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犬のアトピー性皮膚炎の治療法は?原因や症状・治療法について

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犬の皮膚病は再発やぶり返しに悩まされることも少なくありません。
その中でも、長く付き合うことになるのがアトピー性皮膚炎です。

人間でも完治の難しいと言われるほどの皮膚病ですから、愛犬にとっては辛い病気と言えるかもしれません。
特に犬は人間と違いアトピーがひどい時でも「かゆい」と訴えることができません。

ここでは飼い主がしっかり病状を把握するためにも、アトピー性皮膚炎の原因や症状、治療法についてご説明いたします。

目次

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は犬の体内にアレルゲンが侵入することで、起こる病気です。
アレルゲンが侵入すると、体は外界から何者かが侵入したのを察知し、IgE抗体と結合します。

IgE抗体は脂肪細胞に付着し、ヒスタミンなどの炎症性物質を放出します。
炎症性物質であるヒスタミンは外敵を撃退するために放出されるのですが、体の炎症も引き起こします。
これがアレルギー反応です。

アレルギー反応は、器官や鼻の粘膜、皮膚など体の各所で起こり、その症状は犬によっても異なりますが、皮膚で起こるアレルギー反応がアトピー性皮膚炎ということになります。

このアトピー性皮膚炎は人間に限らず、犬の中でも多い皮膚病で、約10頭に1頭の割合で発症すると言われているほどです。

アトピー性皮膚炎の症状とは

犬の場合も人間と同様、皮膚の薄い部分に強いアレルギー反応が出ることが多くなっています。
足先や顔、耳、わきの下、お腹、足の付け根に紅斑や湿疹、じんましんのような浮腫、脱毛などが見られます。
慢性化すると皮が硬く厚くなり色素沈着なども現れ始めます。

アトピー性皮膚炎の初期段階は季節的に発症することが多く、春だけといったように限定してかゆみを訴えることも少なくありません。
季節性のかゆみを訴えることがあれば、アトピー性皮膚炎の可能性があると判断できます。

他にも犬のアトピー性皮膚炎の特徴としては、3歳から5歳以下に発症する点が挙げられます。
アトピー性皮膚炎全体の約85%がこの年齢で患うと言われていますので、年齢的に該当する場合には飼い主も注意を払ってあげると良いでしょう。

アトピー性皮膚炎の3大原因とは?

アトピー性皮膚炎の原因は上でも説明した通り過度なアレルギー反応が原因と言われていますが、一つの要因が引き金となって起こるというよりも、いくつかの要因が絡み合い、アトピー性皮膚炎を発症することが分かってきています。
その原因をあえて挙げるとすれば、主に3つに分けることができます。

  1. 遺伝
  2. アレルゲンの存在
  3. 皮膚のバリア機能の低下

それでは、それぞれについて詳しく見ていきましょう!

1,遺伝

遺伝的にアレルギー抗体であるIgE抗体を作りやすい体質の場合、アトピー性皮膚炎を発症しやすいと言われています。
つまりアレルギー体質を持った犬の場合、アトピー性皮膚炎になるリスクが高いと言う訳です。
遺伝的な要因を持っていると言われる犬種は以下の通りです。

遺伝的要因を持っていると言われる犬種

柴犬 / シーズー / ゴールデン・レトリバー / ラブラドール・レトリバー / ダルメシアン / ミニチュア・ダックスフント / フレンチ・ブルドック / パグ / トイプードル / ビーグル / ウェストハイランド・ホワイト・テリア / ボストン・テリア / ケアーン・テリア / ホワイト・テリア / スコティッシュ・テリア / シェーリハム・テリア / イングリッシュ・セター / アイリッシュ・セター

ここで記した犬種がアトピー性皮膚炎を発症しやすい犬種と言われています。
もし、愛犬が該当する場合には、アトピー性皮膚炎のリスクが高いと言えるでしょう。

また、上記した犬種で「かゆがることが多い」「なかなか、かゆみが治まらない」「長くかゆみが続くことがある」というケースがあるならば一度、アトピー性皮膚炎を疑ってみる必要があります。

2,アレルゲンの存在

もともと強いアレルギー体質と言う訳ではなくても、暮らしている環境にアレルゲンと呼ばれる物質が多くある場合、アトピー性皮膚炎を発症することがあります。

ハウスダストやカビ、ダニ、花粉、他の動物のフケ、虫の死骸などはアレルギー反応を加速させます。暮らしている環境から、こうしたアレルゲン物質を完全になくすことは難しいですが、できる限り排除することが望ましいです。

また、食べ物にアレルギー反応を起こし、アトピー性皮膚炎を発症するケースも多くなっています。

鶏肉や豚肉などたんぱく質が多く含まれている食事はアレルギーの要因となるリスクも高く、ドッグフードを与えている場合には飼い主がアレルギーの原因になっていることを気づいていないことも多いため、かゆみが継続してしまうことも少なくありません。

その場合は、アレルギーの原因となりにくい鹿肉やカンガルー肉など、これまでに用いられてきた食材ではないお肉を使用しているドッグフードなどに替えてみるのも良い方法です。

3,皮膚のバリア機能の低下

犬の皮膚にもバリア機能があります。

体の表面を覆っている皮膚には大切な役割があり、主に水分を保持したり、外部からの異物の侵入を防いでいますが、このバリア機能が弱まると、外からの異物が侵入しやすくなってしまうため、つまりアレルゲン物質も侵入してしまうことになります。その結果、アレルギー反応を起こしてしまうと言う訳です。

実際にアトピー性皮膚炎を発症している犬の皮膚にはバリア効果を担うセラミドの量が少ないことが分かっています。
アレルギー反応を極力減らしてあげ、症状を抑えてあげるためには、一つの原因を排除するのでは不十分と言えます。
これらすべてにおいての対策が必要になってきます。

原因となるものが重複したときに、症状となって現れてきますので、治療もこの方向で行われることになります。

アトピー性皮膚炎の診断は?

アトピー性皮膚炎の主な症状にかゆみがありますが、「愛犬がかゆがっているから」と言って、いきなりアトピー性皮膚炎と診断され、治療が始まるわけではありません。
似たような症状を伴う皮膚の病気は色々ありますので、アトピー性皮膚炎かどうか、診断していくことになります。

似たような症状を訴える皮膚病には以下のようなものがあります。

  • 膿皮症
  • マラセチア性皮膚炎
  • ノミアレルギー
  • 毛包虫症
  • 疥癬(かいせん)

これらの病気は、同じような場所にかゆみを伴う病気ですが、適切な治療を行うことで完治が望めます。

アトピー性皮膚炎の場合、完治しないということではありませんが、人間が発症するとき同様、症状が治まったからと言って治療をやめてしまうと再発を繰り返してしまうため、これらの皮膚炎とは治療法が異なります。

しっかり病名を判断するためにも、適切な治療を行っていくためにも検査がまず必要になります。

犬のアトピー性皮膚炎の検査

アトピー性皮膚炎で動物病院を受診する場合、まずはアトピー性皮膚炎かどうかの検査が行われます。
またこの検査では、何が原因となってアレルギー反応を起こしているのか知ることができます。
検査の方法は以下のようなものがあります。

  • スタンプスメア検査
  • 抜毛・掻爬KOH検査
  • 試験的イベルメクチン検査
  • 血液検査
  • アレルゲン特異的IgE検査

それでは、各検査についてみていきましょう!

スタンプスメア検査

病変部から細菌を採取し、顕微鏡で調べます。
マラセチアなどの場合にはこの検査で診断が下ります。

抜毛・掻爬KOH検査

毛根の状態を調べる検査です。
毛包虫、ダニなどが原因でかゆみを発症している場合、この検査をすることで判断できます。

試験的イベルメクチン検査

カイセンダニの除外診断をするための試薬を使い、検査を行っていきます。

血液検査

ホルモン関連性の皮膚炎かどうか判断するために行う検査です。

アレルゲン特異的IgE検査

暮らしている環境の何が原因して、アレルギー抗体IgEを作ってしまっているのか調べる検査です。

この検査をすることでアレルギー反応を起こす原因がはっきりしますので、治療と共に生活環境のケアが行え、飼い主にとってもアトピー性皮膚炎であることが明らかとなる検査です。

検査の結果を踏まえて、改めてアトピー性皮膚炎と診断された場合、はじめてアトピーの治療が行われることになります。

また、食物アレルギーが疑われる場合、アレルゲンを反応の出ない段階まで分解したものや主要なアレルゲンを排除したものを使って除去食試験や元のドッグフードに戻していく食物負荷試験が実施されることもあります。

次からは一般的な治療法について見ていくことにしましょう。

アトピー性皮膚炎の治療法とは

アトピー性皮膚炎の治療はその犬の症状の状態によって異なります。
特にアトピー性皮膚炎の場合は、長いスタンスで治療を行っていくこともあり、経済的、労力的にもマッチした治療方針を選択していくことになります。
基本的な治療の進め方としては、処方された投薬による治療と家庭での管理による治療です。
主な治療方法としては以下のようなものがあります。

  • 薬物治療
  • 減感作(げんかんさ)治療
  • 漢方薬治療
  • 外用薬、スプレー薬治療
  • 保湿治療
  • シャンプー療法
  • 必須脂肪酸の投与
  • 家庭での治療

それでは各治療方法についてみていきましょう!

薬物治療

かゆみや炎症がひどい場合には、ステロイドや抗ヒスタミン薬を使用していきます。
ステロイドは治療効果も高いですが、副作用も強いため様子を見ながら減薬、休薬に導いていきます。

抗ヒスタミン剤は個人差も大きく、薬のタイプによって効く効かないがあるため、その子に合ったものを探していきます。
ステロイドと抗ヒスタミン剤の併用によって、ステロイドを必要以上に使わない治療を目指している動物病院も増えています。
また、新薬のアポキル(オクラシチニブ)は分子標的治療薬でかゆみに対し効果が高く、副作用のほとんどない新薬です。

場合によっては、ステロイド減薬に適した免疫抑制治療やインターフェロン治療を選択することもあります。

減感作(げんかんさ)治療

2014年から新しく行われている治療で、アレルミューンHDMという注射薬を1週間に一度の間隔で5回から6回ほど投与する治療法です。

チリダニに陽性を示した犬に効果的な治療で減感作の治療原理を用います。
つまり、アレルギーの原因となっている抗原をわざと体内に入れ、慣らしていくという方法です。


減感作治療法は今まで過剰に反応してしまうケースも多く、リスクも大きいものでしたが、アレルミューンHDMを用いることで危険性を回避できるようになりました。

漢方薬治療

ステロイドを用いた治療ができない体質の子に関して漢方薬での治療が行われます。
アトピー疾患に見られる細胞バランスの異常を整える効果も期待できます。
通常の投薬治療と異なり、作用はゆっくりですが、長い治療の必要なアトピー性皮膚炎においては有効な治療法の一つです。

外用薬、スプレー薬治療

副腎皮質ホルモン剤や抗炎症作用を有している外用薬を用いて患部から直接、治療をしていきます。
副腎皮質ホルモン剤による副作用が心配ということもあり、最近では抗炎症作用を用いた外用薬をメインに処方している動物病院も増えてきています。

保湿治療

皮膚のバリア機能が弱っている場合、またアトピー性皮膚炎によって乾燥などが進んでしまっている場合、保湿剤を湿布する治療が行われます。

シャンプー療法

アトピー用のセラミドの多く含まれているシャンプーやコンディショナーを使っていく治療法です。
通常のシャンプーは洗うたびに油分が奪われ、肌のバリア機能を低下させてしまいますが、保湿作用の強いシャンプーを用いることで皮膚のバリア機能を改善させていきます。

必須脂肪酸の投与

必須脂肪酸は体内で生産できない脂肪酸ですが、皮膚のセラミドの原料となっているため、脂肪酸を投与または餌と一緒に与えることでアトピー性皮膚炎が緩和します。
単にこの脂肪酸投与だけで症状の改善が見られるわけではありませんが、長期間使用することにより症状が緩和していきます。

家庭での治療

ハウスダストやダニと言ったアレルゲンを除去して、アトピー性皮膚炎を緩和していくことも大切な治療法と言えます。
たとえ薬物治療を行ったとしても、ほこりなどがたまっている生活環境で暮らしていては症状は改善していくことはありません。

また、食物アレルギーが原因となるアトピー性皮膚炎の場合にも、食事の管理が重要となります。
アレルギー反応を起こす原因をできるだけ排除していくことが、治療と合わせて必要です。

まとめ

獣医師・宿南章

アトピー性皮膚炎はアレルゲンとなる物質が体内または皮膚に入ることで、アレルギー反応を起こし、炎症やかゆみを引き起こす皮膚病です。
一般的な皮膚病と異なり、治療を行ったからと言って完治に導くことは難しいですが、生活環境から原因となる物質をできるだけ排除し、薬物などを用いて治療を行っていくことで病状をコントロールすることができます。
近年では、アトピー性皮膚炎のための治療法も多種多様になってきており、副作用などのリスクも少なく、その子に合った治療法を選択できるようになってきました。
飼い主の負担となる治療費や手間などを踏まえて、アトピー性皮膚炎と上手く付き合っていく方法を見つけていくことが大切です。
愛犬のために無理なく取り組んでいくことのできる方法を医師と一緒に探してみると良いでしょう。

犬のアトピー性皮膚炎

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獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

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記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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