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犬の血液検査の項目ALT(GPT)とは?数値別に疑われる病気まとめ

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動物病院で愛犬の血液検査をしても、検査項目と検査数値の関係や数値と病気との関係があまりよく分からないという飼い主さんが多くいます。

犬の血液検査の中でALT(GPT)という項目がありますが、ここではその意味や、数値によってどういった病気の疑いがあるのかとの関係についてまとめていますので、参考にしてみてください。

目次

ALT(GPT)とは

ALTはアラニンアミノ基転移酵素(アラニンアミノトランスフェラーゼ)と言い、GPTはグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼの頭文字をとっています。
昔はGPTという言い方が主流でしたが、最近ではALTと言うことが多いので、動物病院で獣医さんから説明を受ける場合もALTという言い方で説明を受けることが多くなっています。

しかし、ALTもGPTも呼び方は違いますが、同じ物質のことを示していますので検査表にALTとある場合はGPTのことと知識として知っておきましょう。
ATLは肝臓の細胞で作られていますが、犬の場合、肝臓から分泌される酵素のうち特にアミノ酸の代謝と関わりが深くあります。

ALTは肝臓の他に腎臓にも含まれています。
ALTの血液検査での正常値は20~70U/Lで、もともと血液中にはあまり多く存在しないというのが正常な状態です。

したがって、血液検査で低い数値が出ても問題ありませんが、数値が高いときは体の異常、特に肝臓がかなり弱っている可能性があるので注意が必要です。

ALTの数値が高い場合

ALTは肝臓に多く存在しますが、本来血液中にはあまり多く存在しません。
このため、血液検査でALTの数値が正常数値である20~70U/Lを超えて高くなっていると肝臓が何かの原因で調子が悪いということになります。
肝臓が弱っていることによって、本来肝臓にあるべきALTが血液中に漏れだしていると考えておきましょう。

血液検査においてALTの値が正常値よりも低くても問題ありませんが、数値が高ければ高いほど肝臓の障害が酷い状態になっていると疑われます。

肝臓に疾患を持つ愛犬は意外と多くいるので特に健康そうに見える愛犬でも100U/Lを超えてしまっている場合は決して珍しいわけではありません。

しかし、血液検査におけるALTの数値が1000U/Lを超えているという場合は、体内で大きな問題が起こっているということが考えられますので、飼い主様は獣医師とよく相談してその原因を突き止めた上で治療を始めなければいけません。

ALTが高いと肝臓に注意!

犬の血液検査においてALTの数値が高い場合の疾患として一番疑われるのは肝臓に関する疾患です。
本来肝臓にあるべきALTが血液中に漏れ出してきていることで、血液検査のALTの値が正常範囲を超えている可能性があります。

肝臓に何らかの問題があると、肝臓の本来の機能がしっかり働かないので、肝臓にあるべき酵素であるALTが血液中に存在していると考えるのが一般的です。

しかし、肝臓における疾患だけでALTの数値が上昇するというわけでもありませんし、犬でも個体差がありますので健康上何の問題がなくてもALTの数値が上がりやすい愛犬もいます。

ALTの値が低い、または正常範囲内であっても肝臓疾患を抱えている場合もあり、いろいろなケースが考えられますので、血液検査のALTの数値が高いというだけで勝手に肝臓病であると決め付けずに、動物病院の獣医さんとよく相談しましょう。
血液検査の数値はあくまでも参考程度に考えておくことも重要です。

ALTが高い場合、疑われる具体的な疾患は?

ALTが高い場合に疑われる疾患にはどんなものがあるのでしょうか!
具体的に以下の二つのレベルに分けてみていきましょう。

  • ALTが60~100U/Lぐらいのレベル
  • ALTが100~1000U/Lを超えるレベル

ALTが60~100U/Lぐらいのレベル

ALTの数値が正常範囲内よりも少し高いという場合でも、全く健康上問題ない場合もありますが、非常に重症の状態である場合もありますので、数値が低いからあまり症状が重いものではないという判断はできません。

肝臓が少しダメージを受けているせいでALTの値が少し高いということもありますが、慢性の肝炎を起こしているときは肝臓疾患が重症化していてもALTの数値があまり上昇しません。

脂肪肝の疑い

人間の場合の脂肪肝はお酒をたくさん飲む人などが原因である場合が多いのですが、犬はお酒を飲みません。
愛犬の脂肪肝は主に食事の食べ過ぎと深い関係があります。
脂肪肝というのは肝臓の臓器に脂肪が付いてしまっていることです。

犬の場合、脂肪肝の原因はいろいろありますが、主に食事を必要以上に食べることによる肥満が原意で愛犬が脂肪肝になることが多くあります。
脂肪肝は肝臓病ではありませんが、ALTの数値が上昇することがあります。

また、肝臓に脂肪が必要以上に付着するということは肝臓の機能が衰えていたり、肝臓についた脂肪の代謝が上手くいっていないという原因も考えられますが、一方慢性肝炎であることが原因で肝臓機能を徐々に衰えてきたり、脂肪の代謝がうまくいっていないことが考えられます。

これらが原因で起こる血液検査におけるALTの値は突然上昇するということはありません。
慢性肝炎が原因でALTの数値が上がっている場合、問題は深刻ですが、食べ過ぎが原因で肥満になったことが原因でALTの数値が上がっている場合は、食事制限や適度な運動をさせることによって徐々に改善されていきます。

慢性肝炎

ALTの数値は正常範囲よりも少し高いという60~100U/Lくらいの状態が続くという場合は慢性的な肝臓の疾患、慢性肝炎が疑われます。
慢性肝炎というのは徐々に肝臓が悪くなって長期化している状態を言います。
肝臓の中で繰り返して炎症が起こることによって、徐々に肝機能が失われていきます。

肝臓というのは、解毒やたんぱく質の合成や分解、ビタミンやホルモンの生成、消化酵素の生成など他にも様々な働きをしている生命活動にはなくてはならない臓器です。
慢性肝炎になると徐々に生命を維持するために必要な機能が失われていきますので他の臓器などにも悪影響を与えます。

慢性肝炎に陥っているとなかなか完治治療というものができませんが、専門の獣医さんとよく相談して慢性肝炎の治療を始めることが重要です。

また、慢性肝炎になると治療の一貫として食事制限などがありますので、専門の獣医の指導の元、食事やおやつに内容を見直す必要があります。
ドッグフードを利用している場合は、一般食ではなく肝臓病を患っている愛犬用のドッグフード(療法食)を利用すると良いでしょう。

肝硬変

肝硬変というと人間でも肝臓疾患としては重症なので非常に病状が心配される疾患ですが、犬の場合も肝臓疾患の中でも重篤な症状であると考えてよいでしょう。
肝硬変は慢性肝炎の病状が更に悪化した状態です。

肝臓機能が非常に下がっているのでALTの数値も非常に悪化するというものでもなく、肝硬変でもALTの数値が正常値よりも少し高い60~100U/Lくらいの範囲内であることも珍しいことではありません。

肝硬変になると正常な肝臓の細胞がダメージを受けて死んでいきますが、死んだ肝臓細胞の周りにコラーゲンの繊維が肝臓に入り込んで増殖することによって、肝臓自体が硬くなってしまいます。

肝臓機能がどんどん失われていくので肝硬変になると完治のための治療はありません。
肝臓の末期症状である肝硬変の進行を遅らせるだけの対処療法になり、飼い主は愛犬の余命を覚悟しなければならない段階になります。

ALTの数値はあまり高くなくても、肝硬変になっても飼い主が愛犬の健康状態の異常に気がつかないということはありません。ALTの値があまり高くないから健康であるというものではなく、ALTの数値が少し高いだけでも重症の肝臓疾患を起こしていることもあるので油断してはいけません。

ALTが100~1000U/Lを超えるレベル

健康上問題がないのに血液中にあまり多く存在しないALTの値が正常範囲内をはるかに超えている場合は、急激な肝臓へのダメージがあった、重い肝臓障害ということが疑われます。

急激に非常に高いALTの値になるということは慢性肝炎などが原因しているわけではなく、何らかの原因で肝細胞が急激にダメージを受けているというようなはっきりした原因があることがほとんどです。

専門の獣医さんとよく相談して早急に愛犬の治療を始めるようにしましょう。

犬伝染

アデノウィルスに感染して肝機能障害を起こすのが犬伝染性肝炎です。
一般的には大人の犬はあまりかからない病気ですが、子犬などは感染しやすく、感染して肝炎を発症すると非常に早いスピードで肝臓を破壊されるのでALTの値が通常よりもかなり高い状態になります。

薬剤性肝障害

体調が悪いことなどにより、薬を服用した際に副作用として肝機能に障害が出る場合に、ALTの値が急激に上昇することがあります。

薬によっては肝障害を引き起こす可能性がある薬もありますので、薬を服用させる場合は愛犬が薬によって副作用を起こしていないか注意深く様子を見ることが重要です。

人間の場合でも犬の場合でも薬を飲むということはどんなに弱い薬であっても何らかの副作用が起こる可能性がありますので、初めての種類の薬を服用させるときは、しばらくしっかり様子を確認しましょう。

抗がん剤は服用することによって高い確率で肝機能へのダメージがあるためにALTの数値が確実に上がると言うものもあります。

また、薬を愛犬に与えているつもりではなくても、人のための薬が床に落ちていたものを誤飲したりすることによって、薬剤性障害が起こる可能性もありますので十分注意しましょう。

化学薬品の誤飲による中毒

愛犬が散歩の途中で口にしたものや、家の中や犬小屋の付近においてある化学薬品を誤って飲んで体内に入れてしまうことで中毒症が起こり肝機能障害になりALTの数値が急激に上昇することがあります。
よくある誤飲は農薬です。

犬小屋の近くなどに殺虫剤や除草剤、化学肥料などを置いておくと、飼い主の目が届かない時に誤って口にしたり、いたずらで薬品を口にすることがあります。

また、洗剤や漂白剤、金属など口に入れてはいけないものを誤飲することによって肝機能障害を起こすことがあります。
薬品によっては非常に強いものもあり、一気に肝臓機能が下がり急性肝炎や急性肝不全を起こして命を落とすこともあります。

散歩中にアスファルトを舐める愛犬もいますが、アスファルトも有害化学性物質ですのでアスファルトを愛犬が舐めている場合は注意しましょう。
動物はどの薬が有害でその薬が無害かというような判断はもちろんできません。
自分の動く範囲で触れることができるならば何も知らずに触ったり、舐めたりして当然です。

人間の不注意によって愛犬たちを危険に陥れるようなことがあってはいけません。
愛犬が化学薬品によって中毒症状を起こし、肝機能障害になることのないように日頃から注意しましょう。

事故による肝臓の損傷

事故など外部からの強い力によって愛犬の肝臓が傷つけられて肝機能が一時的に低下することによってALTの数値が急激に高くなることがあります。
外傷はなくても肝臓に損傷を受けていることもあります。
事故などに合った場合は、動物病院などでしっかり検査してもらって内臓にも問題がないか調べてもらいましょう。

また、事故にあってALTが下がっている場合もあるので、心当たりの事故がある場合は獣医さんにその事実をしっかりと報告し、相談しましょう。
事故による肝臓の損傷は大きな損傷でない限り、時間と共に治癒してきてALTの数値も下がってきます。

胆のうや胆管の疾患

肝臓ではなく、胆のうや胆管という臓器の疾患によってもALTの数値は急激に上昇します。
胆のうや胆管が損傷をうけると胆汁が逆流することによってALTの数値が上昇します。
胆のうがん、胆管がん、胆のう炎という症状の場合ALTが上昇することを覚えておきましょう。

末期の肝臓がん

肝臓がんのステージが低い場合は、ALTの数値はあまり高いものではありませんが、肝臓がんが大きくなり、徐々に肝臓をおかすとALTの数値は非常に上がります。

まとめ

獣医師・宿南章

犬の血液検査のALTの値が正常範囲を超えてくることによって心配される疾患が肝臓の疾患です。
肝臓疾患といっても様々な症状がありますが、肝臓疾患の程度がALTの数値の高低にはあまり関係ありませんので、飼い主は日頃からALTの数値をしっかり把握しておくことが大切です。
肝臓疾患がある愛犬は、治療と並行して食事制限や運動することが大切になってきます。
ドッグフードは専用に開発されたフードを利用するようにしましょう。

犬の血液検査の項目ALT(GPT)

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獣医師が犬の進化の歴史を研究。
進化栄養学など、様々な角度から
ドッグフード&療法食を作りました。

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記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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