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犬の慢性腎炎になったら?症状と余命、食事、原因と治療法

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獣医師・宿南章

犬の慢性腎炎はあまりはっきりした症状がないので、知らず知らずのうちに腎臓の機能が下がり最悪の場合、腎不全になる危険のある怖い病気です。

愛犬が慢性腎炎にかかったならばできるだけ早く治療を始めてあげる必要があります。

犬の慢性腎炎とはどのような病気なのか、早期に発見するための検査法、症状や原因、治療法や食事療法についてみていきましょう。

目次

犬の慢性腎炎とはどんな病気?

愛犬が慢性腎炎にかかっていても、目立った症状がないので飼い主は慢性腎炎になっているということになかなか気がつきません。
病気の進行も数ヶ月から数年に渡ってゆっくりしているので徐々に体の調子が悪くなります。
腎臓の機能が徐々に下がってくるということは、血液中の老廃物が徐々に尿として排出されずに体内に残留していきます。

慢性腎炎は初期の段階だと愛犬も日常とほとんど変わりのない生活を送ることができますが、病状が少し進むと、尿が薄くなって尿比重が低下してきます。
場合によっては高窒素血症があらわれる場合もあり、その場合は尿比重は低下しますが、尿の量は増えます。

しかし、はっきりした体調の不調も感じられないので量の量が少し増えたということで愛犬の異変に気がつくことがなかなかできません。
慢性腎炎の怖いところは、その病状の進行に気がつきにくいところにあります。
そして気がついた頃には、ある程度病状が深刻化していて治療が難しく、治療したとしても完治が難しいのです。

慢性腎炎が酷くなると腎臓の機能がどんどん下がって最後には慢性の腎不全になります。

慢性腎炎の病状が進むと、飼い主にも愛犬の体調の変化を感じることができます。
食事を摂っているのに、どんどん痩せてきたり、脱水症状になったり、貧血になったりします。

目に見えて元気がなくなってきたり、痙攣を起こす場合もありますが、最終的には尿が作れなくなり尿の量が減ります。
尿が出なくなると体中に毒素が周り、他の臓器などにも悪影響が出てきてしまい、最後には死亡するという怖い病気です。

犬の慢性腎炎の症状はどんなもの?

慢性腎炎は腎機能が徐々に下がってくるという病気です。
そのため、初期の頃には慢性腎炎の症状を見分けることが困難であることが多くなります。

段階
初期から中期まで

臨床症状としては、はっきりしたものがなかなかありません。
数年に渡って腎機能が徐々に低下してきますので、尿の比重が下がってきて尿の色が薄くなった反面、尿の量が増えてくるという特徴があります。

日頃から尿の状態や回数などを細かく把握している場合は異変に気が付くかもしれませんが、愛犬はいつもどおり元気にしていますし、食欲がないというような異変はない場合が多いのでなかなか気がつかないものです。

何か他の原因で尿の検査や血液検査などを動物病院で行う機会などがあれば、慢性腎炎であることを早期に発見することがあります。

段階
中期の頃

食事をある程度しっかり食べているのにどんどん痩せてきたり、尿の量が増えてきます。
脱水症状や貧血を起こしますことも多く、元気がなくなってきます。


血液検査や尿検査を行うと腎機能が低下していることが分かりますし、たんぱく尿が出ることが影響してネフローゼ症候群になることもあります。
体全体がむくんでいたり、おなかに水が溜まって膨らんでくることもあります。

段階
腎不全へ

慢性腎炎の延長上に慢性腎不全があると考えます。
腎機能がどんどん低下してきて、尿を作るという機能が働かなくなります。

中期に尿の量が一旦増えますが、より病状が深刻になると腎臓で尿が作れなくなることで徐々に尿の量が減ってきて、最後には全く尿を作る事ができなくなります。

慢性腎炎からネフローゼ症候群へ(ネフローゼ症候群とは)

腎臓の中にはネフロンという機能器官があります。

そのネフロンの中に糸球体という血管の集まりがありますが、ネフロンに機能障害が出ると血液中の老廃物をしっかりろ過できなくなり、尿中にたんぱく質が出て高たんぱく尿症になったり、血液中のたんぱく量が減ってくることで低たんぱく血症になったり、血中コレステロールが上昇します。

このように尿や血液に異常が起こることで血管の内外では浸透圧のバランスが崩れます。

浸透圧がコントロールできなくなると体内の水分量に異常が起こり、体が浮腫んできたり、おなかに水がたまって膨らんできたりします。
食欲がなくなってきたり、ぐったりして元気がなくなるので飼い主も異変に気がつきます。

ネフローゼ症候群と診断された場合の対処療法としては、各症状を軽減する治療が行われますが、おなかに水が溜まっている場合などは穿刺をして水を抜きます。

高血圧になっている場合は、食事の塩分量を抑えたり、血管拡張のために薬を投与します。
血が固まりにくくなるので血栓を予防する薬を投与する場合もあります。

また、食事は糸球体への負担を軽くするために、たんぱく質の量を減らし低たんぱく食にします。

犬の慢性腎炎の原因は?

急性腎炎の場合は、原因が具体的に色々考えられますが、慢性腎炎の場合は原因がはっきりしません。
急性腎炎を繰り返しているうちに慢性腎炎になってしまうということもありますし、遺伝的原因がある場合もあります。

犬の慢性腎炎の治療法

腎炎は治療薬というものがないので、現在の腎炎の状況を進行させないようにする治療を行います。
慢性腎炎の場合は、塩分を控えたり、低たんぱくの食事にしたりします。

腎機能がどんどん下がってくるとリンの排出機能も下がってくるのでリンの摂取制限にして糸球体に負担をかけないようにする食事療法を行います。

また、低下したホルモンを増やすためにホルモン剤が投与されたり、カリウム製剤剤の投与をします。
腎機能がどんどん下がってくると腹膜透析や血液透析などで血液中の老廃物を排出します。

犬の慢性腎炎の食事療法とは?

慢性腎炎にとって、食事療法というのは非常に大切です。
腎炎の症状はなかなか良くは改善しませんので、今の状態を悪化させないように腎臓に負担をかけないという食事内容が重要になってくるからです。

慢性腎炎はその状態によって段階がありますが、たんぱく質の摂取制限、塩分制限、カリウム制限などを行うことで腎機能の進行を抑えます。
また、慢性腎炎からの合併症の予防にも食事制限は役立ちます。

慢性腎炎の食事療法で大切なことは無理のない範囲で長期間継続させることです。

たんぱく質の制限

たんぱく質を摂取することで、体にとっての老廃物である窒素代謝物が発生します。

この窒素代謝物という老廃物が体内にあっても腎機能がしっかりしていれば問題なくろ過されるのですが、慢性腎炎で腎臓のろ過機能が下がっているとろ過の処理能力追いつかず、正常に機能している糸球体にも過剰に付加がかかり、腎機能がどんどん下がっていてしまいます。

たんぱく質を制限するのではなく、たんぱく質を全く摂取しないという食事を行うとカロリー不足になります。
カロリー不足になると体はカロリーを摂取するために体についているたんぱく質である筋肉を分解するようになります。
体に元々あるたんぱく質でも分解されることで窒素代謝物が発生します。

せっかくたんぱく質を摂取制限しても窒素代謝物が出るのでは逆効果になりますので、糖質や脂質などたんぱく質以外の栄養素でカロリーを必要量摂取しながら、たんぱく質の摂取制限をすることが大切です。

たんぱく質をどのぐらい制限するかということは、腎機能の状態によりますので、獣医とよく相談して食事をあげるようにしましょう。

塩分制限

慢性腎炎が影響して腎機能が下がっていると塩分の排出機能が下がります。
体にとって塩分は必要なものですが、塩分は体の中の体液の量を調整していますので、塩分の排出機能が下がり体内に塩分が溜まります。
塩分は体の中で水とくっつきますが、塩分が体内に多くあると体内に水が溜まりむくみや高血圧の原因になります。

犬は人間と違い、汗として塩分を体外に排出しません(少量は汗をかきますが)。
このため、人間と同じ感覚で塩分を含んだ食材を与えると塩分の摂りすぎになるので注意しなければいけません。

人間と比べると薄い味でも犬にとっては塩分不足にはなりません。

犬が生きていくためにも塩分は必要ですが、慢性腎炎を患っている愛犬には、その症状や腎機能によって塩分量の制限がありますので必ず獣医の指導のもとに塩分制限の分量を決めましょう。

カリウム制限

腎機能が低下してくるとカリウムも排出しきれずに体内に残留します。
このため、カリウムを制限する必要があります。

水分補給

腎炎が進行していくと体に必要な水分が吸収できずに尿として排出されてしまうので脱水症状になってしまいます。
水分を飲みたい時にこまめに摂ることができるように家の中には新鮮な水をいつでも自由に飲むことができる場所をいくつか作っておくとよいでしょう。

慢性腎炎から腎不全へ

慢性腎炎の症状が長期に渡り続き、腎機能が徐々に低下していきます。
腎機能がその機能の30パーセント以下になった場合を腎不全と言います。

慢性腎炎から慢性腎不全になるというパターンも多いですし、犬の場合は、腎機能が慢性期に悪い状態を初期の腎不全として扱うという場合もあります。

慢性腎炎がある日突然腎不全というものになるのではなく、徐々に時間をかけてその領域に病気が進行していくと考えられますので、慢性腎炎のステージが上がった状態を慢性腎不全として扱います。

犬の慢性腎炎の余命はどのくらい?

慢性腎炎が進行して、腎機能が下がっていくと腎不全という領域に入ります。
腎不全というのは生命にかかわる非常に重い病気で、腎不全と診断されると余命を考える必要があります。

腎不全になる犬は老犬が多いですし、急性腎不全のように急に状態が悪くなるものではないので、食欲や尿の量、回数、体重の減少など様々な要素が余命に関係します。

腎不全になると最後は尿毒症という状態になり尿を排出することができなくなります。
このようになると余命は1週間から1ヶ月以内である場合が多いと考えましょう。

尿毒症の状態になると治療することも出来ません
残された時間が非常に少ないので愛情をしっかり注いで、今までの感謝の気持ちをこめて精一杯最後の看病をしてあげましょう。

愛犬の血液検査をしよう

愛犬の慢性腎炎は余程その症状が酷くならない限り、目立った症状もありませんし、自覚症状もありませんので初期の段階で飼い主がそれに気がついてあげることが難しいというのが現状です。

しかし、動物病院などで血液検査などを行って、BUN値やクレアチン値、リン値などを測定することが頻繁にあれば、早期の段階で腎機能の異常に気がつくことができます。

早期に治療を始めることで治療を早く始めることができますし、早期に食事療法などを行うことで腎臓に対する負荷を減らすこともできます。

その結果、病気の進行を遅らせたり、余命を伸ばすことも充分可能になります。
愛犬の慢性腎炎に早く気がつくためにも定期的に動物病院で血液検査を行うようにしましょう。

まとめ

獣医師・宿南章

愛犬が慢性腎炎になる場合、その原因ははっきりしません。
また、ある程度病状が進行するまで症状がありませんので飼い主は早期に愛犬の慢性腎炎を発見することが困難です。

慢性腎炎は数ヶ月から数年単位で徐々に病気が進行していきます。
腎機能もそれに伴って徐々に下がってきますが、腎機能が本来の30パーセントを下回ると腎不全にステージが上がります。

腎不全になると腎機能の著しい低下により体外に老廃物が排出されないことで血液や血管、その他の臓器にまで損傷を与えることになり最悪の場合、死に至る病ということになります。

このような状態にならないためにも、できるだけ早い段階で慢性腎炎であることを発見して、治療を早期に開始したり、食事療法を行うことが大切です。

食事療法は慢性腎炎の場合、病気の進行を遅らせるためにも非常に大切です。かかりつけの動物病院の獣医とよく相談してその内容などを決め、専門の療法食を与えるようにしましょう。

慢性腎不全

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獣医師・宿南章の愛情ごはん療法食

獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

興味の多いテーマ

記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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