルモンです。

そのため、生きていくために重要なホルモンと言っても過言ではありません。

このホルモンが作られている副腎は腎臓のそばにあるため、このようなネーミングとなっていますが、ホルモン作られなくても多く作られても問題が生じます。

クッシング症候群のようにホルモンが過剰に作られてしまうと皮膚や筋肉を分解し、それによって肝臓のグルコースの生成が活発になることから、高血糖を引き起こします。

クッシング症候群に陥りやすい犬とは?

クッシング症候群は8歳以上の老犬に多く見られる病気です。

特に犬に発症が多く見られる病気で、もちろんネコや人間にも発症することがありますが、犬の場合全体の0.1~0.2%の割合でクッシング症候群が発見されています。

クッシング症候群を引き起こしやすい犬種と言われているものには下記の犬種。

クッシング症候群を起こしやすい犬種

ダックスフンド / プードル / ビーグル / ボクサー / ポメラニアン / ボストン・テリア…など

愛犬が該当する場合には特にクッシング症候群を発症していないか飼い主が注意深く見守ってあげる必要があるでしょう。

クッシング症候群の症状

では、クッシング症候群にはどのような症状が見られるのかを見ていきましょう。
愛犬に以下のような症状が現れた場合、クッシング症候群の可能性が考えられます。
参考までに自分の犬の症状と見比べてみましょう。

  • 水をたくさん飲む
  • おしっこの量が増える
  • たくさん食べるのに痩せていく
  • お腹が膨れる
  • 脱毛が見られる
  • 左右対称の脱毛が見られる(脱毛症X)
  • 元気がなくなる
  • 寝てばかりいる
  • ハアハアと息が荒くなる
  • 無気力になる
  • 筋肉の力が衰える

などの症状がクッシング症候群の代表的な症状になります。

クッシング症候群は老犬に多く見られる病気ですが、ここで挙げた症状の多くが老犬になったことで起こっているのだろうと考えられる症状でもあるため、クッシング症候群だと気が付かない飼い主も少なくありません。

しかし、クッシング症候群になってしまうと血糖値が高くなることから糖尿病を患ってしまうだけでなく、膀胱炎や皮膚炎などの感染症にも陥りやすく、甲状腺機能低下症や塞栓症、脂肪肝、肝不全など他の病気を併発する危険性もありますので注意が必要です。

できるだけ早く動物病院を受診し、クッシング症候群の治療を始めていきましょう。

クッシング症候群の原因とは?

クッシング症候群はお腹が膨らみ、脱毛が見つかるなど老犬にあってもおかしくない症状が見られる病気です。
そのため、発見も難しく、できることなら発症しないことが一番と言えます。
クッシング症候群を引き起こす原因とはいったい何なのでしょうか?

主に考えられる原因は以下になります。

  • 加齢
  • 脳内の腫瘍
  • 副腎の腫瘍
  • 副腎皮質ホルモン剤の長期投与

では、クッシング症候群の原因についてそれぞれ詳しく見てみましょう。

加齢

先ほど「クッシング症候群になりやすい犬種」の項目でも触れた通り、8歳以上の老犬に発症の多い病気です。そのため、加齢が大きく原因していることは確かと言えるでしょう。

脳内の腫瘍

約8割の犬が脳内にできた腫瘍が原因でクッシング症候群を発症します。

副腎の分泌に命令している脳下垂体に腫瘍ができると副腎を制御している副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の制御が難しくなるため、ホルモンが過剰に分泌されてしまいクッシング症候群を引き起こします。

このような原因によって引き起こされたクッシング症候群は、下垂体依存性副腎皮質機能亢進症と呼ばれています。

副腎の腫瘍

脳内の腫瘍以外にも副腎そのものに腫瘍ができたことで、コルチゾールが過剰に分泌されるケースもあります。
同じようにコルチゾールのコントロールが効かなくなってしまい、クッシング症候群に陥ってしまうのです。
副腎性副腎皮質機能亢進症と呼ばれることもあります。

副腎皮質ホルモン剤の長期投与

アトピーやアレルギーなどを治療するため、犬に副腎皮質ホルモンとよく似たグルココルチコイド剤を長期的に投与することがありますが、このことが原因でクッシング症候群を発症することがあります。

いわゆる副作用なのですが、こうしたクッシング症候群を医発性クッシング症候群として分類しています。
3か月以上副腎皮質ホルモン剤を使用している場合には、注意が必要です。

その他にも異所性クッシング症候群と呼ばれ、コルチゾールが脳や副腎以外から分泌されてしまう場合なども本当に稀ですが存在します。

クッシング症候群の検査

クッシング症候群が疑われた場合、次のような検査が行われます。
検査についても見ていくことにしましょう。

  • 血液・尿検査
  • レントゲンや超音波、CT、MRI検査リスト

血液・尿検査

血液や尿を採取して副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)や副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の値を見ていきます。
ただし、これらのホルモンはストレス性のホルモンであるため、空腹時や状態の変化で値が変わってしまいます。
そのため一度の検査でクッシング症候群と確認されないことも少なくありません。何度か検査を重ねていき、クッシング症候群を本当に発症しているかどうか継続して検査を行っていきます。

レントゲンや超音波、CT、MRI検査

クッシング症候群の原因でもお話しした通り、腫瘍が原因でクッシング症候群を発症している可能性もあるため、画像解析をもとに判断を下していく方法も併せて行っていきます。
レントゲンや超音波検査などで腫瘍が分かりにくい場合には、CTやMRIを使った検査が行われます。
脳下垂体や副腎に腫瘍があればクッシング症候群の原因が見つかったことになり、これからの治療方針を判断できます。

クッシング症候群の治療法とは

クッシング症候群の大本となっている治療と共に、副腎皮質ホルモンの量を調節していく治療が行われていきます。
詳しく見てみましょう。

  • 根本治療
  • 投薬治療

根本治療

まずはクッシング症候群を引き起こした原因の治療を行っていきます。
腫瘍が見つかった場合にはその腫瘍を取り除くために外科的手術が行われます。

ただし脳下垂体に腫瘍がある場合や転移などが考えられる場合には外科的処置が施せないことも多くなっていますので、そのようなケースでは放射線治療が用いられることもあります。

また、医発性が原因となっている場合にはその薬の使用を見直します。
少しずつ投薬量を減らしていき、最終的には投薬を行わないで済むよう治療を続けていきます。

投薬治療

根本治療が行えないなど、副腎皮質ホルモンの分泌を下げることができない場合には、ミトタンやプレドニゾロンなどの投薬治療が行われます。

薬には一般的に副腎皮質ホルモンを分泌している副腎皮質の細胞を攻撃する薬と、副腎皮質ホルモンの分泌を下げる薬が用いられていますが、薬の投薬量によっては副腎皮質機能低下症を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
投薬量は、血液中の副腎皮質ホルモンの値によって医師が判断していきます。

投薬量や服用の回数はその子の症状によって変化します。
この投薬治療でどうしても改善が見られない場合、後から副腎を摘出すると言った外科的手段を選択することもあります。

手術を決断する前に

クッシング症候群の場合、外科的治療が必要になる子も少なくありません。
人間同様外科手術となると、麻酔のリスクや術後の対応、ケア、費用面など飼い主がきちんと理解しておく必要があります。
もちろん医師もきちんと説明してくれますが、分からないことや心配点があれば、遠慮せずに質問してみましょう。

投薬治療、検査などは生涯続く覚悟を

投薬治療は副腎皮質ホルモンを下げるために行われるため、いったん治療を始めると一生涯治療を行っていく必要があります。
また、定期的にホルモン量を計測し、その症状に合わせて薬の量を調節していくため、その度に検査が必要となります。
おおよそ2か月に一度くらいの割合で検査を行っていくのが一般的です。

費用面を含め、生涯と投薬治療と検査が必要と言うことは飼い主にとっても大きな負担となります。
愛犬とどう向き合っていくのか長いスタンスで考えていくことが求められます。
愛犬の病気と付き合っていく覚悟が大切になります。

犬のクッシング症候群の治療費用は高額!

犬のクッシング症候群は検査の段階から多くの費用が掛かってきます。
クッシング症候群かどうか判断する検査は、一度の検査で確認されないことも多いため、2、3日入院という形をとることも少なくありません。
検査費用と入院費用、治療費などの平均をあげますが、地域や病院によって様々になりますので、あくまで参考としてみてください。

1回あたりの検査費用
  • 血液検査5,000円~10,000円ほど(採血費用)
  • 尿検査3,000円ほど
  • レントゲン検査5,000円ほど
  • 超音波検査5,000円ほど
  • CT検査3,000円ほど
  • MRI検査5,000円ほど
  • 入院費3,000円~5,000円ほど

病院の基本治療費によっても異なりますし、その子によって必要となってくる検査内容も違ってきますが、これぐらいの検査費用がかかってきます。
大型犬の場合、CTやMRIの費用もより高額となりますので、飼い主の費用面の負担も増えることになります。

検査費用は受診する動物病院によっても変わってきますが、おおよそ5万円から8万円の費用が平均額となっていますので、大変高額です。

また、手術が必要な場合、10万円から15万円の費用がかかり、投薬治療を行っていく場合にも、かなりの金銭的負担が増えることになります。

ホルモンの分泌を抑える薬は、1錠平均で1000円から1500円です。
そのため小型犬の場合、最低でも月額2万円ほど、中型犬で4万円ほど、大型犬で約6万円の費用が必要となります。
決して安い金額ではありません。

クッシング症候群の場合、例え薬を使った治療を行ったとしても、症状が抑えられるだけで、完治するケースはほとんどありません。寿命が尽きる半年から1年は投薬が必要と言うケースが大半となっていますので、トータルでかなりの費用がかかってきます。

費用面でも飼い主にはかなりの覚悟が必要と言うことです。

クッシング症候群の寿命は?

クッシング症候群は、完治の難しい病気です。
そのため一度診断されたら、愛犬の死を考えることと思います。

しかし、外科的手術が上手くいき、コルチゾールをきちんと抑えることができれば、症状はある程度回復し寿命まで命をつなぐことができます。

腫瘍が大きくなってしまう場合などは、1年から2年しか持たないと言うこともありますが、症状や治療法によって寿命もまちまちです。

愛犬の回復の可能性を信じ、前向きな治療を続けていくことが大切です

クッシング症候群は予防できる?

クッシング症候群の症状は、犬特有の老化症状と非常に似ているため、飼い主も気が付きにくい病気です。
ですが放置してしまうと、突然発作や呼吸困難を起こし、死に至る恐ろしい病気でもあります。

がんが原因となるケースもあることから、予防法などは特に何もありませんが、早期発見、早期治療が愛犬を守る唯一の手段です。
愛犬にクッシング症候群に似た症状を見つけたら、できるだけ早めに動物病院を受診させてあげましょう。

クッシング症候群の愛犬に試したその他の治療事例

クッシング症候群は治療することで回復が見られる病気ではありますが、中には治療途中で急死してしまうこともあり、医師も治療をしなければ良かったのでは・・・と考えることもある病気です。
かといって放置してしまうと糖尿病などを併発することもあり、医師はその判断を飼い主に委ねることになります。

金銭的な面からも、飼い主への負担が大きい病気でもあるため、飼い主の中には独自の療法を試す方もいるようです。
科学的に立証されている方法ではありませんが、参考のためにその一例をここでは紹介しておきます。

食事療法

飼い主の中には、治療と合わせて食事療法を試す方は多いです。
食欲が落ち込み、食事が思うように取れなくなると、治療を続けていくことさえ難しくなります。

そんな食事療法には「低脂肪」「血糖値のコントロール」「たんぱく質の補給」「免疫力」が大切になってくるため、そうした食事を心掛けることで元気を取り戻す子もいます。

治療と並行して食事療法を試していくことも大切と言えます。

ハーブ

西洋では古くから伝わる民間療法であるハーブを犬に用いた方もいるようで、クッシング症候群に見られる脱毛などの症状に回復が見られたと言う例もあるようです。

まとめ

獣医師・宿南章

クッシング症候群は、コルチゾールと言うホルモンの過剰分泌で起こるホルモンの病気です。
そのため完治の大変難しい病気でもあります。

根本原因を排除することで回復が見られ、寿命まで長生きできるワンちゃんもいますが、反対に徐々に症状が悪化し命尽きることもある怖い病気です。

クッシング症候群を患わない予防策と言うものはありませんが、子犬のころから飼い主が健康に配慮することで発症率を下げることは不可能ではありません。

毎日の愛犬の行動や食事面に気を配り、愛犬を怖いクッシング症候群から守ってあげたいものです。

ですが、愛犬にクッシング症候群と似た症状を発見した場合には、できるだけ早く動物病院を受診させてあげましょう。
早期治療で回復する可能性が高まります。

費用面、お世話など飼い主の負担は増えることになりますが、愛犬の回復を信じ、治療を続けていってくださいね。

犬のクッシング症候群

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獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

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記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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