愛犬の血液検査でクレアチニンの値が高いと言われてしまったら、かなり腎臓に深刻なダメージがあることになります。
ではどんなことに気をつけて愛犬の健康管理をすることが大切なのでしょうか?
クレアチニン値の正常値や数値ごとの重症度、関係する病気についてまとめてみました。
血液検査のクレアチニンと腎臓の働き
動物病院で愛犬の血液検査をしたらクレアチニン値が基準値を超えていると言われていた場合、腎臓の病気が疑われます。
腎臓には色々な働きがありますが、特に血液を綺麗にする臓器という認識があります。
食べ物を食べると体の中で消化して必要な栄養を取り込み、要らなくなったものを分解して排泄します。
腎臓が血液から要るものと要らないものをより分けるフィルターの働きをしているのです。
腎臓のフィルターが体に必要なものを通して血液中に戻し、要らないものを血液中に戻さずに尿にして体外に排泄します。
腎臓のフィルターの目が詰まってこの機能が下がっていると、体に必要なものが血液中に戻されずに尿と一緒に出てしまいます。
このように腎臓のフィルターとしての機能が下がってくるとクレアチニン値が上昇するという仕組みです。
クレアチニンとは?
クレアチニンとは老廃物の一種です。
筋肉が運動するために必要な物質にクレアチンリン酸というものがあり、このクレアチンリン酸が代謝された後にできるのがクレアチニンです。
クレアチニンは腎機能が正常であれば腎臓でろ過されて尿として排出されますが、腎機能が下がってくると血液中のクレアチニンの濃度が上がってきます。
クレアチニンはCrと略され、表記されます。
犬のクレアチニンの正常値
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犬のクレアチニンの正常値は0.2~1.6mg/dlとされています。
これよりも数値が高いと体に異常が発生していると考えられます。
尚、クレアチニンは腎機能がかなり下がらないと上昇しないのでクレアニチンの数値だけで腎機能を判断するのは腎機能低下の早期発見になりませんので注意が必要です。
クレアチニンは筋肉量に左右されてしまう
クレアチニンは腎機能の機能低下を見分ける血液検査ですが、クレアチニンの数値は筋肉の量に影響されるので筋肉質な犬と痩せているガリガリの犬とでは数値に差が出てしまいます。
また、クレアチニンは腎機能が約75パーセント喪失するまで上昇しませんので、腎機能の低下をクレアチニンの上昇のみで判断するのは難しいと言えます。
クレアチニンの数値が高いと疑われる病気は?
クレアニチンの数値が高いと腎臓に何らかの問題があると考えられます。
急性腎不全や慢性腎炎、腎不全などの腎臓の病気や心不全などを起こしている場合も腎臓に血液が流れ難くなっているので、老廃物が体外に排出できずにクレアニチンの数値が上昇します。






クレアチニン値による重症度
犬のクレアチニンの正常値は約0.2~1.4mg/dlとされていますが、国際獣医腎臓病研究グループによる腎臓病重傷度判定が参考になります。
ステージ | クレアチニン値 | 重症度判定 |
---|---|---|
ステージ1 | 1.4以下 | 残存腎機能が100~33パーセント |
ステージ2 | 1.4~2.0 | 残存腎機能が33~25パーセント |
ステージ3 | 2.1~5.0 | 残存腎機能が25~10パーセント |
ステージ4 | 5.0以上 | 残存腎機能が10パーセント以下 |
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう!
- ステージ1
-
自覚症状はほとんどありませんが、多飲多尿傾向にあり、尿濃縮能や尿比重が低下したりタンパク尿が出ます。
血液検査でも異常が見当たりません。 - ステージ2
-
だ自覚症状がありませんが、中には多飲多尿傾向にある犬もいますし、軽度の高窒素血症になります。
血液検査をすればわずかな異常が見つかる可能性がありますが、特に健康診断などで血液検査をして偶然の早期発見に至らない場合は病気を見逃してしまう場合がほとんどです。 - ステージ3
-
やっと深刻な自覚症状が出てきます。
腎臓の糸球体で血液をろ過する量が落ちるので体外に排出されるはずの老廃物が腎臓のフィルターの目に詰まり、元気がなくなったり、下痢や嘔吐などの胃腸障害や貧血になったり、中程度の高窒素血症になります。
通常は、このステージ3で飼い主が愛犬の異常に気が付いて動物病院を受診することが多いです。 - ステージ4
-
腎機能がほとんど働いていない状態になるので尿毒症になったり、重度の高窒素血症になります。
ステージ4はもはや命の危険性が高い状態にありますが、人間のように血液の人工透析などを頻繁には行えないので、食事が取れず嘔吐などを繰り返すので激しく痩せてしまいます。
この数値からもクレアチニン値が基準値よりも少しでも上昇していると腎機能の7割近くが失われているということになります。
クレアチニン値が上昇しているということは腎臓のフィルターがかなり詰まっているということですが、腎臓のフィルターのつまりは一度詰まると基本的には治りません。
クレアチニン数値が元々高い犬種は?
グレイハウンドはクレアニチンが元々高めの犬種ですので、グレイハウンドを飼っている飼い主さんはクレアチニン値が遺伝子的に高い傾向にあるということを認識しておくことが大切です。
クレアチニンと共に見ておく必要がある検査項目は?
クレアチニン値が基準値を超えて上昇してくると最悪の場合、既に腎機能の3分の2ほどの機能を失ってしまっているという危険性があります。
腎臓で体に必要なものと、不要な老廃物を分けるフィルターは目が一度詰まってしまうともう回復しないといわれているので、クレアチニン値だけに頼って腎機能を判断するのは手遅れになってしまう恐れがあるのです。
そこでクレアチニン値だけでなく、アミノ酸であるアルギニンがメチル化された物質であるSDMA(対称性ジメチルアルギニン)値を一緒にチェックします。
SDMAは腎機能が平均40パーセント喪失した時に上昇しますので、クレアチニン値よりもかなり早い段階で腎機能の低下を発見できます。
また、クレアチニン値は筋肉量や男女差よって数値に大きく影響しますが、SDMAはこれらに影響を受けないのでクレアチニン値と共にチェックすることでより信頼性のある検査結果になります。
また、血液尿素窒素量(BUN)の上昇もチェック一緒にチェックしておくと良いでしょう。
クレアチニン値を下げるための食事療法
クレアチニン値を下げるためには愛犬の腎臓に負担をかけない食事を与えるということが何より大切です。
クレアニチン値が1.4以下のほぼ正常値であっても他の血液検査項目BUN値や尿検査などと合わせて、総合的に判断して腎機能が下がってきているステージ1の段階からクレアチニン値を下げるための食事療法を行うのが理想的です。
食事療法のポイントは以下の3つです。
- リンの制限
- ナトリウムの制限
- カリウムの過不足に注意
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう!
リンの制限
ステージ1の場合は、リンを4.6mg/dl、ステージ2の場合は5.0mg/dl、ステージ3の場合は6.0mg/dlに維持します。腎臓に障害がある犬の場合、リンとカルシウムが結合したものが腎臓に蓄積します。
腎臓に老廃物が蓄積してフィルターを詰まらせることで更に腎臓の機能を低下させますのでリンは過剰に摂取することなく制限をすることが必要です。
一般的にリンは肉などにたくさん含まれていますので、クレアチニン値が高い犬に対して肉の摂取制限をするという獣医さんもいますが、腎臓機能に問題のある犬に肉の制限をしてしまうと、たんぱく質を必要量摂取できなくなります。
高たんぱく質な鹿肉や鶏肉、卵、カッテージチーズ、ヨーグルトなどを食べさせてリンを制限しながらたんぱく質を与えるようにしましょう。
脂肪は体を動かすためのエネルギーなので、腎機能が下がっている犬にも必要な栄養になります。
また、肉よりも脂肪の方がリンの含有量が低いのである程度食事に脂肪も取り入れる必要があります。
ナトリウムの制限
ナトリウム、つまり塩分の制限は腎臓病を持つ犬にとって非常に大切です。
体内に入ったナトリウムの調節を行っているのはほぼ腎臓だけの働きですので、体内に過剰にナトリウムが入ると機能が低下している腎臓がナトリウムの調節ができなくなるので負担がかかってしまいます。
ナトリウムの調節ができないと高血圧の原因になります。
尚、犬は人間に比べて非常に薄い味でも充分に味を感じることができます。
ですから、人間が食べている塩味のついたものをそのまま愛犬に与えているとナトリウムの過剰摂取になってしまいますので、普段から充分注意しましょう。
カリウムの過不足に注意
腎臓の機能が低下するとカリウムの排出が上手くできません。
そのため体内にカリウムが蓄積するので高カリウム血症になります。
高カリウム血症になると心臓病のリスクも高まりますし、命の危険があります。
また、腎機能が下がって利尿剤を使用するような段階になると利尿剤によってカリウムが体外に排出されてしまうので低カリウム血症になります。
カリウムの多い食材は野菜、果物、イモ類、豆類などですが、切り口を多くカットしてゆでるという調理法を取ると8~9割のカリウムが流れ出ます。
愛犬の腎機能の状態、病状の進行度によってカリウム摂取をコントロールする必要があるので、獣医さんとよく相談してカリウムの摂取量を決めることが大切です。
腎臓病の愛犬のためのドッグフードを利用する
クレアチニン値が上昇している愛犬に対して、基本的には腎臓病の犬用も開発された療法食を与えるのが一般的です。
症状によって一人一人食事の栄養の内容が違っていて当然なのですが、検査数値によって細かい栄養素を加減するというのは非常に手間が掛かりますし、獣医さんにしても余程栄養学的に詳しい人でないとなかなか摂取量まで対応できないという場合がほとんどだと思います。
そこでクレアニチン値が上がっている愛犬に対しては、専門に監修された腎臓病のためのドッグフードをベースに食事を与えるのがいいでしょう。
腎臓病というのは、急性でどこかに炎症があって一時的に腎機能が下がっているという場合を除いては、現状よりも腎機能がよくなるということは残念ながらありません。
一度腎機能が下がってしまうと、そこからできるだけ腎機能が下がらないように気をつけるということしかできないので、食事に関しても療養のための食事は一度始めると一生涯に渡って気をつけた食事を与え続けることが大切になってくるわけです。
栄養管理を長期間行うというのは飼い主さんにとってかなりの労力になりますし、大変なことです。
食事は毎日毎日の積み重ねが大切なので、手作りで対応するというものもちろん大切ですが、腎臓病のための療法食をベースにして、さらに愛犬のために必要な何かを補うということが腎臓病のコツになってきます。
腎臓は我慢強い臓器
腎臓は我慢強い臓器です。
このため、腎機能がかなり低下した状態でないと自覚症状がありません。
また、クレアチニン値もかなり病状が進行した段階で上昇してくるので愛犬の異常になかなか飼い主さんは気が付いてあげられません。
特に老犬の場合は腎機能が下がってくる傾向にあるので日頃から体調を管理してあげることが大切です。
老犬に限りませんが、腎機能の低下、クレアチニン値の上昇にできるだけ早く対応出来るように定期的に健康診断を受けて血液検査をする習慣を持っておくことが必要です。
一旦、下がった腎機能はほぼ回復しません。
最悪の場合は腎不全になって命を落とす危険もあります。
犬は人間のように頻繁に人工透析をすることはほぼ無理です。
保険の効かない愛犬の人工透析は1回に2~3万円ほど掛かりますが、長期間に渡ってこのような治療を行うことは多くの飼い主さんにとってかなりの負担になります。
人工透析の必要な重篤な症状になる前にしっかりと早期発見早期治療が出来るようにしておくことが大切です。
まとめ
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犬のクレアチニン値が正常範囲よりも上昇している場合は、腎臓がかなりのダメージを既に受けている状態です。
クレアチニン値の症状だけでは犬の異常を早期に発見することができませんのでBUN値や尿比重、尿検査などと総合的に判断して診断を行うことが大切です。
少しでも腎機能が下がってきたら、腎臓病の愛犬のための療養食に切り替えてしっかりと栄養管理を行い、安静を保ってお世話をしてあげましょう。