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犬の【アルブミン(ALB)】数値が高い、低いの意味は?

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愛犬の血液検査でアルブミンの数値が正常値を外れていると言われてしまった経験はありませんか?血液検査のアルブミンとは何のことなのか、アルブミン値が低いなど正常値ではない場合は、どんなことが心配されるのか見ていくことにしましょう。

目次

アルブミンとは

アルブミンは犬の肝臓で合成されるたんぱく質です。血液を構成するたんぱく質の1つがアルブミンですが、アルブミンの数値を見ることで愛犬の栄養状態を知ることができます。血液中にアルブミンの量が少ない場合、愛犬のたんぱく質が不足しているということになります。

アルブミンは肉や魚などをたくさん食べている場合は血液検査でのアルブミンの数値が高めに出ますが、肉や魚をしっかり食べなかったり、肝臓疾患などがあると数値が低くなります。アルブミンの数値が低いと問題になりますが、高い場合で問題になることはあまりありません。

 

アルブミンの働き

アルブミンは肝臓で作られ、血液中を流れるたんぱく質です。アルブミンの働きを簡単に言うと、1つは水分を保ち、血液の流れを正常に保つための浸透圧を維持することと、体内に送られたいろいろなものと結合してその物質を適性部位までは運ぶ役割があります。

1つ目の浸透圧の維持ですが、アルブミンは血液の中のたんぱく質の中で一番小さくて一番多い物質です。水は血管の半透膜を自由に行き来できますが、アルブミン分子の大きさから半透膜を通過することができません。このため、水はアルブミン濃度の濃い水溶液から薄い水溶液に移動することで浸透圧を維持します。血液の濃度を保つためにアルブミンは大きな働きをしていることになります。

もう1つの働きである物質の運搬ですが、アルブミンはいろいろな物質と結合しやすい性質を持つたんぱく質です。アルブミンが他の物質と結合力が強いのは、アルブミンの分子内の多くでプラスとマイナスに帯電していることや、アルブミン自体が周囲の状況に対して柔軟に分子構造を変化させることができる構造適応性があること、そしてアルブミンの分子の表面につぎはぎになった疎水性領域があり、水と馴染み難い構造になっているので他の物質と結合しやすくなっているということがその理由です。

アルブミンは亜鉛や微量元素、脂肪酸、ホルモンというような物質と結合することで安定し、結合した物質をその目的地に運ぶことができます。

また、毒素など有害なものとも結合して中和する作用もあります。血液中に毒素が入ってくるとその物質と結合して中和し、物質を保管する働きで血液中にある毒素の濃度を下げます。

体内に侵入した物質と結合して目的地に運搬するというアルブミンの作用を利用して薬の成分を身体の各所に送っています。

 

アルブミンの正常値は?

アルブミンの血液検査での正常値は犬の場合、2.6~4.6g/dlとされていますが、獣医さんの中には最低3.0g/dlほどは欲しいと考えている人もいます。これは成犬の場合の正常値であり、愛犬が幼犬である場合はこの数値より低く、正常値から外れることがあっても問題はありません。

アルブミン値は一般的に正常値におさまっていれば大丈夫と判断しがちですが、できれば正常値内でも高めである方が良いと考えておきましょう。健康であっても病気であっても、常に正常値の中でも高めにするという意識を持って食事などに工夫が必要です。

尚、アルブミンの数値が正常値を超えて高い場合は浸透圧を正常に維持できなくなり脱水症状を起こすことがあります。

 

健康でもアルブミンの数値が低い場合

アルブミンは血液中のたんぱく質でいろいろな物質と結合して、結合したものを身体に運ぶという役割があります。このため、健康な犬であってもアルブミンの血中濃度が低いことで問題が生じます。

例えば、薬を飲ませてもアルブミンの量が足りていないことで薬を適性な部位に運ぶことができないので、薬の効き目が下がります。薬の効き目が悪くなっても体内に薬を入れていることには変わりないので、副作用の影響を受ける事があります。薬の効果がなくなる上に副作用だけ出るというのでは、何のために薬を服用しているのか分かりません。

また、回復に必要な成分や栄養が身体の隅々に届かないために、食べても栄養が届かなかったり、手術しても術後の回復が遅れたり、怪我の傷が治りにくいということがあります。身体に特に問題のある疾患がないという犬でも、アルブミンの数値が低めであると問題が出てきますので、肉や魚などを食べさせて日頃からアルブミンの数値を高めに維持することが大切になってきます。

愛犬の栄養状態が悪くなっていないか、栄養失調になっていないかということを飼い主さんはいつも考えることが必要です。

 

アルブミンの数値低下は認知症のリスクも上げる

犬も人間と同じように高齢化が進み、それに伴い犬も認知症になるというケースが増えています。アルブミンの数値が低いということは、脳にも栄養が届かない状態になることで認知症のリスクを上げると言われています。

犬も高齢になると食が細くなって栄養不足や低栄養の状態になりタンパク質不足からアルブミンが低下しやすくなるので注意しましょう。

 

疾患がありアルブミンの数値が低い場合

身体に何か問題があってアルブミンの数値が下がっていることがあり、その原因としては主にタンパク質の不足、肝機能の低下、腎機能の低下が考えられます。しっかりタンパク質があり栄養バランスが整った食生活をしているのにアルブミンの数値が下がったり、痩せてくるという場合は問題がある可能性があります。肝臓に疾患がある場合は肝臓疾患が原因でアルブミンを作れなくなっていることが考えられます。

また、腎臓の働きの1つとして老廃物を尿として体外に出すということがありますが、腎機能が低下するとろ過機能が低下することで尿と一緒に身体に必要な栄養素も体外へ排出してしまいます。腎機能が低下しているとアルブミンが排出されてタンパク尿となり、体内のアルブミン数値も下がります。

このような原因があるとアルブミンの量が減ってしまうことで、栄養が身体に届かなくなり簡単にいると栄養失調の状態になります。アルブミンが不足するので疾患に対する治療を行っても薬の効果が出にくくなったり、筋肉や皮膚の再生能力、免疫力まで下がってきます。

疾患によってアルブミンの量が少なくなると、疾患と相乗効果で病状はなかなか良くなりません。

 

アルブミン値とグロブリン比(A/G比)

血清中のタンパク質にはアルブミンとグロブリンの2種類があります。アルブミンは肝臓で生成されるタンパク質ですが、グロブリンは肝臓の他にも骨髄などでも生成されます。アルブミンの数値が低いと肝臓に何か疾患があるか、腎臓や腸管からアルブミンが漏れていることが考えられます。

血液検査のアルブミンの数値だけでは身体のどこに疾患があるのかという予想が付かないので、アルブミンの数値だけで判断するのではなく、血清中に存在するグロブリンとアルブミンの比率がどうなっているかということで何が問題なのかということを診断する手がかりにします。

血清中のアルブミンとグロブリンの比率は通常の場合、アルブミン65パーセント、グロブリン35パーセントで、この比率のことをアルブミン/グロブリン比(A/G)と言います。アルブミンの数値と共にアルブミン/グロブリン比を重視することもあります。

アルブミンの比率が下がると、ネフローゼ症候群や胃腸管タンパク漏出症などが疑われ、グロブリンが増加すると肝硬変、慢性感染症、慢性肝炎、多発性骨髄腫が疑われます。特にガンの治療中にはチェックする必要があります。

 

アルブミンの数値が低くて考えられる疾患

肝臓疾患(肝臓ガン、肝硬変、肝炎など)

肝臓ガン(腫瘍)によって肝臓機能が低下していることでアルブミンの数値が下がります。肝臓は生命維持のためにも非常に重要な臓器なので、肝臓ガンは命にも関わる非常に重い病気です。

肝臓ガンも初期の段階で発見し治療を行えば治る可能性もありますが、症状がほとんどないことが多いので飼い主さんでも愛犬が肝臓ガンに侵されているということを初期の段階で発見することは難しいです。このため症状が出てから動物病院を受診してもすでに肝臓ガンが進行していて末期症状であることが珍しくありません。

犬の肝臓ガンの初期症状としては何となく元気がない、食欲がない、軽度の黄疸で目や皮膚が少し黄色いというようなものです。末期症状になると食べられなくなったり、アルブミンの生産量の低下によって血液の浸透圧が低下して腹水が溜まったり、下痢になったり、吐血や下血などの出血の傾向が見られます。

犬の場合は血液検査でも人間のように腫瘍マーカーでの測定での診断が一般的ではないので、アルブミン濃度を調べたり、肝臓に多く含まれる酵素のGPTやALT、また胆汁の流れが悪くなった時に上昇するALPなども血液検査で調べます。肝臓ガンだけでなく肝臓の疾患である肝硬変や肝炎になっていることでアルブミンの生成ができなくなって数値が下がることもあります。

肝臓疾患は早期発見が非常に難しいので日頃から定期健診で血液検査などを行うことが大切です。

関連記事:
犬の肝臓がんの原因と症状、余命、食事、治療法について
犬の血液検査ALPとは?数値が高い時に疑われる病気まとめ
犬の血液検査の項目ALT(GPT)とは?数値別に疑われる病気まとめ

 

ネフローゼ症候群

ネフローゼは腎臓にある尿を作る機関ですが、ネフローゼ症候群になると血液中にあるべきタンパク質が尿中に流れ出すことでアルブミン濃度が低下します。

 

その他の疾患

感染症、発熱、腹水が溜まる、胸水が溜まる、腸内環境の悪化、脳梗塞、心筋梗塞なども考えられる疾患となります。

 

低タンパク血症とは

低タンパク血症というのは、身体に疾患があって体内のタンパク質の量が低下することを言います。血液中のタンパク質としてはアルブミンとグロブリンが主なものですが、特にアルブミンが大きな割合を占めます。

低タンパク血症というのはタンパク質の不足、肝臓の疾患、腎臓疾患、腸の疾患などが原因で起こる状態のことで、症状としては、元気がなくなる、痩せてくる、下痢になる、体がむくむ、腹水が溜まる、呼吸が苦しそうと言ったものがあります。いろいろな疾患の結果、低タンパク血症になるということです。

一般的な治療法としては、良質なタンパク質を与える、輸血する、アミノ酸製剤を投与して低タンパクの状態を緩和します。アルブミンが低下することで血液の浸透圧を保てないことで身体が浮腫んだり、腹水が溜まったり、肺に水が溜まる場合は利尿剤を使います。

また、免疫力が下がっている場合は抗生剤を投与します。

 

アルブミンの数値を改善させるためには?

アルブミンの数値を改善させるために一番重要なことは食事です。食事でしっかりとタンパク質を補給してあげることでアルブミン値が改善します。

栄養内容がしっかりしていないドッグフードばかりを与えていると満腹感はありますが、必要なタンパク質が補えていないことがあります。肉や魚などのタンパク質を豊富に含んだドッグフードや低タンパク血症の犬のために考えられたドッグフードなどを利用すると良いでしょう。特に、アルブミンの数値が低い犬や高齢の犬は意思的にタンパク質を摂取することが大切です。

獣医師である宿南章が、肝臓疾患の犬のために開発した療法食「肝臓サポート」や、良質で高タンパクな鹿肉を使い犬の年齢別に最適な栄養を配合してつくられた「デイリースタイルプレミアムドッグフード」シリーズも参考にしてみてください。

 

まとめ

血液検査のアルブミンの項目が基準値よりも低い犬は栄養不足、肝臓疾患、腎臓疾患、腸疾患などが原因していることがあるので食事でタンパク質を補うことが非常に大切です。

また、症状が出てからでは治療が遅れることもあるので、早期発見のために定期的に健康診断を受けましょう。

犬 アルブミン

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進化栄養学など、様々な角度から
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記事を書いた人

宿南 章(しゅくなみ あきら)
獣医師
【文責】 獣医師・宿南 章(しゅくなみ あきら)
【資格】 獣医師免許(1993年取得)
【所属団体】
The Royal Society for the Protection of Birds 会員
日本盲導犬協会 会員
野生動物救護獣医師協会 正会員

【プロフィール】
1969年生まれ 兵庫県養父(やぶ)市出身。
日本大学農獣医学部(現日本大学生物資源科学部)獣医学科卒業。 獣医師。
横浜で犬猫の動物病院に勤務。その後、米国のCAM( Complementary and Alternative Medicine )を日本に導入している 研究所に移籍。北海道の農協の依頼を受け、牛のサルモネラダブリン症の治療を行い、当時抗生物質も効かない病気を治癒させるなど、数多くの治療実績を持つ。
その後、予防医学に特化した自然療法動物病院を設立し現在に至る。


【研修・研究内容】
1983年…アメリカ ウィスコンシン州、400エーカーの酪農家で住み込み実習
1985年…北海道 中標津 200頭飼育の酪農家で住み込み実習
1988年…獣医薬理学研究室にて薬草の薬理作用の研究(3年間)
1993年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(1回目)
1994年…アメリカ カリフォルニア州 医療研修(2回目)
2006年…オーストラリア メルボルン イアンゴウラー財団でガン医療研修

【論文】
Efficacy determination test for the Vibrational therapy in case of the skin ulcer induced on mice A.SHUKUNAMI Eastern Medicine 2004

【著書】
「薬いらずで愛犬の病気は治る」WAVE出版 は、17部門で1位を獲得するベストセラーとなり高い評価を得ている。
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