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近年、人間の寿命とともに犬の寿命も延びてきています。
飼育環境やペットフードの質の向上により犬が長生き出来るようになってきている証です。
しかし、その一方高齢になればなるほどガンになるリスクが高くなっていきます。
犬がガンになる発生率は過去数十年で急激に上がっており、死因のトップとも言われるほどです。
10歳以上の高齢犬の死亡原因は、ほぼ半数がガンです。
ガンは早期発見が難しく治りづらい病気ですが、犬がガンを発症するリスクを最小限にしたり、ガンの進行を抑えるために出来る事はたくさんあります。
それにはまず、飼い主さんが犬のガンについて正しい知識を学ぶことが大切です。
ここでは、そんな犬のがんについて詳しく見ていくことにしましょう。
ガンが発症するメカニズムとは
そもそもガン細胞は、健康な犬や健康な人間の体内にも常に存在しています。
そのガン細胞が病気として発症しないのは、リンパ球が発生したガン細胞を攻撃して排除してくれているからです。
健康な状態であれば、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが良いため免疫力も高く、外から入ってきたウイルスも細菌も、ガン細胞も撃退します。
しかし、ストレスなどで自律神経のバランスが崩れると、リンパ球が減少して免疫力が低下し、ガン細胞は攻撃を受けずに増殖してしまうのです。
ガンは、細胞の遺伝子が傷つけられて突然変異を起こし、ガン化した細胞が排除されずに異常に増殖することで発症します。
ガン細胞はどんどん増え続け、周囲の正常な組織に侵入していき、血液やリンパ液の流れに乗って全身を巡ることで様々な部位に転移します。
ガンが進行するにしたがって身体は衰弱していき、転移した場所によっては死に至ります。
少しでも早く発見して進行を食い止めるために、愛犬の常日頃の体調管理と観察が不可欠です。
犬のガンによる症状
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ガンの症状は発症した場所によって違うことも多いのですが、共通している症状も少なくありません。
ここでは、そんながんの症状についてご紹介しておきます。
仮に次のような症状が見られても、ガンではない他の病気によるものである可能性も十分あります。
なぜならガンは全身どこにでも発症し得るので、他の病気との区別がつきにくく診断が困難だからです。
その判断は簡単ではありませんので、もちろんかかりつけの動物病院を受診することが大切ですが、愛犬の命を守るためにもガンの症状を覚えておけると安心です。
がんの症状について見ていくことにしましょう。
食欲不振
食欲不振は、多くのガンで最初に現れるサインです。
季節などによっても食欲は変わりますが、2日も3日も食べない日が続いたり、大好物にも興味を示さないようなら要注意です。
体重の減少
体重の減少も、ガンが発症したら現れやすい症状です。
愛犬の食欲がなくなってきた、体重が減っている気がすると感じたら、毎日体重を計ってみてください。
また、他にも症状が出ていないか注意深く観察してみることが大切です。
無気力で元気がない
元気がない、大好きなボールで遊ばない、いつもより寝ている時間が長い、表情に乏しいなど、ガンに罹っている犬はすぐに疲れてしまい無気力になります。
食欲不振や体重減少など他の症状も出ていないか確認してみましょう。
下痢や嘔吐
下痢や嘔吐が続く場合は胃がんなどが疑われます。
もし便や嘔吐した物に血液が混じっているようなら即座に動物病院で診てもらいましょう。
咳
異物が入り込んだ時に防衛本能として咳をしますので、本来自然な行動ではあります。
ですが、乾いた咳が続いたり血液が混じっている場合には肺がんなどの可能性も考えられます。
咳が長引く場合は獣医の診察を仰ぎましょう。
しこり
犬のガンでもっとも多いのが乳がんです。
乳房(乳腺)や身体の表面にできる腫瘍には良性と悪性がありますが、乳房にできた場合は悪性(乳がん)である可能性が高くなります。
しこりが小さいうちに見つけてあげられるよう、毎日のスキンシップで全身くまなくチェックしてあげましょう。
犬がガンになる原因と思われるもの
老化
ガンは、細胞の遺伝子が傷つけられて突然変異を起こし、突然変異によってガン化した細胞が増殖し、突然変異を繰り返して悪性化する事でガンになる、という段階を踏んで発症します。
つまり、犬の平均寿命が延びて長く生きることで、ガン発症までの段階を順番に踏んでしまうこととなり、高齢犬のガン発症率が高まっているのです。
さらに、老化によって免疫力が落ち、ガン細胞を排除しきれなくなってしまう事も要因となっています。
ストレス
犬のガンには、ストレスも大きな発症因子になっていると考えられます。
生活が一変するような出来事、たとえば大好きな家族との永遠の別れがあったり、飼い主の結婚や出産によって新しい家族が増えたり、引っ越しをしたりなど、犬にとって大きな出来事はともすればストレスになります。
また、充分な散歩をしてもらえていない場合や、飼い主とのコミュニケーションが不足している場合、入院や手術や事故などトラウマになるような出来事があった場合などもストレスを抱えることになります。
ストレスは、精神的にも不安定にさせて免疫力も低下させるため、ガン細胞の増殖を抑えることが出来なくなるのです。
遺伝
人間の場合、ガンになりやすい家系があると昔から言われており、実際に研究結果として、遺伝子の配列でガン発症の確率が高くなることも分かってきました。
犬に関しても、遺伝子の配列が似ている犬種ごとに、ガン発症の確率に違いがあるとされています。
なぜ犬種によってガンになる確率が違うのかといった根本的な理由はまだ解明されていませんが、統計によれば、0~8歳の犬の平均発症率が4.9%であるのに対し、ゴールデン・レトリーバーは9.6%と約2倍の発症率になっています。
フレンチ・ブルドッグが7.8%で、ラブラドール・レトリーバーは7.5%と、これらの犬種も平均より高い発症率です。
ガンは、年を取るごとに発症する確率が高くなっていきます。
ガンになりやすいと言われている犬種の飼い主さんは、早い時期から愛犬のチェックを習慣にするよう心掛けてください。
化学物質
殺虫剤・除草剤・農薬などに含まれる化学物質は、ガンになる直接的な原因というより「ガンのリスクを高める可能性がある」という認識でいましょう。
また、ペット用シャンプーの中には「ヒトに対する発癌性が疑われる物質」として分類される「ジエタノールアミン」という物質が含まれている商品もありますので注意が必要です。
工業用として利用されるアスベスト(石綿)も、犬にとって危険な物質です。
人間においては、すでにアスベストによって悪性中皮腫になるという関連性が立証されています。
人間よりも小さい犬や猫にとってはさらに大きな危険因子となり得ることは明らかです。
受動喫煙
タバコの煙が犬にとってガン発症のリスクを高めるという事実は、実験によって証明されています。
さらに、慢性的に受動喫煙させられた犬は高い確率で肺腫瘍や鼻腔のガンになるというデータもあり、受動喫煙の時間や量によってはリンパ腫になるリスクも高まるとされています。
ちなみに、マズルが短い犬は鼻腔も短いため、空気を洗浄化する作用が弱くなり、マズルが長い犬より受動喫煙によるリスクが高くなります。
紫外線
紫外線には殺菌効果があるので適度に浴びれば皮膚病の予防になりますが、紫外線が強い時期に浴びすぎると逆に皮膚トラブルの原因になってしまいます。
紫外線が細胞の遺伝子に当たってミクロ単位の傷がつき、細胞は突然変異して増殖し、扁平上皮ガンを引き起こす危険性があるためです。
シェットランドシープドッグやダルメシアン、白系のトイプードルやペキニーズなど色素が薄い白系の犬は、紫外線を長時間浴びた後に扁平上皮ガンを発生しやすいと報告されています。
犬は人間より低い位置を歩くので、アスファルトからの照り返しをお腹にまともに受ける上に、飼い主さんと目を合わせることで太陽を見上げる形になり、目からも紫外線ダメージを受けています。
しかも、紫外線から肌を守ってくれる角質層は人間の3分の1程度の厚みしかありません。
そのために被毛があるのです。
犬の被毛は、草むらや木々の間を走り抜ける時に肌に傷が付かないようにするだけでなく、紫外線から肌を守るためにも生えています。
ですから、暑いからといって極端なサマーカットにするのは、紫外線対策としてはお勧めできません。
それより、日差しが強い時間帯の散歩は避けて、肌と肉球のためにも涼しい時間に歩きましょう。
磁場
磁場とは、変圧器や送電線や家電製品などによって発生する、磁気の力が作用する空間のことです。
1995年の調査によれば、犬のリンパ腫と磁場には関連性があり、磁場が強ければ強いほど、そして磁場にさらされている時間が長いほどガンの発症率が高くなると報告されています。
愛犬がガンになった時の食事
ガンは健康を維持する力と、体内でお互い自分の陣地に身体をひっぱり込む非常に激しい綱(ツナ)引きをしています。
そして、それは単なるツナ引きではなく、健康な体の免疫側はがん細胞に穴をあけて死滅させたり、一方で、ガン細胞は栄養が自分に大量に供給されるように血液や血管がドンドン流れ込み増殖できるような指示を出したりと、とても激しいものです。
そして、ガンの主な栄養分となるのは糖分(グルコース)です。
ですので、ガンになった犬には糖分の含有量を低減できるフードがいいでしょう。
ガンを持つ犬の身体を支える栄養(食事)は特殊ですが、1日でも長く愛犬との時間を大切にするために、飼い主さんは適切なフードを与えてあげて下さい。
ガンの種類
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ガンとは悪性腫瘍のことで、その腫瘍が発生した組織によって2つに分類されます。
分類 | 特徴 |
---|---|
上皮性腫瘍 | 一つは、皮膚や粘膜など上皮組織の細胞に現われる「上皮性腫瘍」です。 上皮性腫瘍には良性も悪性もありますが、悪性の上皮性腫瘍を「癌腫(がんしゅ)」と言います。 発育速度が速く、リンパ管に乗って転移します。 |
非上皮性腫瘍 | もう一つは、造血組織や神経組織など上皮組織以外の細胞に現れる「非上皮性腫瘍」です。 非上皮性腫瘍にも良性と悪性があり、悪性の非上皮性腫瘍を「肉腫(にくしゅ)」と言います。 発育速度は非常に速く、血管に乗って転移します。 |
発生部位によるガンの種類
口(口腔)内のガン
多いのは「悪性黒色腫」「線維肉腫」「扁平上皮癌」で、よだれや出血、見た目の変化や口臭が特徴的です。
中でも悪性黒色腫は転移性が高いガンです。
口腔の腫瘍は、若いうちは良性が多いのですが高齢になるほど悪性の腫瘍になり、転移する危険性が高いという恐ろしい面を持っています。
骨のガン
「骨肉腫」「軟骨肉腫」などがあります。
骨肉腫は、足の長い骨に発生することが多い腫瘍で臓器に転移しやすい危険なガンです。
軟骨肉腫は関節の軟骨にできる腫瘍なので、鼻や肋骨や股関節にも発生します。
足にガンが発症すると、痛みから歩くことが困難になります。
大型犬の場合の歩行困難はさまざまな二次症状も引き起こしかねませんので、定期的なチェックで早期発見に努めましょう。
皮膚や体のガン
「脂肪腫」「肥満細胞腫」「リンパ腫」「腺癌」「扁平上皮癌」「肛門周囲腺癌」などがあります。
肥満細胞腫やリンパ腫は体を触って分かる転移性の高いガンです。
肛門周囲腺癌は名前の通り、肛門の周りにできる腫瘍です。
丸くて黒い塊ができ、破裂してしまう場合もあります。
7歳以上のオスによく見られるガンですので、愛犬が肛門周りをしきりに舐めていたら注意してください。
鼻(鼻腔)のガン
「腺癌」「軟骨肉腫」「扁平上皮癌」などがあります。
シェットランドシープドッグのようなマズルが長い犬種によく見られるガンです。
鼻の中なので早期発見が難しいのですが、くしゃみや鼻水の症状があったらティッシュでそっと鼻を拭いてあげましょう。
もし鼻血が付いていたらすぐに病院で検査をしてもらいましょう。
腹腔のガン
「胃がん」「直腸がん」「肝臓がん」などがあります。
胃がんになると嘔吐や吐血、体重の減少といった症状が見られ、直腸がんの場合は便に血が混じるようになります。
肝臓がんになった場合、他の臓器への転移は少ないのですが、体を触れば分かるほど肝臓が腫れることもあります。
腹腔内に出来る腫瘍は、気付かないうちに大きくなって破裂してしまうことも少なくありませんので、異常を見つけたら早めに診察を受けて対処しましょう。


生殖器のガン
「乳腺腫瘍(乳がん)」「子宮がん」「精巣腫瘍」などです。
犬のガンでもっとも多いのが乳がんです。
稀にオスが罹ることもありますがほとんどはメスなので、5歳を超えたらしこりがないか定期的にチェックしてください。
精巣腫瘍は精巣(睾丸)にできる腫瘍で、オスによく見られますが良性である場合も少なくありません。


血液のガン
「悪性リンパ腫」「白血病」などありますが、血液のガンには良性がありません。
悪性しか存在しませんので、愛犬の命を救うためにはいかに早期発見できるかが鍵となります。
悪性リンパ腫は、リンパ球と呼ばれる細胞の異常増殖によってリンパ節が腫れてきますので触ってチェックしてください。
分かりやすいのはあごや足の付け根で、あごの下のリンパ節は腫れが確認しやすい場所です。
白血病の症状は多様なため、これといった判断材料はありません。
定期的に健康診断を受けて、毎日のコミュニケーションで体調を観察することが重要となります。


犬のガンの治療法
犬の癌の治療方法には下記のようなものがあります。
外科療法
外科手術によってガン細胞を取り除く方法で、ガン治療において短期間で最大の効果が期待できる治療法です。
ただ、腫瘍が大きくなりすぎている場合や、転移が認められた場合には手術を行えません。
また、麻酔や手術に伴う合併症によって命の危機にさらされることも少なくありません。
化学療法・薬物療法
化学療法は血液細胞のガンの場合にもっとも有効とされる療法ですが、他のガンへの有効性は低いとされています。
また、化学療法で腫瘍が完治することは難しいですが、ガン細胞の増殖や分裂を抑えて進行を抑制する効果は期待できます。
放射線療法
放射線療法とは、体外や体内から患部に放射線を照射する方法で、生体に傷を付けずにガン細胞を攻撃して腫瘍を縮小させます。
化学療法よりもガン細胞に直接働きかけるため効果が高く、脳や心臓のような繊細な部位にも対応できます。
ただし、全身麻酔をかける必要があるため、状態によっては放射線治療が受けられない場合もあります。
免疫療法
免疫療法とは、マクロファージやサイトカインといった免疫機構をコントロールしてガン細胞を攻撃させるという治療法です。
副作用がほとんどなく他の治療と並行して行えることもあり、ガンにおいて第4の治療と言われています。
とはいえまだまだ研究の余地はあるので、使用したい場合はかかりつけの獣医師によく相談してみましょう。
まとめ
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犬のガンの早期発見は簡単ではありません。
ですが、日頃から飼い主さんが愛犬とのコミュニケーションを大事にして、スキンシップに重きを置いていれば、ちょっとした変化にもいち早く気付く事ができます。
白目が黄色くなっていないか、足を引きずったりしていないか、体のどこかに腫れている場所はないか、耳や鼻に妙なできものはないか、おしっこの色は正常か、おしっこや便に血が混じっていないか、食欲はあるか、体重は減っていないか、疲れやすくなっていないか、咳や息切れはしていないかなど、常日頃からよく観察してあげてください。
そして、定期的に動物病院で検診を受けるというのも、がんを早期発見できる方法です。
もし、愛犬の身に異常を発見した場合には、素人判断せずにすぐにかかりつけの獣医師に診察をお願いし、判断を仰ぎましょう。
大切な愛犬をガンから守るためにできることを、飼い主としてぜひ心掛けていってください。