心筋症は心臓の病気で重症になると命の危険もある恐ろしい病気です。
しかし、愛犬が心筋症であるということはなかなか飼い主さんだけでは分からずに、発見が遅れて病気が進行してしまっているということが起こりやすい病気でもあります。
心筋症を早期発見早期治療をするためにも飼い主さんは知識としてしっかり犬の心筋症について認識しておくことが大切です。犬の心筋症の原因と症状、治療や食事についてまとめてみました。
犬の心筋症とは?
心筋症というのは、心臓を構成する筋肉が何らかの原因によって厚くなったり、薄くなったりして心臓の働きが悪くなることです。心筋症の原因は現代医学においてははっきりと解明されていません。
心筋症は肥大型、拡張型、拘束型という3つに大きく分かれますが、犬の心筋症では肥大型と拡張型が多く、心臓内部の線維が厚くなる拘束型はあまり見られない傾向にあります。
肥大型心筋症というのは心室の容量が大きくなり、拡張型のタイプは心臓が収縮する力は大きく低下します。
心臓には右心房、右心室、左心房、左心室という4つの部屋に分かれて血液の流れをコントロールしており、心筋症の多くは左心室で発症することが多いようです。
犬の心臓の働き
心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割をしていますが、犬の心臓も人間の心臓と作りは右心室、右心房、左心房、左心室の4つに分かれています。
全身を巡ってきた血液は心臓の右心房から右心室へと流れ、右心室から血液は肺へ向かい、肺で酸素をたくさん吸収して左心房、左心室へ流れて大動脈を通って全身へと送り出されます。
心臓の中の血液の流れは常に一方方向で、心臓が収縮することで血液を送り出しています。
この心臓の筋肉が分厚くなると部屋が狭くなり血液が溜まる量が少なくなりますし、筋肉が薄くなって延びてしまうと血液を送り出すことができなくなるのです。
犬の心筋症の症状は?
愛犬が心筋症になっていても初期の場合はなかなかはっきりした症状が出ないので飼い主さんでもなかなか分かり辛いといのが現状です。
心筋症の初期の症状としては、元気がなくなる、食欲がなくなるというものがあります。
心筋症の場合は、元気が一気になくなるというのが特徴です。
さっきまで楽しそうにして遊んでいたのに急に元気がなくなるといった症状があります。
主な症状に以下のようなものがあります。
- 元気がない
- 食欲がない
- 息が苦しそう
- 乾いた咳をする
- 腹水が溜まる
- 後ろ足が麻痺
- 軽い動悸を起こす
- 体がむくむ
- 痰や血が伴う咳
- 酸欠状態になって失神する
- 散歩を嫌がる
症状が悪化して血液の循環が悪くなると血管は腫れて身体症状を伴ううっ血性の心不全や不整脈を起こすことがあります。
不整脈の症状が出てくると元気が一気になくなりますし、心臓内に血栓が出来やすくなりますので注意してください。
血栓が心臓内に出来て動脈に流れて血管が詰まると血液が流れないことで激しい痛みが出はじめ、特に血栓が出来やすいのが大動脈から後ろ足の辺りになります。
後ろ足に血液が行かなくなるとフラフラして足を引きずったり、肉球が白くなったり麻痺して動かなくなります。
心筋症(肥大型)の原因、なりやすい犬種は?
犬の心筋症の肥大型というのは、心室(左心室)の筋肉が肥大して心室内の容量が減ってしまうことで、1回の心臓の収縮で体に送り出す血液量が減ってしまうことによって起こります。
犬の心筋症の中では肥大型はあまりないタイプの心筋症で、原因ははっきりしていません。
肥大型心筋症になりやすいのは以下の犬種です。
ダルメシアン / ポインター / ジャーマンシェパード
心筋症(拡張型)の原因、なりやすい犬種は?
拡張型心筋症は、心臓の筋肉が細くなり左心房と左心室の間の壁が薄くなってしまうことで、心臓の収縮する力が低下して全身に血液が送り出せない状態になることです。
血液の流れが不足することで体温が下がったり、脱水症状などの症状が見られることがありますが、拡張型心筋症の原因はタウリンの不足だと言われています。
タウリンというのは必須アミノ酸の一種で、タウリン不足と拡張型心筋症との間に関係があるといることでペットフードにタウリンを配合したものが出回るようになり、それらタウリンが配合されたペットフードを食べさせることによって拡張型心筋症の発生が低下したというデータもあります。
一方、タウリンを充分に摂取していても拡張型心筋症になることもあるので、原因の全てはタウリン不足ではないというところでしょう。
Lカルニチンの不足が原因で拡張型心筋症になることもあると言われており、遺伝性の要因、免疫異常、パルボウィルス感染なども原因の1つです。
拡張型心筋症になりやすいのは以下の犬種です。
ドーベルマン / セントバーナード / ボクサー / アフガンハウンド / アイリッシュウルフハウンド / グレートデン / スコティッシュディアハウンド / バーニーズマウンテン / アメリカンコッカースパニエル / ピンシャー / ニューファンドランド / ポルトガルウォータードッグ
上記のように大型犬に多く、4~10歳の頃のオスに拡張型心筋症を発症しやすい傾向があります。
多くは成年期から高齢になるほどかかりやすくなり、純血種の犬にも拡張型心筋症が多いので遺伝的な原因もある可能性があります。
これらの犬種の愛犬を飼っている飼い主さんは心筋症の初期症状によく気をつけておくことが大切です。
ボクサー型心筋症
ボクサーにだけ特に多く見られる心筋症をボクサー型心筋症と言います。
心臓の筋肉が萎縮したり、繊維化したり、脂肪組織が広範囲に広がり、心臓の筋肉細胞が壊死したり、出血したりすることもあります。
ボクサーだけでなくブルドッグもよく見られる症状ですが、原因は不明です。
8歳の頃に発症することが多く、お腹に水が溜まったり、左心の不全や心室性の不整脈があることがありますが原因ははっきりと分かっていません。
ボクサーやブルドッグを飼っている飼い主さんは注意が必要です。
犬の心筋症の診断は?
動物病院を受診すると聴診で心臓の音を聞いて雑音があったり、心電図で不整脈があると心筋症の疑いがあります。
更に検査をして、レントゲン検査や心臓の超音波検査を行い診断します。
また、キャピラリテストという簡単に血圧を飼い主さんができるテストもあります。
キャピラリテストとは、毛細血管再充満時間テストというものですが、犬の歯ぐきをぎゅっと白くなるまで指で押さえてから指を離して、どのくらいで歯ぐきが赤い通常の色に戻るかというテストです。
血圧が正常である場合は2秒ほどで元の色に戻りますが、血圧が心筋症などで低下している場合は元の状態に戻るまで2秒以上の時間がかかります。
心筋症は早期発見、早期治療が非常に大切である病気ですので、血圧が低いかどうか心配な飼い主さんはキャピラリテストを自宅で試してみて血圧の目安にするのも良いでしょう。
犬の心筋症の治療法は?
犬の心筋症の治療は主に内科的治療が一般的です。
一度変化した心臓や機能を完全に回復するということは費用に難しいので完治を目指すのではなく、今の症状を悪化させないように対処する対処療法がメインの治療になります。
また、心臓病ですので、普段の生活で心臓へなるべく負担をかけたり、ストレスを与えないことも大切なことです。
心筋症(肥大型)の治療法
心室の筋肉が厚くなって血流が悪くなるので心室を広げるための薬や心臓肥大を抑えるための薬を服用します。
また、肺に水がたまって肺水腫を起こしている場合は利尿剤を服用して肺の余分な水分を尿として体外に排出する治療を行います。
血栓が出来てしまっている場合は血栓を溶かす薬を服用することもありますし、血栓が出来やすくなっているので予防のための薬を処方されることもあります。
心筋症(拡張型)の治療法
心室と心房の壁が薄く延びて心臓の機能が下がっているので血管拡張の薬や利尿剤、強心薬を服用し、心臓の機能回復を行います。血栓が出来やすくなっているので血栓予防のための薬を処方されることもあります。
うっ血することで心不全を起こしてしまっている場合は入院して治療を行うことが多くなるでしょう。
また、血流不足のために体温が下がってくるので体を温めたり、脱水している場合は脱水の治療もします。
輸血や体液を補給することもありますし、胸腔内に水が溜まってしまっている場合は注射針を指して胸の水を抽出します。
犬には安静が必要になりますので管理が必要です。
Lカルニチンやタウリンを補うようにしたり、塩分を制限することによって心臓への負担を抑えることもでいるので、かかりつけの獣医師と相談してください。
拡張型心筋症は徐々に症状が悪化するために治療をした後もあまり予後がよくない傾向があり、延命できる時間に限りがありますが、治療することによって突然死を防ぐことができるので、症状が軽い場合でも治療を続けることが大切です。
心筋症(ボクサー型)の治療法
ボクサー型心筋症は突然症状が悪化して死亡する危険があるので、抗不整脈薬やLカルニチンを投与して不整脈を起こさないようにします。
犬の心筋症の食事は?
心筋症などの心臓病は初期の段階で発見することが難しく、元気がなくなったりして飼い主さんが異常に気がついた時にはすでに病気がかなり進行してしまっていることが多いす。
心筋症も病状が進んでいると食事を与えても、なかなか食べることもできない状態になっていることがほとんどなので、初期の段階に発見して食事を気をつけるということが大切になってきます。
一般的に心筋症の犬の食事は、心臓の働きをサポートするアミノ酸の一種であるタウリンを配合したドッグフードにしたり、心臓に負担をかけないように塩分を控えたドッグフードを与えることが多くなります。
また、心臓の機能が落ちることで腎臓など他の臓器への影響もあることを考えてリンの量を制限したもの、体の活性酸素を考慮したものを与えます。
肥満が心臓に負担をかけることもあるのでカロリーを抑えた食事というもの大切です。
心臓病対象のドッグフードに切り替えると長期間しっかり食事をサポートできます。
心筋症の犬の運動
心筋症に限らず、心臓病の犬は運動をすると心臓にかなり負担がかかるので運動制限をすることが大切です。
できれば安静にじっと大人しくできるような環境を作ってあげることが大切です。
定期健診をしっかり行う
心筋症にならないようにするための予防法というものは残念ながらありません。
タウリン不足などが原因で心筋症になる場合もありますが、飼い主さんがかなり偏ったタウリンを制限するような特別な食事をさせない限り、タウリン不足で心筋症になることは普通はありません。
また、心筋症は遺伝的要素、家族要素が原因であることもありますので、愛犬の家族に心筋症の犬がいる場合はあらかじめ注意が必要でしょう。
心筋症の初期症状はほとんどはっきりした症状がなく、突然元気がなくなったり、食欲がなくなったりして飼い主さんが気付くことが多いですが、症状が出た時にはすでに病状はかなり進行してしまっていて手遅れになっていることがよくあります。
心筋症の治療が手遅れにならないためにも飼い主さんは愛犬に定期健診を行うことが大切です。
初期の段階で見つかれば完治できなくても寿命を延ばすこともでき、原因がはっきりしている場合はよくなることもある病気ですので、しっかり日頃から心筋症になっていないか定期健診を受けるようにしましょう。
まとめ
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犬の心筋症の初期症状ははっきりしたものがなかなかないので、いつも愛犬と一緒にいる飼い主さんでも体調の異常に気がつきにくいものです。
犬の心筋症は大きく、肥大型と拡張型に分かれます。
肥大型の心筋症は心臓の筋肉が分厚くなることで心室が狭くなり、全身に送りだすことのできる血液量が減ってしまいます。
また、拡張型の心筋症は心臓の筋肉が薄くなり細く伸びてしまうことで血液を充分に送り出すポンプの役割が出来なくなります。
犬の場合は拡張型心筋症であることが多く、その原因はアミノ酸の一種であるタウリンの不足や遺伝的要素が言われていますが、全ての原因がはっきりしているというわけではありません。
それぞれの型で病気になりやすい犬種がありますので、該当する犬を飼っている飼い主さんは日頃から気をつけてあげてください。
その犬種でない場合でも定期健診をしっかり行い、心筋症の早期発見、早期治療が出来るように心がけましょう。