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犬の咳が続く時に注意する病気は?原因と症状別対処法9選!

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愛犬の奇妙な咳が気になると言う飼い主の方はいませんか?犬も人間と同じように咳をしますが、空気を吐き出したようなはっきりしない咳もあり、また吐き戻しているような仕草を取る子もいます。そのため咳かどうかわかりにくいことも多いようです。

犬が咳をする時はどんな時なのでしょう?人間のように風邪をひいている時なのか、それとも何か大きな病気が隠れているのか・・・咳からわかる 病気とその対処法について解説します。


目次

犬の咳ってどんなの?

「犬の咳を見たことがないのでわからない」という飼い主さんがいるかもしれません。犬は咳をする時、吐くような仕草や格好をすることが多くなっています。そして「ケッケッ」「カッカッ」「ガーガー」など何かを吐き出すような音を出します。(人間であれば「コンコン」「ゴホゴホ」「ケホケホ」などの擬音が使われることが多いですよね)

体調が悪い時に咳をするのは人間と同じですが、犬の場合で厄介なのは、状況と症状で咳が出る原因とその対処方法が違うことです。特に口呼吸を行う犬は咳が出る原因の病気にかかりやすいと言われるので、咳が出たタイミングやシチュエーションなどを注意深く観察し、病気の場合は早期発見で適切な処置を施してあげることが大切です。

 

咳の症状にはどんな原因がある?

咳が出るのにはいくつかの原因があります。大まかには、呼吸器官と循環器のどちらかの病気や疾患が考えられます。それ以外でも日常的に咳が自然発生することもあります。それぞれ見ていきましょう。

 

1.呼吸器官の病気

一番咳が起こる原因で多いのは気管や気管支で炎症がある場合ですが、鼻・喉・肺で炎症や感染など何らかの異常が起こっているケースもあります。気管支炎が原因の場合には悪化することで肺炎や心臓疾患まで進行しますので、初期の段階で治療ができることがベストです。

 

2.循環器の病気

循環器で多いのは心臓の疾患です。心臓が気管を押し上げるなどして胸が苦しくなり咳が出たり、血液循環が悪くなることでも咳の症状が出ます。

また、循環器の病気として注意したいのは、犬フィラリア症の寄生虫による心疾患です。フィラリアは心臓や血管に寄生するため、寄生による影響から咳が出ます。

 

3.自然発生の咳

犬の咳は病気のサインと言うことも多いですが、冷たい外気を吸い込んだ時や飼い主さんがリードを引っ張ってしまった時、興奮した時、他にも飲みにくい姿勢で水を飲んだり、エサを食べたりした時などにも、咳が自然に出ることがあります。

このような場合は病気や疾患が原因ではありませんので心配はいりません。

 

咳の音でも原因が違う?!

咳の音によって原因だけでなく、症状の進行具合も異なります。

 

症状が軽い

・乾いた咳
・音の小さい弱い咳

 

症状が重い

・湿った咳
・激しい咳
・咳き込むような咳
・ヒューヒューと胸から吸うような咳
・ガーガーという鳴くような咳
・止まらない咳

 

咳だけで進行状態が100%分かるわけではありませんが、どのような咳をしているかによって、どこが悪いのか(どの部分の疾患なのか)どの程度病状が進行しているのか判別できることもあります。

ガーガーという鳴くような咳をしていると気管虚脱の可能性がありますし、ヒューヒューと胸から吸うような咳をしている場合は肺炎にかかっている可能性があります。

老犬の場合ですと、気管虚脱や肺炎で命を落とすこともありますので、一度咳き込んで、その後いつまでも咳が止まらないような場合は病気を疑ってみましょう。

 

咳からわかる病気と対策は?

咳の原因は様々です。予防できるものから治療の必要なものまで、原因によって対策が異なります。

 

1.伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)

【どんな病気なのか】
伝染性気管気管支炎(でんせんせいきかんきかんしえん)はウイルス性の病気で、この病気にかかっている他の犬の鼻水やくしゃみなどから飛沫感染します。非常に感染力が強いため広がりやすい病気の一つです。別名「犬風邪」とも呼ばれていて、空気が乾燥する時期はかかりやすくなります。

 

【どんな対策ができるか】
感染有無は免疫力に左右されるので、冬場は身体を冷やさない(濡らさない)工夫や体調が悪い時に犬が集団でいるところに行かないなど、少しの注意で予防することが出来ます。子犬は免疫力が弱いため感染しやすい傾向にありますので、注意しましょう。

関連記事:犬の風邪はうつる?犬風邪の原因や症状、治療や予防法

 

 

2.気管支炎

【どんな病気なのか】
人間にも起こる病気ですが、気管支が炎症を起こしている状態です。この炎症が原因で咳が出ます。気管支炎では乾いた咳(「ケッケッ」という乾いた音の咳)と湿った咳(「ゼーゼー」と吸い込むような音の咳)が出ますが、乾いた咳が出ているうちの炎症は初期で、湿った咳が出るようになると炎症が悪化している証拠です。咳が繰り返されることで呼吸困難に陥ることもあります。

また、咳が2ヶ月以上続くようであれば慢性化している可能性があります。悪化すると肺炎になったり、心臓疾患や気管虚脱など他の重篤な病気へと進行する可能性があるので、気がついた時には速やかに動物病院で処置を受けましょう。

 

【どんな対策ができるか】
気管支炎の発症はその大半が飼育環境によるものです。埃などのダストや気温の変化が気管支に悪影響を与えているので、まずは愛犬の住環境を見直してあげましょう。温度の変化、特に寒い季節の乾燥によって症状が悪化するので、加湿して湿度を保つなどの工夫とウイルスの感染予防としてワクチンの接種をおすすめします。

 

3.気管虚脱

【どんな病気なのか】
何らかの理由で気道が狭くなることで、本来取り込めるはずの空気が十分に取り込めなくなってしまう状態を言います。空気が正常に取り込めないため呼吸困難になることもあります。呼吸困難になると脳に酸素が回らなくなるだけでなく、体温調節も出来なくなるので命の危険性が一気に増します。

治療が遅れることで脳や身体に障害が残る可能性もあるので、荒い息でガーガーと鳥が鳴くような呼吸や咳をしている時は注意しなくてはいけません。

 

【どんな対策ができるか】
気管虚脱となる原因には肥満が挙げられます。激しい運動をすると咳は出やすくなりますが適度な運動を行うことで肥満を防ぎましょう。首輪を強く引いた時などに喉が締まって、気道が狭くなってしまうことがあるかと思います。

散歩をする時は首輪よりも肩にかけるハーネスを使うなど、喉に負荷をかけないように注意しましょう。過度な興奮状態も咳が出る原因となります。呼吸を荒げないことが重要です。

 

4.心臓病

【どんな病気なのか】
犬の心臓病ではよくかかるのが僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜん)です。この病気は心臓にある僧帽弁がうまく機能しないことで血液の流れが逆流してしまう疾患です。血液が心臓部で逆流を起こしてしまうことで全身に行き渡りにくくなった血液をなんとか送り出そうと頑張り過ぎてしまい、最終的に心不全を起こしてしまいます。血液を強く送り出そうとして起こる疾患なので、実は興奮状態の時に悪化してしまうことが多いのです。

頑張って血液を送り出そうとする心臓は鍛えられ少しずつ大きくなりますので、気管を圧迫していきます。そうすると狭くなった気管によって咳が発生するのです。悪化して様々な病気を併発する可能性があるため、出来る限り早い治療が必要な病気です。

 

【どんな対策ができるか】
心疾患、特に僧帽弁閉鎖不全症は年を取った犬、また小型犬に多い疾患です。特に、愛犬が高齢と言う場合には気をつけてあげましょう。定期的な検査や診断で防ぐことは十分に可能です。人間も同じですが、カッとなったり興奮したりすることで心臓に負担がかかります。

また塩分を控えた方が良いのも人と同じです。血圧が高くなることで心臓ポンプの負荷が重くなりますので、これまで与えていたエサを老犬用に変えるなど、食事の内容を見直してあげるのも良いでしょう。病気の場合は疲れやすく運動量が減りますので、高齢だからと思い込まず前よりも大人しくなったと感じたら、病院で診てもらうことが大切です。

関連記事:犬の僧帽弁閉鎖不全症って?原因と症状、治療法や食事、寿命について

 

5.寄生虫

【どんな病気なのか】
寄生虫が咳の原因と聞くと少し不思議な感じはしますが、犬の寄生虫として代表的なフィラリアは、ノミやダニとは違って体内に寄生をします。そして、犬の咳の原因としては寄生虫によるものが実は一番多いのです。回虫や鉤虫、フィラリアが気道から腸に移動する際に咳が出ます。

また犬フィラリア症は、寄生虫が心臓や血管に寄生した影響で咳が出ますが、寄生虫感染としては命に関わる可能性も十分にあります。定期的な投薬対策でしっかりと防ぎましょう。

 

【どんな対策ができるか】
寄生虫感染はこわいですが、定期的なフィラリア予防の投薬によって防ぐことが出来ます。寄生前に適切な予防をすることで、フィラリアだけでなく大概の寄生虫は予防可能です。

また、フィラリアは蚊を媒介して寄生するため、夏場に蚊の多そうな草むらや公園などで遊ばせないといったお散歩対策をすることも効果的です。

関連記事:犬のフィラリア症の原因と症状、予防薬と注意点について解説

 

6.ジステンバー

【どんな病気なのか】
この病気は犬ジステンパーウィルスに感染することで発症します。伝染性が非常に強く、呼吸器官・消化器官・神経系統に影響を及ぼす非常に恐ろしい病気です。現状特効薬も治療方法もありませんので、重症化してしまえば命を落とすことも覚悟しないといけません。

ジステンパーウイルスに感染すると長くても一週間前後で発熱や咳、鼻水といった風邪に似た症状があらわれます。その後、風邪は回復せず症状が続いたまま二次感染の症状として嘔吐や下痢に発展し、重症化すると肺炎も引き起こします。最終的にはウイルスが神経系統に炎症や破壊を及ぼし、回復しても後遺症が残るため、ウイルスに感染しないように予防することが大切です。

 

【どんな対策ができるか】
ジステンパーウイルスはワクチンの接種で予防が出来ます。定期接種しているワクチンの中に含まれていることが多いので気になる飼い主さんは獣医に相談してみましょう。

万一ジステンパーウイルスに感染した場合、39度以上の高熱と空咳が頻繁に出ます。また目ヤニが増えますので、目や鼻の異常からも症状を確認することが出来るでしょう。症状悪化が命取りになりますので、もし愛犬にジステンパーウイルス感染と似たような症状があらわれていたら早急に動物病院を受診させてあげましょう。

関連記事:犬の感染症の種類を知っておこう!各症状と治療法まとめ

 

7.犬インフルエンザ

【どんな病気なのか】
軽症の場合は10日〜30日程度の痰が混ざった咳が出ます。二次感染すると鼻水が出ることもあるようです。重症の場合では40度近い高熱が出て、呼吸がゼーゼーと荒くなります。高熱が出ていると肺炎にかかっている可能性があります。

大体の場合が軽症で済むため、咳が出ている時は注意して見守ってあげましょう。犬インフルエンザは人から感染るインフルエンザとは違います。過去に馬から犬へと感染した症例はありますが、人から犬へと感染ることはありません。

 

【どんな対策ができるか】
人からの感染症例は聞きませんが、ワクチン接種をしておくのが一番の予防です。またウイルスが付着したままとならないよう、インフルエンザシーズンにはケージや餌・水入れなどの消毒を定期的に行うと安心です。

日本での症例は滅多にないので、愛犬を連れての渡航では、他所の犬との接触に十分に注意しましょう。

 

8.誤飲誤食(誤嚥)

【どんな病気なのか】
病気ではありませんが、日常生活での誤飲誤食は起こりがちなので気をつけないといけません。おもちゃ、クッションや枕の中綿を飲み込んでしまう異物誤飲もありますが、エサや吐き戻したものを再度食べようとして誤って吸い込んでしまうことで起こる誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)も日常では起こり得る出来事です。

人間も同じですが、高齢犬や子犬の場合は特別注意してあげましょう。エサを食べた後に咳をしたり、吐き出そうとしている仕草がある場合は誤嚥の可能性があります。

 

【どんな対策ができるか】
普段のエサは食べ易い大きさや量にしておくのも良いでしょう。愛犬の年齢や体格(もしくは性格)などによって、準備してあげてください。

家の中では、犬が食べたり飲み込んだりしそうなものは片付けておくというのが基本です。愛犬を守るためと割り切って、物を食い千切ったり飲み込んだりしないようにしつけましょう。むしろ注意しないといけないのは、散歩中の拾い食いです。

 

9.アレルギー

【どんな病気なのか】
愛犬が何のアレルギーに反応しているかによります。原因はハウスダウトだけでなく花粉の場合もあります。反応しているアレルギーによって対策も変わるので、原因を見極めその原因物質をなるべく取り除いてあげるようにしましょう。病院で調べることも可能なので、アレルギー症状かなと思った時には一度動物病院で相談してみましょう。

 

【どんな対策ができるか】
ハウスダストの場合、ノミやダニが原因となっています。ノミやダニは多湿なところを好みますので部屋の湿度を下げ、毛髪(愛犬の毛も含む)、フケ、お菓子のカスなどエサとなるようなゴミや汚れをそのままにせず小まめに掃除をすることが大事です。住環境を整え、清潔な空間を作ってあげましょう。

花粉症については、どの花粉に反応しているかによりますが、外出機会を調整するなどしてアレルギー症状があらわれる植物を避けるようにしましょう。家の中に花粉を持ち込まないようにするのは人間も犬も同じです。散歩の後は家に入る前にブラッシングをしたり濡れたタオルで手足や毛並みを拭くなど、原因物質を取り除きましょう。

関連記事:犬のノミアレルギー性皮膚炎の症状・原因と治療法って?

 

愛犬の咳を止めたい!でも慌てないで!

愛犬が咳をしていたら気になりますし心配ですよね。心配で思わず強めに胸元を触ってしまったり圧迫してしまったりすると逆効果です。更に気道を狭めることになったり、呼吸が苦しいところをもっと苦しくさせてしまうかもしれません。

まずはどのような咳をしているのかその種類や咳以外の症状を冷静に観察して、病院へ連れて行きましょう。咳をしている音を携帯で録音していくと原因がより早くわかるかもしれません。病院へ連れていく際には胸元や気道を圧迫しないように、出来るだけ体勢を保ったままケージなどに入れて運びます。お出かけだと思われて興奮すると悪化する可能性がありますので気をつけてください。

 

まとめ

愛犬が咳をしている時は単なる風邪としてやり過ごさずに、一度病気を疑ってみることも必要です。原因によっては、咳が出ている時点ですでに症状が進行している可能性もあります。

もちろん全てが病気のサインというわけではありません。呼吸がいつもより荒かったり、咳き込んだとしても「病気だ!」とパニックにならないよう、普段から愛犬の様子をよく観察して、いざという時には冷静に対処し愛犬を救ってあげてくださいね。

犬の咳

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獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

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記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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